・日本は、強靱な外交と経済政策によって、国の安全と安定した経済成長を確保し、現在の低下した国力を回復しなければならない!

・国の安全を確保し、しっかりした日本の外交・安全保障政策を提示できない政党は、それだけで現在の選挙では失格だ!
・日本の外交・安全保障上の喫緊の問題は、多くの国内不安定要因を抱えながら対外的には覇権主義的姿勢を見せる中国にどう立ち向かうのかだ!
・中国が武力で勢力範囲を拡大しようとしているのであるから、これには力で牽制(けんせい)し均衡を保つ戦略が必要だ!
・安全保障政策で、今、日本に必要な集団的自衛権の行使を説く点では維新は自民党と共有する点が多い。
民主党は、東シナ海を「平和、友好、協力の海」にするというが、具体性に欠けるし、公明党も、公約に「毅然(きぜん)とした対応」では抽象的で話にならない。
・日本は、強靱な外交と経済政策によって、国の安全と安定した経済成長を確保し、現在の低下した国力を回復しなければならない!






〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
潜在能力を生かし国力の強化を
平和安全保障研究所理事長・西原正  2012.12.11 03:20 [正論]
 目下の衆議院選挙戦では、低迷する日本経済への憂慮を反映して、12政党はそれぞれの経済対策を競っている。国民の関心もそこにあるのだから、デフレ対策、消費税、生活保護費などの議論をするのは当然である。
 ≪「一級国」に残れるかの岐路≫:
 しかし、責任政党というものは、より長期的な観点から日本の安全を確保しながら安定した経済成長を促し、活気ある少子高齢化社会を維持していくにはどうすべきかなどを有権者に示し、日本の進むべき道を論じるべきである。 しかし、そうした議論がほとんど聞かれないのは残念である。
 この8月に米国で発表された、いわゆる「アーミテージ・ナイ報告書」は冒頭で、「日本は一級国としてとどまる意志があるのだろうか、それとも二級国になり下がることに満足するのだろうか」と厳しい問いかけをしている。
 「一級国」とは、「十分な経済力、有能な軍事力、世界的視点に立つ未来構想、国際問題解決に対する指導力」を備える国を指すという。  日本が必ずしもこの資質をこれまで備えてきたわけではないが、少なくとも米国の期待は一級国として行動する日本である。
日本は現在、極めて重要な岐路に立つ。  脱原発、低迷経済、同盟軽視などによって対外的影響力を失い、二級国になり下がるのか、あるいは原発を再稼働させ、経済力を回復して活気ある社会を作り、国際社会で責任ある役割を果たす一級国としてとどまるかの決断を迫られている。  一級国にとどまるには、国の安全が確保されてこそ可能なのだということを認識するならば、しっかりした日本の外交・安全保障政策を提示できない政党は、それだけで現在の選挙では失格ではないだろうか。
 ≪国際環境の激変にどう対応≫
 分岐点に立つ日本にとってさらに深刻なのは、日本の安全保障環境の激変である。 新しい北朝鮮の指導者、金正恩第1書記は、対韓挑発行動や長距離ミサイル発射(本年4月は失敗)などを展開して軍事力を誇示した。  中国は国連の制裁決議を無視して、北朝鮮への経済的支援を続けている。  北の核開発を阻止することを目指した6カ国協議は瓦解(がかい)同然である。
 尖閣諸島の帰属をめぐる日中間の対立も激化し、中国は尖閣諸島「奪還」のための対日威圧外交を続けている。  反日暴動を容認したとされる習近平氏が胡錦濤総書記の後を継いだ。  習氏は前任者より対日強硬派だといわれている。
 したがって、日本の外交・安全保障上の喫緊の問題は、多くの国内不安定要因を抱えながら対外的には覇権主義的姿勢を見せる中国にどう立ち向かうのかということである。 この観点で見ると、民主党が公約で、「尖閣諸島は平穏かつ安定的に維持・管理する」としているが、現状で「平穏かつ安定的に」維持・管理しているとはいえない。 また、同党は、東シナ海を「平和、友好、協力の海」にするというが、具体性に欠ける。 同様に、公明党も、公約に「毅然(きぜん)とした対応」とか「冷静な対話」とか言っているのは、抽象的で解決策にはならない。
 中国が武力で勢力範囲を拡大しようとしているのであるから、これには力で牽制(けんせい)し均衡を保つ戦略が必要である。  民主党が、海上保安庁の体制強化を唱えているのは歓迎できるが、本当にそれだけで十分だろうか。自民党尖閣諸島での公務員の常駐化とか船だまりの整備などを提示しているのは、実効支配に実体を与えるもので賛同できる。
≪まずは集団的自衛権容認を≫ :
 日本は潜在能力を十分生かしていない。 政策の修正や法改正だけで、これまでにない国力を身につけることができる。  憲法の改正ないしは解釈の変更によって、集団的自衛権を行使することができれば、東アジアにおける日本の役割をより充実したものにすることができる。  事実上の武器輸出禁止政策を部分的に緩和しただけで、日本の対外発言力は伸びた。  それらはもちろん日米同盟を強化する道でもある。  日本は自らの選択肢を狭めて国力を低下させてきた。
 この点で、日本の将来像を比較的バランスよく論じているのは自民党である。 自民党は、経済政策、エネルギー政策ばかりでなく、外交・安全保障や教育、憲法改正などの分野における改革を提示している。  特に、安全保障政策で、今、日本に必要な集団的自衛権の行使を説く。  この点では維新は自民党と共有する点が多い。
 これに対し、民主党は、専守防衛の原則を守り、防衛力を着実に整備していくとし、政権政党らしく現状の政策の枠を出ていない。 日本に必要な集団的自衛権の容認についても沈黙している。 その意味で“保守的な政党”に、民主党はなってしまった。
 今こそ、手つかずの潜在能力を顕在化させ、日本の国力の強化に最大限の努力をするときではないか。 日本は、強靱(きょうじん)な外交と経済政策によって、国の安全と安定した経済成長を確保し、現在の低下した国力を回復し、一級国としてとどまるべきである。(にしはら まさし)