・日英米、3カ国の協力強化は軍事、経済両面で不可欠だ!

・世界は今、中国の台頭や中東情勢の流動化などで激しく動き、とりわけ東・南シナ海からインド洋に至る地域の緊張が高まっている。
・米国のパートナーとして自由と民主主義、航海と貿易の伝統を共有する日英両国は今こそ戦略的対話を活発化させるときである。
・日英関係の強化は、わが国の外交の選択肢を広げ、東アジア、ひいてはアジア太平洋地域の新たな秩序形成にも道を拓く。
・英国では、かつて盛んだった大学の日本研究がここ数年、中国中心に様変わりするなど、日本の影が急速に薄れつつある。
・日英協力、さらに米国を加えた3カ国の協力強化は、軍事、経済両面で台頭してきた中国との未来志向の関係確立にもつながると確信する。
・日英米、3カ国の協力強化は軍事、経済両面で不可欠だ!





〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
日英協力で外交の選択肢広げよ
日本財団会長・笹川陽平   2013.9.20 03:11 [正論]
 東インド会社のグローブ号が1613年、徳川幕府に対するイングランド国王の公式書簡を携え長崎、平戸を訪れてから400年。
 英国では日英交流を祝う「JAPAN400」の催しが進み、今月末、日本で開催される日英安全保障協力会議にはエリザベス女王の次男、ヨーク公爵アンドルー王子も出席される。
 ほかにも今年は長州藩が派遣した伊藤俊輔(博文)ら5人(長州ファイブ)がロンドンの大学に入学して150年、英国海軍教官団が東京・築地の海軍兵学寮(後の海軍兵学校)で初めてサッカーを教えてから140年、帝政ロシアの極東進出に対し結ばれた日英同盟が失効して90年にも当たる。
≪難題増える日本外交≫
 世界は今、中国の台頭や中東情勢の流動化などで激しく動き、とりわけ東・南シナ海からインド洋に至る地域の緊張が高まっている。
 尖閣諸島問題に限らず海洋航路・海洋資源の確保など日本外交の難題も間違いなく増える。
 米国のパートナーとして自由と民主主義、航海と貿易の伝統を共有する日英両国は今こそ戦略的対話を活発化させるときである。
 ユーラシア大陸の両端に位置する両国の関係は、あまりに淡泊(たんぱく)であり過ぎた。  日英関係の強化は、わが国の外交の選択肢を広げ、東アジア、ひいてはアジア太平洋地域の新たな秩序形成にも道を拓(ひら)く。
 両政府間には昨春、キャメロン首相と野田佳彦前首相との間で、「世界の繁栄と安全保障を先導する戦略的パートナーシップ」が合意され、同6月には防衛協力協定も締結された。  海賊対策やアフガニスタン支援の海上給油支援など連携も密になりつつある。
 こうした中、日英安全保障協力会議は英王立防衛安全保障研究所(RUSI)と笹川平和財団の共催で、「21世紀の新たなるパートナーシップ形成に向けて」をテーマに9月30日と10月1日、開催される。
 「日英安全保障協力の将来」などについて両国の専門家が討議、安倍晋三首相、アンドルー王子の基調講演も予定されている。
 RUSIは1831年に創設され米外交政策にも大きな影響を与えている世界最古の軍事・安全保障のシンクタンクで昨年、東京にもアジア本部を開設している。
≪内政優先で米外交に余裕なし≫
 日本は長らく国連と日米同盟を外交の基軸としてきたが、テロやサイバー攻撃など2国間同盟だけでは対応できない問題が増え、国連も安全保障理事会の機能不全で本来の機能を失っている。  オバマ米政権も内政優先で、外交については余裕がない状態にある。
 とりわけ、南シナ海からインド洋、中東にかけた地域に関してはインドやスリランカシンガポールバングラデシュなど英連邦の幅広いネットワークを持つ英国の情報や分析力が日本にとっても米国にとっても欠かせない。その英国では、かつて盛んだった大学の日本研究がここ数年、中国中心に様変わりするなど、日本の影が急速に薄れつつある。
 われわれも若手研究者の日本研究促進や日本語文献の翻訳者養成などに取り組み、この6月には、1985年にロンドンに設立したグレイトブリテン・ササカワ財団と英王立国際問題研究所(チャタムハウス)との間で共同研究事業をスタートさせ、5年後の政策提言を目指している。
 しかし日英協力を前進させるには、政府の積極姿勢こそ欠かせない。共同研究が始まる前日、主要8カ国(G8)首脳会議でロンドン滞在中の安倍首相が、金融街ティーの由緒あるギルドホールで自らの経済政策について講演。
 日露戦争が始まったばかりの1904年、戦費調達のためシティーを訪れた高橋是清が助力を得た香港上海銀行ロンドン支店長がキャメロン現首相の高祖父(祖父母の祖父)であった事実を紹介するとともに、「強い政治的意思でデフレを解決した」と語り、自信に満ちた演説に会場からは「近年、まれな未来志向を持った日本の指導者だ」と大きな拍手が起きた。
 安倍首相は、第2次政権発足以来、ベトナムなど東南アジア諸国連合ASEAN)3カ国、ロシア、中東などを相次ぎ訪問、従来の首相になかった積極外交を展開し、今回の2020年オリンピック東京招致でも先頭に立った。
 首相による積極外交の展開を引き続き可能にする国会改革など環境づくりが進められるよう望みたい。

≪「もの言わぬ外交」通用せず≫
 グローバル化の中で多極化、時に無極化ともいえる状況が進み、世界におけるアジアの影響力が増す新しい時代に移行しつつある。
 日英協力は民主的価値観、海洋における法の支配を強化し、アジア・太平洋に軸足を移し新たな安全保障の枠組みを模索する米国にとっても有意義な試みとなる。

 「もの言わぬ外交」はもはや、通用しない。世界の経済、政治の今後を占う意味でも各国は日本の動向に注目している。
 日英協力、さらに米国を加えた3カ国の協力強化は、軍事、経済両面で台頭してきた中国との未来志向の関係確立にもつながると確信する。(ささかわ ようへい