国家安全保障政策における中道への真っ当な動きを告げるもの

・「集団的自衛権行使の禁止と、防衛予備部品の製造や軍用機器の修理を含む防衛装備品の輸出の禁止」を廃止せよ!
・過去何十年も前に約束したFCLPについて、この1月24日に、左藤章防衛政務官がその方向で前進したいと述べて、馬毛島がFCLPの候補に残っていることを明らかにした。
・国家安全保障政策における中道への真っ当な動きを告げるものであり、遅きに失したぐらいである。





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防衛問題でも「恐竜」絶滅させよ
ジェームス・E・アワー   2013.2.15 03:13 [正論]
 □ヴァンダービルト大学 日米研究協力センター所長 
  安倍晋三氏の2度目の首相職は極めて好調に滑り出している。 最初の支持率は直近の前任者たちほどには高くなかったものの、昨年12月末に政権をとってから、支持率は低下するよりも、むしろ上昇しており、日本の政治的な安定への期待が高まっている。
  日本経済の再生が安倍政権の最優先事であり、そのための初期の措置は講じられた。  だが、それを成し遂げるには、競争力のない、恐竜のように時代遅れのものは見限って、日本経済の構造改革へ進むことが必要だと思う。
集団的自衛権行使の禁を解け≫
  防衛分野では、安倍首相は、米国との国家安全保障同盟を蘇生させ、強化させたいと望んでいる。  北朝鮮核兵器やそれを運搬するミサイルの開発を続け、中国が南シナ海東シナ海の支配を狙ってますます好戦的になっている事実に鑑みて、非常に妥当な目標である。   防衛分野で成功するにも、首相はやはり、長きにわたって存在し、現実的な国家安全保障態勢の妨げとなり続けている「恐竜」を見捨てる必要がある。
  安倍政権が捨て去ることを目指すべき「恐竜」のひとつは、日本が自らに科している(憲法上もしくは法律上の理由で禁じられているのではない)集団的自衛権の行使の禁止と、防衛予備部品の製造や軍用機器の修理を含む防衛装備品の輸出の禁止である。
  自衛隊の発足当初から、共産党社会党は集団的なものを含めてあらゆる防衛努力を批判していたとはいえ、集団的自衛権の行使の禁止は1973年までは、正式決定されたものではなかった。   その年、佐藤栄作政権は、日本が自身の国家安全保障上の利益になる行動を取るのを不必要に阻む戦略的に非論理的な政策の立案を内閣法制局に許したのである。
  安倍内閣の新しい政策決定で、日本の集団的自衛権の行使が認められれば、北朝鮮や中国に対する抑止力は一気に増大し得る。
≪宿題の「トラスト・ミー」≫
  日本の防衛産業は10年余にわたる防衛予算の減少によって衰退してきた。  だが、2011年12月に野田政権が提案したいわゆる武器輸出三原則の政策変更を、政府がもっと現実的に実施すれば、日本の防衛企業はビジネス機会を増やせ力も強くなるだろう。
 例えば、三菱重工などの日本企業は、F35戦闘機の部品の製造を認可されて、アジアにおけるF35や他の航空機の修理拠点となるべきである。
  首相の権限内にあるこれらの措置に反対できるのは、中国や北朝鮮、そして日本の官僚とマスコミのうち最も非現実的な連中ぐらいのものだろう。
  今月下旬に予定される日米首脳会談の前に考慮に値する、やり残しの宿題がふたつある。
 ひとつは、米軍普天間飛行場を閉鎖して移設する日米合意の履行について、安倍氏オバマ氏に本当に「トラスト・ミー」(自分を信頼)してもらえて、氏を安心させることだ。   普天間に配置されている米海兵隊の航空機を、辺野古近くのキャンプ・シュワブ内に建設される2本のV字型滑走路へ移動させることで、南部の沖縄住民の騒音による負担はかなり軽減される(一部の批判者たちが、普天間を運用状態のままにしておきたいために作った手前勝手な理屈を盾にして、言い立てているような新しい基地ではない)。
  第2に、日本は過去何十年も、米空母艦載機が洋上の作戦飛行に戻る前、陸上の滑走路を甲板に見立てて行う夜間の陸上離着陸訓練(FCLP)を年7、8回、安全に実施する代替飛行場を探すと約束してきた。
  米国は多少の安全上のリスクを冒して、硫黄島をこの目的に渋々使ってきた。
≪中道への真っ当な動きだ≫
 民主党政権時代の11年に開かれた日米両国の外務・国防担当閣僚会合(2プラス2)の参加者たちの間で、鹿児島県種子島沖にある馬毛島が恒久的施設として使用されることに決まりながら、それきりになっている。だが、この1月24日に、左藤章防衛政務官がその方向で前進したいと述べて、馬毛島がFCLPの候補に残っていることを明らかにした。
 安倍政権の13年度予算では、防衛費がほんの少しだけ増額された(今のところ象徴的な措置でしかない)。防衛予算をさらに増額しなくても、集団的自衛権の行使を認める内閣の新しい政策を作ること、日本の防衛産業に対しもっと理にかなった柔軟性を許容すること、沖縄での米軍再編に関する日米合意を履行するとの固い確約をオバマ大統領に対して行うこと、そして、新しいFCLPの実施場所を決定すること、といった諸措置を取れば、安倍首相は、現実主義的な日米防衛協力という新しい時代を画することができるだろうし、オバマ大統領も間違いなく、それを歓迎するだろう。
 誤解がないよう言っておくが、これは、日本や米国の一部の批判者ですら言い募っているような、「急激な右傾化」には決して当たらない。そうではなくて、国家安全保障政策における中道への真っ当な動きを告げるものであり、遅きに失したぐらいである。