日本側は、寧ろ、ただで即、樺太、千島の北方領土返還を迫る立場だ!

・ロシアのプーチン政権はさまざまな手を打ってくるが、その多くは、日本を揺さぶるだけの「見せかけ」に過ぎない。 
プーチンは現在、内政、外交とも難題に直面し、権力の座にとどまるのに汲々としている指導者であり、対外的に思い切った決断などなし得るはずはない。
・日本側は未来永劫、ロシア側に経済、科学技術、医療、農業、その他の分野での協力を迫られる筋合いは無い。 日本側は、寧ろ、ただで即、樺太、千島の北方領土返還を迫る立場だ!
・シベリア抑留問題を日本は決して忘れてはいない。
・米国からシェールガスが入ってきて、わが国がロシアの石油やガスを必要としなくなるのも2017年以降である。
北方領土問題の解決−平和条約の締結をロシア側に迫るための環境整備に資する、という確信が持てる場合以外には、国際協力銀行の資金を用いてはならない。





〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
安倍安定政権は焦るロシア待て
北海道大学名誉教授・木村汎  2013.7.29 03:22 [正論]
北方領土はいずれ日本有利に≫
 安倍晋三首相率いる自民党参議院選で圧勝し、安倍政権が長期安定化する見通しが強まった。  こうした事態の展開を見て、ロシアのプーチン政権はさまざまな手を打ってくるに違いない。  だが、その多くは、日本を揺さぶるだけの「見せかけ」に過ぎないだろう。  
 安倍政権は軽々にそれに乗る愚を犯してはならない。状況はいずれ日本側有利に転じるとの大局観に立ち、「お手並み拝見」といった余裕をもって、ロシア側が焦り始めるのを待つべきだろう。
 プーチン政権が今後、日本に対して採るのは、ほとんど「パカズーハ(見せかけ)」戦術と予想して間違いない。
 パカズーハとは、ロシア語の動詞「ポカザーチ(見せかける)」から派生した語で、本心を偽ったうわべ上の擬態もしくはジェスチャーを指す。
 例えば、中露関係が変わらず良好であるかのように見せかける。
 この3月、習近平・中国国家主席が訪露した際、プーチン大統領は確かに、これ以上ないほどの歓待ぶりを披露した。
 ところが、習主席の訪露中とその後の北京に対するモスクワの態度を注意深く観察すると、中露間には微妙な思惑や見解の食い違いが漣(さざなみ)のように立っていることに気づく。
 中国側が米国への対抗上、ロシア側に擦り寄る姿勢を示しているにもかかわらず、モスクワは北京の期待には必ずしも応えようとしない。
 日本に向けては、プーチン大統領は今こそ領土交渉妥結の絶好機が到来しつつあるかのごとく見せかけようと懸命である。
 だが、プーチン氏は現在、内政、外交とも難題に直面し、権力の座にとどまるのに汲々(きゅうきゅう)としている指導者なのである。対外的に思い切った決断などなし得るはずはない。
≪環境整備めぐる幻想を断て≫
 プーチン氏の日本相手の「見せかけ」戦術で、とりわけ日本側が細心の注意を払わねばならないのが、「環境整備」の勧めだ。
 日本側が環境整備に努め、日露関係全体の改善に努力すれば、あたかも領土返還が実現するかのような幻想を抱かせる手法である。
 では、果たして、日本がどの程度までロシア側に協力したら、モスクワが四島返還に踏み切る環境が整備されたということになるのか。
 この問いへの答えは定かでないどころか、その判断は一重にロシア側に委ねられている。
 となると、日本側は未来永劫(みらいえいごう)、ロシア側に経済、科学技術、医療、農業、その他の分野での協力を迫られる恐れなきにしもあらずだ。
 以上で、安倍首相が採るべき対露戦略は自(おの)ずと明らかだろう。

 まず、現時点ではまだ対露交渉の最良の機会が訪れていないと自覚すべきだ。 プーチン氏が置かれている現状から判断する限り、日本側は決して今、勝負に出るべきではない。 米国からシェールガスが入ってきて、わが国がロシアの石油やガスを必要としなくなるのも2017年以降である。
 次に大事なのは、政治と経済を完全に切り離してはならないことだ。
 端的にいえば、ロシアが欲しいのは日本の経済で、日本が欲しいのは領土である。
 己の欲しいものを得るために他が欲しいものを差し出す。それこそが取引成立のポイントであり、正常な交渉決着の姿である。
 キッシンジャー元米国務長官は、政治と経済のリンケージ(関連)は戦術でなく、むしろ現実と見なすべきだと言う。
 「スマートパワー」という概念の提唱者であるジョセフ・ナイハーバード大教授は、ハードパワーに文化力などのソフトパワーを結合して用いるのが真にスマートなパワーの使用法だと、例え話で説く。
 ハードパワーであれ、ソフトパワーであれ、1つだけを用いるのでは、ボクサーが右手もしくは左手だけを用いるのに似て、勝利できるはずはない、と。
国際協力銀行資金は大切に≫
 戦後日本は、国際紛争を解決する手段として軍事力を使用することを自らに禁じている。 したがって、引き算すれば、文化力と経済力しかないことになる。 文化力というのは、もともと直接的な外交交渉力へは転換されにくいので、消去法でいけば、日本政府には経済力をフルに用いる以外の術は残されていないことになる。
 だが、日本は自由主義経済を建前としているから、北方領土問題を軸とする日露関係の成り行きいかんにかかわらず、民間企業がロシア市場へ進出したいと欲するなら、止める手立てはない。
 となると、対ソ交渉の切り札として日本政府に残される手段は、国際協力銀行の資金だけになる。
 この資金は日本国民の血税を集めたものにほかならない。それだけに、北方領土問題の解決−平和条約の締結をロシア側に迫るための環境整備に資する、という確信が持てる場合以外には、同銀行の資金を用いてはならない。
 さもなければ、ロシア人の間ですでに形成されかけている日本人観がさらに強化されることになろう。
 日本人による領土返還要求はあくまで建前にすぎない、本音は実はロシアからの資源の安定供給にある、という誤解である。(きむら ひろし)