・国民の学力・規範意識・体力・精神力を養い向上させるための制度設計をする、それを阻害している制度や思想・理念は抜本的に改めよ!

・教育とは、国民個々の能力を開花させ、学力・規範意識・体力・精神力を養い、国民が充実した人生を送ることができるようにすると同時に、国家の将来を担う人材を育成し、国民の精神や姿勢を創り出すものでもある。
・国民が国家を支え、社会に貢献できるように公共の精神や国家への帰属意識・愛着を持たせることも必要である。
・国民の学力・規範意識・体力・精神力を養い向上させるための制度設計をする、それを阻害している制度や思想・理念は抜本的に改めよ!



〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
教育再生なくして国家再生ない
高崎経済大学教授・八木秀次   2013.2.1 03:12 [正論]
 1月24日、私も委員として参画している教育再生実行会議の第1回会合が開かれた。  冒頭、安倍晋三首相から、「教育再生は経済再生と並ぶわが国の最重要課題」との発言があった。  私は自分の発言の際、首相の言葉を踏まえながらも、「並ぶ」というよりは、むしろ「一体」と考えるべきではないか、と述べた。  首相の発言や認識に、さらに明確な輪郭を与えたいという思いからであった。
 ≪レーガン特命委員会の報告書≫
 今からちょうど30年前の1983年のこと、アメリ連邦政府の特命委員会は一つの報告書を時のレーガン大統領に提出した。  『危機に立つ国家』と題されたこの報告書は、「われわれの国家は危機にひんしている」と書き出し、アメリカはかつて、「通商、産業、科学、技術革新の各分野で優位を誇っていたが、今は、世界中の競争相手にその地位が脅かされている」と述べている。  アメリカの基幹産業である鉄鋼や自動車の分野で、日本やドイツに追い越されようとしていた時代である。
 報告書は、「危機」の原因や背景は複数あるとし、これこそがアメリカの繁栄、安全保障、社会規範を支える最たるものであるとして、「それは教育である」と言い切っている。    そして、この「危機」は、過去数十年の「凡庸な教育」によって引き起こされたものだと指摘し、それによって、「一世代前には考えられないようなことが起こり始めている」とし、その結果、「国民の将来が脅かされている」と述べている。
 また、これが非友好的な外国勢力によってなされたものであるなら「戦闘行為に相当する」が、残念ながら「自らの手で、これと同じ侵略行為を許してきている」とし、「われわれは思慮に欠けた一方的な教育の武装解除をしてきているのだ」と述べている。
 ≪武装解除された教育の再武装
 「アメリカ」という部分を「日本」に置き換えれば、今日のわが国の状況にそのまま当てはまるような内容である。 この委員会は、経済を含めたアメリカの衰退、すなわち「危機」の原因を教育に求め、「凡庸な教育」のために国力が衰退し、危機を招いたと結論付けて、「武装解除」された教育の「再武装」が必要であるとの認識を示し進言したのである。
 教育とは、国民個々の能力を開花させて、学力・規範意識・体力・精神力を養い、国民が充実した人生を送ることができるようにすると同時に、国家の将来を担う人材を育成し、国民の精神や姿勢を創り出すものでもある。
 国家が再び活力を取り戻していくには、国民が社会生活を行っていくうえで必要な学力・規範意識・体力・精神力を身につけさせ、向上させていくことが不可欠である。  さらに、国民が国家を支え、社会に貢献できるように公共の精神や国家への帰属意識・愛着を持たせることも必要である。
 その意味では、教育の再生なくして経済の再生はない。  レーガン政権下の特命委員会は、そのような認識をもって教育の再生に取り組むべきである、と大統領に提言したのである。  重要なのは、教育を、その原理を超えて国家戦略の中に位置づけ、教育のあり方を抜本的に見直すことによって、国家を再び活力あるものにするという視点である。   事実、その後、アメリカは抜本的な教育改革を行ってV字回復を果たしている。
 現在のところ、第2次安倍内閣が官邸に設置した有識者会議は、経済再生のための経済財政諮問会議、その下における産業競争力会議、そして、教育再生のための教育再生実行会議である。   今後、他の分野でも、有識者会議が設置されていくだろうが、政権発足後、早い段階で、経済再生と教育再生のための会議が相次いで設置されたのは、偶然ではない。
 ≪サッチャー政権下のV字回復≫
 安倍首相の頭の中には、レーガン政権下の特命委員会が勧告したように、「教育の再生」を通じて「国家の再生」を図るという認識があるからである。 さらには、同じ時期にイギリスで同じく教育の再生を通じて国民の意識を変え、「英国病」といわれた一時の衰退から見事に国家をV字回復させたサッチャー政権の事跡が念頭にあるからである。  冒頭に紹介した私の発言は、それらを際立たせようという意図からであった。
 国家戦略の中に教育再生を位置づけるという視点を持てば、何をなさなければならないのかも、おのずと明らかになる。  前述の『危機に立つ国家』が、武装解除された教育の「再武装」が必要であるとの認識を示したことは、すでに触れた通りである。  「武装」という表現に違和感を持つ向きもあろう。   「強化」という言葉に置き換えてもらって結構である。
 要は、国民の学力・規範意識・体力・精神力を養い向上させる、そのための制度設計をする、それを阻害している制度や思想・理念は抜本的に改める、ということである。教育再生実行会議には、文字通り「教育再生」に向けた、ダイナミックな提言を行うことが期待されているのだと思う。(やぎ ひでつぐ)