・資金運用で、日本の経済活力や国民の生活に大きな違いが出てくることは明らかだ!

・GPIFはその運用資金の多くを国債などの国内債券に集中させているのに対し、海外の年金基金は株式や外国証券などに積極的に投資している。
・2003年を100としたときの2011年時点の年金のパフォーマンスを見ると、日本のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は114であるのに対し、カリフォルニア州職員退職者年金基金は148、オランダ公務員総合年金基金は161である。
・国民の老後の資金をしっかりと確保するという意味では、日本の年金はあまり褒められた成果を出していない。
・1500兆円の個人金融資産をすべて預貯金で回せば、1年間に約1兆5千億円の金融収益しか出せないのに対して、リスク資産に投資して3・6%で回せれば1年間に54兆円稼ぎ出せることになる。
・資金運用で、日本の経済活力や国民の生活に大きな違いが出てくることは明らかだ!



〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
預貯金では収益見込めぬ
東京大・大学院教授 伊藤元重  2013.4.8 03:06
 先日、資産運用についての興味深い数字を見た。 毎年一定額の資金を貯蓄するとして、それをすべて預貯金に回した場合と、株や外債などのリスク資産にも投資した場合で、結果的に資産の増え方がどの程度違うのかを見た数値だ。 1993年から2012年まで、毎年一定額を投資したとき、2012年の時点で資産の運用収益は元本に対してどれだけの割合になるのか試算したものだ。
 定期預金だけで運用すれば、1・7%(年平均で0・1%)、国内の株・債券に半分ずつ投資すれば2・1%(同0・1%)、国内・先進国の株と債券に4分の1ずつ投資すれば27・8%(同1・4%)、国内・先進国・新興国の株と債券に6分の1ずつ投資すれば71・1%(同3・6%)になるという。 この20年の間、どのような資産運用を行ったのかによって、その人の生活が大きな影響を受けるということだ。
 この20年の間には、日本の金融危機も、米国のITバブルの崩壊も、リーマン・ショックもすべて含まれている。  大きなショックがあったときには、株や外貨建てのようなリスク資産は大きな損失を出す。  そうした損失を考慮に入れても、20年でならしてみるとこれだけの違いになる。
 リスク資産は大きく価値を下げることもあるが、その後また大きく取り戻せる。20年間しっかり投資していれば、それなりの高い収益率になる。これに対して、預貯金はずっと収益率が低いままである、預貯金でもっているかぎり高い収益をあげることは不可能であるのだ。
 日本国民の資産運用の問題点はあまりにも多くが預貯金のような収益性の低い資産に集中しているということである。  それで国民の資産がきちっと守られていればよいのだが、収益性で見るかぎり、国民のためにもなっていないようである。 個人の資産だけではない。  公的な年金運用でも、日本は諸外国に大きく見劣りしている。  2003年を100としたときの2011年時点の年金のパフォーマンスを見ると、日本のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は114であるのに対し、カリフォルニア州職員退職者年金基金は148、オランダ公務員総合年金基金は161である。
 GPIFはその運用資金の多くを国債などの国内債券に集中させているのに対し、海外の年金基金は株式や外国証券などに積極的に投資しているのだ。
 国民の老後の資金をしっかりと確保するという意味では、日本の年金はあまり褒められた成果を出していないのだ。
 リスクのある分野にどれだけ資金を回していくのかということが、日本経済の活性化の重要な鍵となっている。
 冒頭の個人の運用成績の数字を使えば、1500兆円の個人金融資産をすべて預貯金で回せば、1年間に約1兆5千億円の金融収益しか出せないのに対して、リスク資産に投資して3・6%で回せれば1年間に54兆円稼ぎ出せることになる。
 日本の経済活力や国民の生活に大きな違いが出てくることは明らかだ。(いとう もとしげ)