・新興国は2000年以前は、なかなか先進国の仲間入りができない状態だった。

・なぜ今、新興国リスクが突然浮上してきたのか?
・2000年に20%であった新興国発展途上国のシェアは、1980年代の初めには24%前後だった。
新興国は2000年以前は、なかなか先進国の仲間入りができない状態だった。
新興国は成長を続けるというこの10年くらいの間に定着した神話については、疑いをもって見なくてはいけない。





〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
新興国、成長継続の神話
東京大・大学院教授 伊藤元重  2013.9.16 03:08
 新興国が、突如世界経済の大きなリスクとして浮上してきた。 中国経済の失速は止まったようにも見えるが、金融市場などに大きな構造的な問題を抱えていることはよく知られている。
 インド、インドネシア、ブラジルなどの国では、米国の金融引き締め観測などの影響もあって、資金流出の動きに対応するのに必死である。
 資源価格の低迷で、ロシア経済にも懸念が広がっている。
 なぜ今、新興国リスクが突然浮上してきたのか、不思議に思う人も少なくないだろう。
 2000年以降の新興国の急速な拡大と発展を目にしてきただけに、そうした疑問はなおさら強くなる。
 私たちはどうしても、直近の動きに影響され、過去のことを忘れがちだ。 BRICSに代表される新興国発展途上国は2000年以降、急速に成長した。 
 世界経済におけるそのシェアは、2000年には20%であったのが、2007年には34%に膨れ上がっている。
 だから、新興国は成長を続けるものであると勘違いしてしまっている人が多い。
 2000年に20%であった新興国発展途上国のシェアは、1980年代の初めには24%前後だったそうだ。
 つまり、2000年以前は、新興国や途上国が全体として世界経済の中でシェアを拡大してきたわけではない。
 むしろ、なかなか先進国の仲間入りができない、というのが新興国のイメージであったのだ。
 ただ、重要なことは個々の国が成長できないというわけではない。それどころか、条件が整えば、ある時期急速に成長できるというのが新興国の特徴でもある。
 70年代のブラジル、80年代後半からの東南アジア諸国、そして90年代後半からの中国などである。
 ただ、多くの国は、長期間成長を続けることができるというよりは、どこかで大きなショックに見舞われる。
 ブラジルは80年代初めの累積債務問題でその後大変な苦しみを味わうことになる。
 東南アジア諸国は90年代末に通貨危機に見舞われ、その後は成長率も鈍化している。
 そうした意味では、2000年以降は特殊な時期だったのかもしれない。
 すべての新興国・途上国が成長の機会に恵まれたからだ。その結果が、先ほど触れた新興国のシェア拡大である。ただ、経済には常に好事魔多しという言葉がつきまとう。
 すべての新興国が急速な成長機会に恵まれたということは、すべての途上国が厳しい成長の鈍化に直面するということも考えられる。
 リーマン・ショックにまでつながる2000年代の経済的拡大はそれほど特異の状況であり、当然その反動としての調整はまだ続いている。

 もちろん、新興国や途上国がすべて問題ということではない。
 また、多くの新興国や途上国が今の困難を早期に脱する可能性だって否定できない。
 過度な悲観論はいましむべきだろう。ただ、新興国は成長を続けるというこの10年くらいの間に定着した神話については、疑いをもって見なくてはいけない。(いとう もとしげ)