・「プラチナ革命」には、結局のところ、再生可能エネルギー開発や資源リサイクルが解決課題となる!

産業革命を行った国が富を集中的に得て先進国となり、ほかは途上国として取り残された。
・ここ20年ほどの間に途上国が急成長し、先進国が低成長に陥ったため、先進国と途上国の差は急速に縮小した。
・1900年の平均寿命は先進国でも50歳に満たず、世界平均は31歳にすぎなかった。
・日本は1950年から1970年までの高度経済成長期に一気に世界一の平均寿命を達成する。  世界平均も現在すでに70歳が視野に入った。
・課題先進国の日本に、農業革命、産業革命に続く質的に豊かな「プラチナ革命」を先導するチャンスが訪れているのだ!
・「プラチナ革命」には、結局のところ、再生可能エネルギー開発や資源リサイクルが解決課題となる!



〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
豊かさの「質」高める時
三菱総研理事長・小宮山宏   2013.1.18 03:20
 年頭にあたり、次世代の社会像であるプラチナ社会の人類史における位置づけを考えてみたい。
 1万年から1万数千年の昔、世界各地で農業が生まれた。  農業によって、それまで採集や狩猟に依存していた食料の獲得が安定化し、定住も可能になった。  これを農業革命と呼ぶ人もいる。  その後、主として開墾による農地の拡大が農業生産力を拡大させ、それに応じて人口が増えていった。  英国の経済学者、マルサス人口論の分析対象としたこの拡大過程は長期にわたり緩慢に進行した。   この間、生産も消費も食料などの生活必需品が主だったから、1人あたりGDP(国内総生産)の地域差は小さく、GDPはほぼ人口に比例していた。   国家間の経済力格差が小さくて貧しい時代が、人類史のほとんどの期間を占める。
 状況を一変させたのが18世紀の産業革命である。  モノの生産効率が上がり経済規模が飛躍的に拡大した。  英国に始まった産業革命の波は西欧から米国に、少し遅れて鎖国を解いた日本へと広がった。  産業革命を行ったこれらの国が富を集中的に得て先進国となり、ほかは途上国として取り残された。 少数の先進国が世界を動かしていた最近まで、こうした状況が続いた。
 現在、産業革命は世界中に普及しつつある。  各国の1人あたりGDPを見ると、ここ20年ほどの間に先進国と途上国の差は急速に縮小している。  途上国が急成長し、先進国が低成長に陥ったからだ。  産業革命以前よりもはるかに高いレベルで、富は再び均一化に向かっている。
 経済的な豊かさと人の寿命との関係は極めて興味深い。  有史以来人の平均寿命は二十数歳で、産業革命までの1万有余年の間わずかしか延びなかった。  産業革命で生産力を増した先進国で寿命がようやく延び始めるが、それでも1900年の平均寿命は先進国でも50歳に満たず、世界平均は31歳にすぎなかった。
 20世紀に入って産業革命の成果を一般市民が享受できるようになり、先進国を中心に急激に寿命が延び始める。  日本は1950年から1970年までの高度経済成長期に一気に世界一の平均寿命を達成する。  世界平均も現在すでに70歳が視野に入った。   現在先進国の人々は、衣食住はもちろん、移動や情報の手段にも事欠かないし、長寿も楽しめる。こんな贅沢(ぜいたく)はこれまで、ほんの一握りの支配層の特権であった。  しかもこの状況は先進国化を進める途上国に及び、全地球に拡散しつつある。
 一般の人が豊かさを獲得したという意味で、人類は成功したといえる。   しかし、地球の側からも個人の側からも、多くの課題が顕在化しているのが現在だ。  私たちはまさに人類史の転換期を生きている。
 量的な意味での豊かさを手にした人々が目指すのは、質の向上であろう。  公害はこりごりだし、今以上に蒸し暑い夏や、巨大台風の襲来はごめんだ。 エネルギーや資源の不安も経験したくない。  安定した職を得て、社会との絆を強固なものとし、健康長寿を謳歌(おうか)したい。   こうした質的欲求が新しい社会や産業の原動力となる。  その結果生まれるのがプラチナ社会である。  課題先進国の日本に、農業革命、産業革命に続くプラチナ革命を先導するチャンスが訪れているのだ。(こみやま ひろし)