・「大陸国家が海洋に乗り出して、海洋国家を兼ねようとすると、必ず失敗する」がマッキンダーの予言だ!

・「大陸国家が海洋に乗り出して、海洋国家を兼ねようとすると、必ず失敗する」がマッキンダーの予言だ!
大陸国家でありながら海洋進出の大陰謀を画策しているのが、共産党一党独裁が続く中国である。
・中国は、太平洋を米国と二分して西側を支配し、さらに、東南アジア海域からインド洋の広大な海洋を軍事的影響下に置き、東はニュージーランドから西はアフリカのサハラ以南まで勢力圏に入れようとしていることは、誰の目にも明らかだ。
・動機の1つには、1840年に英国とのアヘン戦争に敗れて以来、西欧列強や日本に浸食されほぼ100年間にわたり半植民地状態にされたのに伴う劣等感と外部世界への憤怒がある。 経済大国になった中国が、海底資源獲得に貪欲になっている。
・異形の大国の、壮大なまでに矛盾した内外での動きが、少なからぬ人々に中国早期崩壊論を語らせる理由となっている。
・日本は距離を置いて眺め事態の推移を見る。その後、経済、文化や歴史を含めて日本が改めて見直され、この地域で日本が真に主導的な役割を果たせるようになる。









〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
年頭にあたり 大陸国家が海洋に野望を抱く時
2014.1.9 03:24 [正論] 明治大学名誉教授・入江隆則
 ハルフォード・マッキンダーという英国の地政学者がいて、『デモクラシーの理想と現実』という名著を残しているのはよく知られている。 彼が同著で吐いている傾聴すべき数々の名言の一つに「大陸国家が海洋に乗り出して、海洋国家を兼ねようとすると、必ず失敗する」というテーゼがある。むろん、西洋史に限定する必要はない。例えば、19世紀末から20世紀初頭にかけての帝政ロシアの崩壊などはその典型であろう。
マッキンダー無視する中国≫
 周知のように、時のロシア皇帝ニコライ2世は、シベリア東端まで延びた大陸国家としての自国領域に満足せず、極東艦隊やバルチック艦隊などの大艦隊をつくって海洋への進出を目指そうとした。 その結果、海洋国家である日本との間に摩擦が生じて日露戦争が起こり、そこでの敗北が帝政ロシアの急速な崩壊に直結した。
 現在の「プーチンのロシア」は一昔前のソ連時代に比べれば、この歴史的教訓をよく見据えて、大陸国家の節度を踏み外さないようにしているかにみえる。  対照的にこの教訓を完全に無視して、大陸国家でありながら海洋進出の大陰謀を画策しているのが、共産党一党独裁が続く中国である。
 日本では目下、中国が尖閣諸島上の日本領空を含む空域に一方的に設定した「防空識別圏」が話題になっているが、これは中国による世界規模の海洋進出衝動の一端にすぎない。
 太平洋を米国と二分して西側を支配し、さらには、東南アジア海域からインド洋にかけての広大な海洋を軍事的影響下に置いて、東はニュージーランドから西はアフリカのサハラ以南まで勢力圏に入れようとしていることは、誰の目にも明らかだ。
≪列強浸食への劣等感と怨念≫
 中国がなぜ、かかる野望を抱くようになったかについては、さまざまな動機が考えられる。
 1つには、1840年に英国とのアヘン戦争に敗れて以来、西欧列強や日本に浸食されほぼ100年間にわたり半植民地状態にされたのに伴う劣等感と外部世界への憤怒があるとみるのが至当だろう。
 アヘン戦争以前の中国は、自他ともに許す、東洋ではもちろん、世界の大国中の大国だったのだから、以後、今日までの中国人の鬱屈と悲哀は並大抵のものではなかったと想像される。 加えて、経済大国になった中国が、海底資源獲得に貪欲になっていることも背景として忘れてはなるまい。
 ここで現在に至るまでの大国の興亡史を概観しておけば、大陸国家の全盛期だった中世が終わり、16世紀に大航海時代が始まるや、スペイン、ポルトガル、オランダなどの確執が続き、それらの闘争に最終的に勝ち残った英国が二百数十年間、「七つの海」を支配した。 その大英帝国も20世紀になって第一次、第二次の両大戦で勝者となりながらも国力が衰退して、大西洋の対岸の米国によって覇権を徐々に奪われていった。
 注目すべきは、米国もまた、四方を海に囲まれた英国のような島国ではないものの、大西洋と太平洋をともに自国の活動域と認識する海洋国家だということである。  第二次大戦後の冷戦では大陸国ソ連に勝利し、数十年の間、唯一の超大国を自任していた。が、それも束(つか)の間、旧ソ連と同様の大陸国家たる中国の挑戦を受けているのが、現下の情勢である。
 世界の海洋に張り出していずれ米国と肩を並べ、究極的には米国をも凌(しの)ごうとする大陸国家、中国の巨大な野心は、マッキンダーの予言通り潰(つい)えるのか、それとも予言を覆して成就するのか。
≪足元脆弱で早期に崩壊も?≫
 その野望国家の足元の国内を見ると、高級幹部の子弟、太子党が権力内部で台頭し、都市、農村の貧富の格差が広がり、その都市内でも富が偏在し、年間十数万件もの暴動が発生するなど深刻かつ複雑な難題が山積しており、内政上は極めて脆弱(ぜいじゃく)だといえる。
 にもかかわらず、いや、だからこそ、一連の問題で増大する国民の不満や怒りの矛先を、共産党ではなく日本などの「外敵」に向けさせ、国民の中華民族主義を昂揚(こうよう)させるために海洋覇権を目指しているのだ、とよくいわれる。 しかし、それだけでは、この破天荒な対外膨張は説明できない。
 たぶん、中国というこの異形の大国の、壮大なまでに矛盾した内外での動きが、少なからぬ人々に中国早期崩壊論を語らせる理由ともなっているのであろう。
 よしんば、それがやがて眼前の現実になったとしても、日本としては決して巻き込まれてはならない。 距離を置いて眺め事態の推移に任せるべきだと考える。
 その後にこそ、経済はもちろん文化や歴史をも含めて日本が改めて見直されるようになり、この地域で日本が真に主導的な役割を果たせるようになるのではないか。
 アジアで、ひいては世界で「新秩序」が立ち現れてくることに、私は期待している。 今年の初夢などに終わらせたくはない。(いりえ たかのり)