・今後オスプレイの安定的な運用は、中国の海洋進出に対抗するうえで、決定的な意味を持つ。

アメリカ大統領にも「トラスト・ミー」と 大言壮語した結果、日米同盟に深く刻まれた傷跡は、いまも消えていない。
・反米論者の責任は大きい。今なお彼らを重用するNHK以下、マスコミの責任も重い。 反米を合唱しても、何一つ、日本に益することはない。
オスプレイはCH-46と違い、空中給油を受けられる。  艦船に搭載して運用することもできる。老朽化した機種CH-46を、これ以上、普天間で継続使用することは、それこそ安全性の観点からも疑問が残る。
・中国の「A2AD(接近阻止・領域拒否)」に対抗する、米軍の新戦略「統合エア・シー・バトル(JASB)」構想ないし「統合接近作戦構想 (JOAC)」の柱を担えるのはオスプレイだ!
・今後オスプレイの安定的な運用は、中国の海洋進出に対抗するうえで、決定的な意味を持つ。
・絶対に安全な航空機やヘリなど存在しない。
オスプレイの危険性と、国民の反米感情を煽るだけでは、問題は解決しない。 配備の意義と一定のリスクを踏まえた公正かつ冷静な議論を期待したい。




〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
外務省の元国際情報局長・孫崎享氏を論破する本   
古森義久   2013.01.07
 潮匡人氏といえば、現実派、国益重視派の論客としてすでに広く知られていますが、その潮氏が興味ある本を出しました。  以下に紹介する書ですが、私がとくに興味をひかれたのは、潮氏の孫崎氏批判でした。
 孫崎氏はご存知のように、尖閣諸島が日本固有の領土ではないと主張して媚中派から人気を集める元外交官です。
 潮氏の近著はこの孫崎氏の主張がいかに事実や論理に反し、日本の国益を傷つける内容であるかを、きわめて冷静な筆致で指摘しています。 いまの日本国民にとってまさに必読の書でしょう。
 潮匡人(評論家、国家基本問題研究所客員研究員)《 『「反米論」は百害あって一利なし』より》

「反米」が日本に益することはない:
 いまや日本は国難の最中にある。 平成24年(2012年)11月現在、沖縄県石垣市尖閣諸島周辺には連日、「海監」や「漁政」など中国政府の公船が押し寄せ、わが国の領海に侵入を繰り返している。
 なぜ、こんなことになってしまったのか。  結論から言えば、日米同盟が弱体化したからである。
 3年前、民主党に政権が交代し、自民党政権下で実施されてい たインド洋上での給油活動が終了。 さらに鳩山由紀夫総理(当時)が、普天間移設問題で「最低でも県外」と公言し、アメリカ大統領にも「トラスト・ミー」と 大言壮語した。 その結果は、読者ご案内のとおりである。 日米同盟に深く刻まれた傷跡は、いまも消えていない。
 驚くべきは、その後の展開である。 当時、鳩山総理のブレーンと目された知識人が、いまも大手を振ってメディアで活躍する。  マスコミの寵児と化す。 全国の大型書店では、アメリ陰謀論を振りまく新刊が平積みされ、ベストセラーとなっている。
 そうした反米論者の責任もさることながら、今なお彼らを重用するNHK以下、マスコミの責任も重い。 本文で述べるように、普天間基地へのオスプレイ配備 を巡る報道をはじめ、連日連夜のごとく、国民の反米感情を煽っている。
 マスコミ世論には、低俗なアメリ陰謀論が渦巻く。
 日米が離反することで、得をするのは誰か。深く傷ついた日米同盟の惨状を見ながら、ほくそ笑んでいるのは誰か。  日本のマスコミ世論を席巻する反米論は、日本の国益を害する。 反米を合唱しても、何一つ、日本に益することはない。

(『「反米論」は百害あって一利なし』まえがきより抜粋)
オスプレイは本当に危険なのか
 平成24年9月19日、日本政府は、防衛省と外務省の連名で「MV-22オスプレイの沖縄配備について」と題した報告書を公表し、こう「結論」を述べた。
 「我が国におけるMV-122オスプレイの運用について、その安全性は十分に確認されたものと考える」「我が国におけるMV-22オスプレイの飛行運用を開始させることとする」
 これを受け、翌々日の9月21日、アメリカ軍はオスプレイが一時駐機していた岩国基地山口県)から試験飛行を実施した。 拙著が発売される頃には、普天間基地での正式な連用が始まっているであろう。
 だが、政府報告書の“安全宣言”とは裏腹に、いまも国民の不安は大きい。関係自治体も「配備ありきで進んでいる」(沖縄県知事)、「怒りを感じる」(宜野湾市長)など反発を隠さない。オスプレイは本当に「安全」なのか。
 政府の報告書は、最近の墜落事故について「機体自体に問題があるわけではない」「人的要因によるところが大きい」「再発防止策は十分に図られる」などと結論した。
 さらに今後も「(危険な)転換モードの時間を可能な限り短くする」、あるいは、500フィート(約150メートル)以上の高度で飛行する、原発や人口密 集地域上空の低空飛行訓練は避ける、「可能な限り海上を飛行する」などを日米で合意したことを挙げ、安全性を強調する。
 他方、9月21日の試験飛行では、オスプレイ下関市の市街地上空を飛行する姿が地上から視認された。 テレビ各局がその光景を放送した。  国民注視のもとでの初飛行なのだ。  市街地は「可能な限り」避けるべきではなかったのか。  たしかに、そうした疑問は残る。
 これまで日米両政府は、被害総額が200万ドル以上の死亡事故など、重大な「クラスA」事故のデータだけを「事故率」として公表し、「安全性の記録を有している」と説明してきた。
 だが以上の数字にはカラクリがある。 案の定、7月20日付『朝日新聞』朝刊が一面トップで「オスプレイ事故58件」とスクープ報道した。  御多分に漏れ ず、NHKも「比較的程度の軽い事故が起きる頻度は、海兵隊の航空機の平均を大幅に上回っている」と大きく報じた(7月26日)。   実際、より被害が小さい 「クラスB」の事故率は、海兵隊の平均を上回る。  「クラスC」に至っては平均の2倍を超える。
 だが政府の報告書は、これらの指摘を「機体の安全性を示す指標としては不適切」と退け、改めて「低い数字」と断定した。  たしかに、これでは「配備ありき」の印象を与えかねない。

■中国が恐れるオスプレイの性能
 では、やはり危険な輸送機なのか。 必ずしも、そうとは言えない。 現に、一部マスコミが煽るほどの危険性は実証されていない。  ゆえに、他の機種と比べ、格別に危険な輸送機であるかのごとく喧伝する姿勢は公正さを欠くのではないか。
 もしオスプレイがダメだというなら、引き続き、CH-46Eが飛ぶことになってしまう。 この輸送機は、自衛隊も退役させた古い機種であり、20年前に製造が終了している。 いまも軍用として飛ばしているのは米海兵隊だけである。 老朽化した機種を、これ以上、普天間で継続使用することは、それこそ安全性の観点からも疑問が残る。
 なのに、マスコミ報道の多くが、オスプレイの危険性だけを煽る。  オスプレイが岩国に陸揚げされた7月23日放送の「NHKニュース7」は冒頭、上空から撮影したオスプレイの映像を流し、「反対や不安の声が上がるなか」云々と報道。  ロンドン五輪などの話題を押しのけ、トップで扱い、「安全性への懸念が高まるなか陸揚げされました」と報じた。   以下、多くの報道が「不安の声」や「安全性への懸念」を強調する。
 ならば同時に、オスプレイ配備の意義も語るべきであろう。  オスプレイは「CH-46Eに比べ、速度2倍、搭載量3倍、行動半径4倍という優れた性能を有している」(防衛省)。
 端的に言えば、懸案の尖閣諸島を行動範囲に収められる。  報告書を補足すれば、CH-46と違い、空中給油を受けられる。  艦船に搭載して運用することもできる。
 ゆえに朝鮮半島台湾海峡に加え、中国が聖域化を図る南シナ海へも抑止が効く。 中国の対艦ミサイルの射程外からも運用できる。 前述したアーミテージ報告が敷衍した、中国の「A2AD(接近阻止・領域拒否)」に対抗する、米軍の新戦略「統合エア・シー・バトル(JASB)」構想ないし「統合接近作戦構想 (JOAC)」の柱を担う。
 もちろん日本の安全保障にも有効であり、邦人救出や「トモダチ作戦」のような運用にも大きな力を発揮できる。 実際、先日も山火事の消防活動に出動した。 だがそれを、一部のマスコミは「米軍ヘリ」が出動したとしか報じない。 意地でも「オスプレイ」とは言いたくないのかもしれないが、オスプレイは「ヘリ」 (回転翼機)ではない。あえて言えば、垂直離着陸できる固定翼機である。
 詳しくは、山田吉彦教授(東海大学)と私の対談書『尖閣激突』(扶桑社)に委ねるが、今後オスプレイの安定的な運用は、中国の海洋進出に対抗するうえで、決定的な意味を持つ。
 だが、マスコミ報道の多くが、こうした配備の意義や抑止効果に言及しない。 中国を刺激したくない本音が覗く。 政府もマスコミも、中国の反発を恐れず、正面から配備の意義を語るべきではないだろうか。

■日本国の主体性はどこに?
 問われるべきは、日本国としての主体性であろう。 野田佳彦総理は、去る7月16日、フジテレビの番組で「配備自体は米国政府の方針だ。どうしろ、こうし ろという話ではない」と語った。  安保条約や交換公文を念頭に置いた発言であろうが、自国民に向けたメッセージとしては表現が乱暴に過ぎよう。結果、国民の反米感情は増した。
 政府への、政治そのものへの信頼が揺らいでいる以上、いくら政府が「安全性は十分に確認された」と宣言しても、国民の安心には繋がらない。
 そもそも、絶対に安全な航空機やヘリなど存在しない。特に、垂直離着陸時の危険性が高い。軍用機なら、なおさらである。
 もし3度、事故が起きれば、オスプレイの運用はおろか、日米同盟そのものが危機に瀕する。 2004年に起きた沖縄国際大学への米軍ヘリ墜落事故では、米軍のMP(憲兵)に阻まれ、沖縄県警や消防は現場検証すらできなかった。
 万一あれが再現すれば、「全基地閉鎖」(沖縄県知事)ともなりかねない。
 そうならないためにも、日本政府は最大限の努力をすべきだ。  リスクを直視した危機管理に万全を期すべきであろう。  本土への訓練移転も鋭意、進めるべきだ。   そのうえで、日本政府の責任において安全性を説明してほしい。
 地元との交渉が円滑に進まない原因としては、従来、基地行政を担当してきた旧防衛施設庁が、不祥事により解体された経緯も大きい。  今回のオスプレイ騒動は、日米同盟が抱える問題を浮き彫りにしたとも言えよう。
 オスプレイの危険性と、国民の反米感情を煽るだけでは、問題は解決しない。   配備の意義と一定のリスクを踏まえた公正かつ冷静な議論を期待したい。