制度改革なくば官僚が国政を壟断する国家がいつまでも続くのだ! 「内閣人事局」構想を強力に進めよ!

・まず企業に儲けさせて、内部留保資金を設備投資や昇給に使わせることに、政策を集中させる。
・今後、規制緩和構造改革など「第3の矢」を放つハードルを乗り越えれば日本に曙光も差してくる。
・日本の政治は、戦中は内務省、戦後は予算を握る財務省がかなりの政策を仕切ってきた。 絶大な権限を有する財務省と対峙した首相は戦後初めてだ!
・各省が自省の人事を取り仕切る現行システムは、「局あって省なし」「省あって国なし」の公務員しか作らない。
・国家的発想ができる官僚を育てるには、幹部600人の人事考課を、内閣で一括して行うのが最善の策だ!
・官僚の通弊は既定路線を切り替えられないことだ! だから、15年も風邪をひくようなぬるま湯デフレから脱却できなかった!
・「内閣人事局」構想に財務省などは必死の反対工作をしている。
・幹部公務員制度は、そうした“腕力”ではなく、適正な人事評価により全員が所を得る仕組みを作るものだ。
人事院は懸命に法案の骨抜きを図っている。だが、制度改革なくば官僚が国政を壟断する国家がいつまでも続くのだ! 「内閣人事局」構想を強力に進めよ!
 







〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
消費税の次は官僚制度に断下せ
評論家・屋山太郎   2013.10.4 03:33 [正論]
 安倍晋三首相が打ち出したアベノミクスは、デフレ脱却に向けて日本経済を動かしているようにみえる。 日銀総裁黒田東彦氏を起用して、その下での“異次元の緩和”により、凝固していたような金融が円滑化してきた。  株式市場も活性化し、高い支持率が続くと見るや、至難と思われた環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への参加に踏み切った。
≪役人政治と決別し苦境脱す≫
 夏頃には消費税増税はしないとの見方も流れたのに、国内総生産(GDP)の成長率が高まると、現行の5%から8%への引き上げを決断した。 上げ幅3%分のうち2%相当額は企業減税や、給与を上昇させた企業への給与減税に充てるという。 これまでなら、先に所得税減税をやれとの声に押されそうなところだが、まず企業に儲(もう)けさせて、内部留保資金を設備投資や昇給に使わせることに、政策を集中させるのだという。
 今後、規制緩和構造改革など「第3の矢」を放つのは、より困難になってくるとみられるが、そのハードルを乗り越えれば日本に曙光(しょこう)も差してくるだろう。
 日本はこの15年、デフレを克服できなかった。 安倍首相が登場していなければ、そのままジリ貧状態を続けていただろう。 苦境からとにもかくにも抜け出せそうになってきたのは、安倍氏が「官僚政治」と決別したからだと断じていい。 氏は、日銀法改正をちらつかせて白川方明総裁を辞任に追い込み、後任には、財務省が推した財務次官上がりの武藤敏郎氏を退けて“意中の人”を据えた。
 日本の政治は、戦中は内務省、戦後は予算を握る財務省がかなりの政策を仕切ってきた。絶大な権限を有する財務省と対峙(たいじ)した首相は戦後初めてではないか。
 安倍氏は第一次内閣時に、官僚が国会議員を差し置いて実体的に政治を差配するのはよくないと、法改正に着手した。
 その「国家公務員制度改革基本法」は次の福田康夫内閣時に成立し、基本法を踏まえて、幹部公務員の人事は「内閣人事局」が行う幹部公務員法も立法化する段取りだった。
≪省あって国なしの公務員では≫
 各省が自省の人事を取り仕切る現行システムは、「局あって省なし」「省あって国なし」の公務員しか作らない。
 農水省を一例に取ると、「日本は農地が少ないから他国と競争はできない」として、TPPには省を挙げて反対だ。
 林芳正農相以前は、大臣までが官僚と同じことを言っていた。
 「農地が少ないのに、なぜ減反をするのか」と反問する官僚は、そこで出世は終わりである。
 国家的発想ができる官僚を育てるには、幹部600人の人事考課を、内閣で一括して行うのが最善の策だ。
 麻生太郎内閣でもその法案作成は続けられたが、麻生氏の「オレは官僚バッシングはしない」の一言で幹部公務員が反旗を翻した。
 時の人事院総裁谷公士氏は、政府案決定のため麻生氏が招集した最後の会議をボイコットして、法案作成を潰したのである。
 「官僚は使うもの」というのが麻生氏の口ぐせだが、各省の利益と政党の政策は必ずしも一致しない。
 第二次安倍内閣の金融、財政政策が成功しつつあるのも、あえて財務省逆張りをしたからだ。 官僚の通弊は既定路線を切り替えられないことだ。 だからこそ、15年も風邪をひくようなぬるま湯につかりっ放しだったのだ。
 安倍氏は今回、行革担当相に起用した稲田朋美氏に、「内閣人事局」構想を具体化して今秋の臨時国会に提出するよう命じている。  しかし、与党内には制度改革の意味が分からない“親分衆”や、改革に反対する官僚出身の議員が少なくない。 
 中でも財務省などは必死の反対工作をしている。
≪「内閣人事局」構想進めよ≫
 もっともらしい反対理由は「官僚機構はそこそこ機能しているじゃないか」というものだ。 しかし、それは、安倍氏菅義偉官房長官の2人が中心になって、本省局長級112人(6月28日現在)の大量異動を実施し、内閣がやりたい政策を実行してくれる人を局長に任命したからである。
 私の見る限り、安倍、菅の両氏は戦後の内閣史上、絶妙のコンビだ。
 政治の運営方法、テンポ、人材の起用がこれほどうまい内閣もなかったのではないか。
 幹部たちは戦々恐々として首相と官房長官の動きをうかがっているから、波風が立たない。 今の安定状況はいってみれば、安倍、菅の両氏の腕っぷしがしからしめているわけであって、システムとして官僚たちが国家の使命を認識したことによるものではない。
 幹部公務員制度は、そうした“腕力”ではなく、適正な人事評価により全員が所を得る仕組みを作るものだ。
 稲田氏に求められているのは、給与をランク付けしている「級別定数」を、人事院から「内閣人事局」に移管するといった荒技(あらわざ)である。 最も肝要なのは、公務員の身分保障を外すことだろう。
 人事院は懸命に法案の骨抜きを図っている。だが、制度改革なくば官僚が国政を壟断(ろうだん)する国家がいつまでも続く、と知るべきだろう。(ややま たろう)