・日本はTPP参加を拒否して中国のような国家資本主義の陣営に属してはならない。 高いレベルのワールドスタンダード形成に参加してそれに中国を誘い込む努力をすべきだ!

・TPP交渉で採用された貿易ルールはGDPと貿易総額両面で圧倒的シェアを誇るアジア太平洋、欧州両地域に共通のルールになる。
・「包括的で高い水準の協定」を目指すことは変わらず自由化率は最低でも米豪FTAの96%以上になると予想される。
・非農産品分野ではTPPや対EU(日EUEPA交渉入りに3月合意か)交渉で日本は相手側に関税撤廃の圧力をかける立場に立つ。
ワールドスタンダードな貿易ルールを受け入れるのを期に日本農業の抜本的な構造改革を実施する国民的合意が必要だ。
・中国は世界第2位のGDP大国になったが、国内資本の輸出競争力は脆弱で大幅な関税率引き下げには耐えられないだろう。
・TPP交渉は、税関手続きの簡素・迅速化、食品の安全基準の統一、衛生植物検疫の義務付け、映画や書籍の知的財産の保護、金融サービスや政府調達参入の内外公平の確保、投資家と国家間の紛争解決条項(ISD条項)など非関税障壁の撤廃(ないしルールの統一化)を進めようとしている。
・中国は共産党官僚が支配する国家資本主義の体制だ。 巨大な国営企業共産党幹部の支配下にあり地方政府官僚の汚職公共工事発注の不正も日常茶飯事だ。
・日本はTPP参加を拒否して中国のような国家資本主義の陣営に属してはならない。 高いレベルのワールドスタンダード形成に参加してそれに中国を誘い込む努力をすべきだ!
・自由と民主主義から遠い異質国家・中国が国際的なルールを守るワールドスタンダードな国になる時が早く訪れることを切に願う。




〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
2013年2月25日 13:35
日本のTPP交渉参加で異質国家・中国は孤立?
(2013年2月25日筆)
  消費増税、そしてTPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉への参加はいずれも、日本経済が生き残るために避けて通ることのできない重要課題だった。
  その2つの問題解決の口火を民主党元総理の菅直人氏が切り民主党前総理の野田佳彦氏が前へ進めた。 その結果、民主党は内部分裂し政権を失った。
  民主党が党の存亡を賭けて踏み込んだ2つの難問解決のその成果を、安倍自民党総理は巧妙に刈り取る形になったようだ。  安倍氏には自民党内の交渉参加への合意手続きが残るが、菅、野田氏の努力を無にしてはならない。

ワールドスタンダードな貿易ルール作りに参加
求められる「高い水準の自由貿易化」の実現
  事実上のTPP交渉参加表明によって遅まきながら日本も米国を軸に展開されるワールドスタンダード(国際標準)の貿易ルール作りに参加できることになった。  このワールドスタンダードの貿易ルール作りはTPP交渉が先行、米EUFTA自由貿易協定――2月13日に交渉入り合意)交渉にも受け継がれる。
  TPP交渉の参加国(日米を含め12カ国)と米EUFTA交渉の参加国(EU加盟は現在27カ国)のGDP国内総生産)を合算すると全世界のGDPの6割以上に達する。 貿易総額も同程度のシェアだろう。  TPP交渉で採用された貿易ルールはGDPと貿易総額両面で圧倒的シェアを誇るアジア太平洋、欧州両地域に共通のルールになると思われる。  これらには中国は含まれない。

 ワールドスタンダードな貿易ルールの第一は「高い水準の自由化比率」となりそうだ。  自由化率とは全輸出品目に占める関税撤廃品目の割合をいう。下表は二国間で結ばれたFTAEPA経済連携協定)の自由化率だが、米豪間では米国の豪州からの輸入品目のうち96%が関税ゼロ、韓EU間ではEUの韓国からの輸入品目のうち99%以上が関税ゼロとなっている。

 今回のTPPをめぐる日米共同声明では、「日本には一定の農産品、米国には一定の工業製品というように、両国とも2国間貿易上の「センシティビティーズ(敏感な品目)が存在することを認識しつつ」「TPP交渉参加に際し、一方的にすべての関税撤廃をあらかじめ約束するよう求められるものではない」という表現が盛り込まれた。  この表現によって、一部の農産品が関税撤廃の例外品目になる道が開かれ、「聖域なき関税撤廃を前提とする限りTPP交渉参加に反対する」とする自民党公約をクリヤーすることになった。
  しかし共同声明では「すべての物品が交渉の対象になること、包括的で高い水準の協定を達成していくことを確認する」とも謳われている。  関税撤廃の例外品目が一部あっても「包括的で高い水準の協定」を目指すことは変わらず自由化率は最低でも米豪FTAの96%以上になると予想される。  韓EUFTAの自由化率が100%近い水準であることを考え合わせると、ワールドスタンダードの自由化率がかなり高い水準に落ち着くことは容易に想像がつく。

工業製品など非農産品では日本は交渉上優位に立つ
農産品にも相手国関税引き下げで輸出産業化の道も
  日本の関税率は工業製品など非農産品ではすでに世界で最も低い水準にあり(下表)、高い水準の自由化率というワールドスタンダードの貿易ルールは日本の有力な武器になる。  非農産品分野ではTPPや対EU(日EUEPA交渉入りに3月合意か)交渉で日本は相手側に関税撤廃の圧力をかける立場に立つ。

 TPPへの参加国は現在、米国、カナダ、メキシコ、豪州、マレーシア、ベトナムなどだが、日本が参加すればタイやフィリピンそして韓国も参加する可能性がある。 これらの環太平洋諸国にEU諸国を加えると日本が享受する非農産品の平均関税率引き下げの効果は大きい。  関税率引き下げで日本からの輸出が容易になれば工場の海外進出、日本からの脱出が幾分和らぐかもしれない。
 農産品についても相手国の関税率が引き下げられれば、コメ、野菜、果実など日本農産品の輸出拡大をもたらす可能性がある。  ワールドスタンダードな貿易ルールを受け入れるのを期に日本農業の抜本的な構造改革を実施する国民的合意が必要だ。その際、安倍政権が創設した「産業競争力会議」で複数の民間議員から出された提案が参考になる。
 提案は50ヘクタール規模への農地集約、コメの生産調整の段階的な縮小、株式会社への農地利用開放などの構造改革を通じて農業の生産性を高めるとしている。 そのうえで農業の輸出産業化をはかり10年後、米仏に次ぐ農産物輸出額世界第3位、フルーツは後輸出額世界一になるなどの目標を達成するという。稼げず後継者がいない農業から稼げる後継者が続出する農業への転換だ。

中国はワールドスタンダードの圏外に置かれる
日本は国家資本主義の陣営に属してはいけない
  さて問題は中国だ。 現状のままでは中国は環太平洋諸国の中でTPP交渉の埒外、つまりワールドスタンダードの圏外に置かれる可能性が強い。
  菅元総理以来の日本のTPP交渉参加への動きは中国を慌てさせたに違いない。 中国は韓国を抱き込んで中韓FTA交渉を急ぐ一方、日中韓FTA交渉にも踏み込んだ。 中国を含むより広域な東アジア地域包括的経済連携(RCEP=ASEAN10カ国+日中韓印等6ヶ国)も正式に立ち上がった。  いずれにも米国は参加していない。
 しかし中国が主導する自由貿易協定は関税撤廃の例外品目が多く平均関税率が低い、「自由化率がかなり低い水準の協定」にならざるを得ない。上表に見るように中国の関税率は非農産品、農産品とも先進諸国に比べかなり高い。中国は世界第2位のGDP大国になったが、国内資本の輸出競争力は脆弱で大幅な関税率引き下げには耐えられないだろう。
 中国がワールドスタンダードな貿易ルールに耐えられないのは関税率だけではない。 いやそれ以上に中国は、TPP交渉で押し進めようとしている非関税障壁という「貿易の壁」の撤廃に耐えられないだろう。
 TPP交渉は、税関手続きの簡素・迅速化、食品の安全基準の統一、衛生植物検疫の義務付け、映画や書籍の知的財産の保護、金融サービスや政府調達参入の内外公平の確保、投資家と国家間の紛争解決条項(ISD条項)など非関税障壁の撤廃(ないしルールの統一化)を進めようとしている。
 中国は共産党官僚が支配する国家資本主義の体制だ。 巨大な国営企業共産党幹部の支配下にあり地方政府官僚の汚職公共工事発注の不正も日常茶飯事だ。 政治的目的を達成するためならレアアースの禁輸、輸入手続きの意図的遅延などなんでもあれの国だ。   いたるところで模倣品が売られ海外の知的財産が犯されている。  中国政府は投資家利益を踏みにじりISD条項を適用されてもおかしくないような事件を引き起こすことも多々あった。
 そんな中国が、「非関税障壁の撤廃」というワールドスタンダードに耐えられるはずがない。  非関税障壁の撤廃を中国が受け入れる時は、中国が共産党一党独裁という政治体制を放棄し自由と民主主義を受け入れて法に基づくルールを重んじる国家に転換する時だろう。
 日本はTPP参加を拒否して中国のような国家資本主義の陣営に属してはならない。高いレベルのワールドスタンダード形成に参加してそれに中国を誘い込む努力をすべきだろう。  自由と民主主義から遠い異質国家・中国が国際的なルールを守るワールドスタンダードな国になる時が早く訪れることを切に願う。