・岡田克也外相(当時)は、いわゆる東アジア共同体に米国を入れない旨の発言をしたが、これは、鳩山氏の普天間問題での軽率な発言よりはるかに、米国に懸念を抱かせたにちがいない。

・鳩山政権が日米同盟を揺るがした、より根本的な原因は、この政権が米国と距離をおく東アジア志向をとったことにある。
岡田克也外相(当時)は、いわゆる東アジア共同体に米国を入れない旨の発言をしたが、これは、鳩山氏の普天間問題での軽率な発言よりはるかに、米国に懸念を抱かせたにちがいない。
・日米同盟の今後の発展は、日本が米国の政策に、どのように国益をすり合わせ、「中心的存在」として協力していくかに大きくかかっている。






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修復された日米関係
大阪大教授・坂元一哉 2013.3.9 03:07
 「日米同盟は太平洋地域における米国の安全と、多くの政策の中心的基盤である」
 先日の日米首脳会談で、バラク・オバマ大統領は安倍晋三首相を前に、そう明言した。
 「中心的基盤」という表現で思い出すのは2009年の11月、1期目のオバマ大統領が東京で行った演説である。  大統領はこの演説のなかで、米国がアジア太平洋の安全と繁栄、人間の尊厳のためにとるさまざまな政策は、この地域における米国の努力にとって常に「中心的存在」となる日本との緊密な友好関係を通して行うと明言した。
 大統領は、米国は「太平洋国家」であり、自分は米国初の「太平洋系大統領」だとも述べている。  当時私はこの演説を読み、日米同盟の前進を大いに期待したものである。
 だが周知のごとく、同盟はその後、前進どころか、大きく後退する。 責任は明らかに日本側にあった。  普天間飛行場移設問題をめぐる鳩山由紀夫首相(当時)の無責任な言動が同盟を揺るがしたことはあらためて言うまでもなかろう。
 ただ鳩山政権が日米同盟を揺るがした、より根本的な原因は、この政権が米国と距離をおく東アジア志向をとったことにある。
 岡田克也外相(同)は、いわゆる東アジア共同体に米国を入れない旨の発言をしたが、これなどは、「最低でも県外」とか「トラスト・ミー」とかいった鳩山氏の普天間問題での軽率な発言よりはるかに、米国に懸念を抱かせたにちがいない。アジア太平洋政策の「中心的存在」と頼む同盟国が、米国離れを志向しているようにしか聞こえないからである。
 鳩山政権の退陣後、菅、野田、両政権のもとで日米同盟はだいぶ持ち直した。  これはもちろん、同盟強化のための両政権の努力や、東日本大震災後の「トモダチ」作戦の成功などにもよる。
 だが普天間問題が解決しないなかで、同盟関係の改善が見られた一番の理由は、両政権が東アジア共同体に言及しなかったことではないか。  両政権はむしろ、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)参加の意向を示し、アジア太平洋の国際秩序形成における米国志向を明確にした。
 オバマ政権のアジア太平洋政策は、中国の軍事的台頭を押さえ込みつつ、TPPなどでこの地域に自由と繁栄をもたらす米国主導の経済システムをつくり、将来的には、中国もそこに取り込むことを狙うものと思われる。
 日米同盟の今後の発展は、日本がこの米国の政策に、どのように国益をすり合わせ、「中心的存在」として協力していくかに大きくかかっている。
 首脳会談後の記者会見で安倍首相は、オバマ大統領と「同盟強化の方向性について率直に議論し、そして意見の一致」を見たと胸を張った。 たしかに、日本のTPP交渉参加促進に役立つ共同声明が出されるなど、「方向性」の一致を感じさせる会談だった。
 首相が緊密な日米同盟の復活を宣言したのも理解できる。  鳩山政権後の努力と、筋金入りの同盟強化論者である安倍首相の再登板、そしてこの首脳会談で、オバマ大統領の東京演説後に生じた日米の「方向性」のずれは完全に修復されたと見てよいだろう。(さかもと かずや)