・政府は、電源として原子力、火力、太陽光発電など再生可能エネルギーをどう組み合わせるか、という議論を加速させるべきだ!

・家計への支援は物足りない。 低所得者へ1回限りの「簡素な給付措置」が盛り込まれたが、食料品や新聞への軽減税率は導入が見送られた。
・政府・与党は10%への消費増税と同時導入を期して準備を進めてもらいたい。
・国家戦略特区で行う規制緩和のメニューが各府省や関係団体の抵抗で大幅に後退するなど、戦略の実効性は心もとない。
・最近の消費者物価の上昇は、輸入物価や電気料金の値上げが背景にあり、需要増を契機とした「良い物価上昇」とは言えない。
・業績を上げた企業が賃金を引き上げ、家計の収入増が消費を拡大する好循環を実現せねばならない。
・電力不足を火力発電所のフル稼働で補うため、液化天然ガスなど輸入発電燃料の追加負担は1日100億円に上る。 国富が資源国に余計に流出している。
・エネルギー自給率の低い日本が今後、どう電力を確保していくかは、国家戦略にも直結する。
・政府は、電源として原子力、火力、太陽光発電など再生可能エネルギーをどう組み合わせるか、という議論を加速させるべきだ!
・中長期的には、日本が地域の安全保障に寄与することが肝要だ。
・米国や東南アジア諸国連合ASEAN)などと連携し、中国に対し、国際社会の一員としての責任を自覚して行動するよう説得し続けることが
重要だ!









〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
日本浮上へ総力を結集せよ   
古沢襄   2014.01.06
◆「経済」と「中国」に万全の備えを
 デフレの海で溺れている日本を救い出し、上昇気流に乗せなければならない。 それには、安倍政権が政治の安定を維持し、首相の経済政策「アベノミクス」が成功を収めることが不可欠である。
  当面は、財政再建より経済成長を優先して日本経済を再生させ、税収を増やす道を選ぶべきだ。
 そのうえで、年金・医療などの社会保障、安全保障・危機管理、エネルギーなどの政策分野に投資し、中長期的に国力を上昇させていくことが肝要である。
  対外的には、アジア太平洋地域の安定が望ましい。
  中国が東シナ海とその上空で、強圧的な行動をエスカレートさせている。日本との間に偶発的衝突がいつあってもおかしくない、厳しい情勢が続く。
  日中両国の外交・防衛当局者による対話を重ねつつ、日米同盟の機能を高めることで、軍事的緊張を和らげねばならない。
  今年も「経済」と「中国」が焦点となろう。この内外のテーマに正面から立ち向かわずに、日本が浮上することはない。
アベノミクスに試練
 第2次安倍内閣が発足して1年が経過した。首相は昨年夏の参院選で衆参両院のねじれを解消し、自民党が突出する「1強多弱」体制を作り上げた。
  内閣支持率は一貫して高い。昨年の臨時国会での特定秘密保護法成立の混乱によって低下したが、なお50%台を維持している。
  安倍首相が、政策課題に優先順位をつけ、専ら「経済」に力を注いできたからにほかならない。
 アベノミクスは、3本の矢のうち、大胆な金融緩和と機動的な財政出動の2本の矢によって、日本の景気を持ち直し、株高・円安も実現するなど、一定の成果を上げている。日本の国際社会での存在感が増したことも確かだ。
 だが、日銀がデフレ克服の目標に掲げる「2%の物価上昇率」の実現への道筋は、なお不透明だ。 景気を下支えする財政出動は持続力に限りがある。 世論の支持も、景気回復への期待が先行し、必ずしも生活向上を実感できたからではない。
 今年は、アベノミクスの真価が問われる。 首相の決断によって、4月に消費税率が5%から8%に引き上げられる。
3月までは、耐久消費財などの「駆け込み需要」もあって、景気は回復基調で推移するだろう。 だが、消費が冷え込む「反動減」が予想される4月以降は、景気が腰折れしかねない。
  政府は消費増税の影響を最小限に抑えるため、企業支援や公共事業を柱に国費で5・5兆円規模の経済対策を打ち出した。 2014年度予算案も大きく膨らんだ。
 一方、家計への支援は物足りない。 低所得者へ1回限りの「簡素な給付措置」が盛り込まれたが、食料品や新聞への軽減税率は導入が見送られた。政府・与党は10%への消費増税と同時導入を期して準備を進めてもらいたい。
◆成長戦略は首相主導で
アベノミクスが雇用や賃上げに波及して、民間主導の持続的な経済成長を実現するには、成長戦略という3本目の矢が、的を射なければならない。
 だが、国家戦略特区で行う規制緩和のメニューが各府省や関係団体の抵抗で大幅に後退するなど、戦略の実効性は心もとない。
  首相が指導力を発揮し、民間活力を成長市場へ誘導することで、3本目の矢を加速させたい。
  最近の消費者物価の上昇は、輸入物価や電気料金の値上げが背景にあり、需要増を契機とした「良い物価上昇」とは言えない。業績を上げた企業が賃金を引き上げ、家計の収入増が消費を拡大する好循環を実現せねばならない。
 その成否のカギを握るのが、安価な電力の安定供給である。
  原子力発電所は全50基が停止している。 電力不足を火力発電所のフル稼働で補うため、液化天然ガスなど輸入発電燃料の追加負担は1日100億円に上る。国富が資源国に余計に流出している。
 安全が確認できた原発を着実に再稼働させなければならない。
 気がかりなのは、原子力規制委員会による原発再稼働の審査が遅れていることだ。 地元の了解などの手続きを考慮すれば、再稼働は早くて夏ごろになってしまう。
 エネルギー自給率の低い日本が今後、どう電力を確保していくかは、国家戦略にも直結する。
 安倍政権は1月中に閣議決定するエネルギー基本計画で、原発を「重要なベース電源」と位置づける。 民主党政権の無責任な「原発ゼロ」路線と決別し、新増設に含みを残した点は支持したい。
  日本は世界有数の原子力技術を保持している。 安全な次世代型原発の新増設は、人材維持・育成の観点からも必要だ。原発のインフラ輸出を成長にも生かしたい。
政府は、電源として原子力、火力、太陽光発電など再生可能エネルギーをどう組み合わせるか、という議論を加速させるべきだ。
◆偶発的衝突の恐れも
  アジア太平洋地域では、中国が力による現状変更を試み、周辺国との摩擦を強めている。
 中国の習近平政権は、「中国の夢」と称する富国強兵路線を掲げて、西太平洋での艦隊・航空機演習や南シナ海の実効支配強化の動きを活発化させている。 米軍への接近阻止・領域拒否(A2AD)戦略が実を結ぼうとしている。
  日本には、尖閣諸島周辺での公船常駐化と領海侵入無人機の海上飛行を繰り返し、さらには尖閣を含む東シナ海上空に一方的に防空識別圏を設定した。
 中国は、識別圏内を飛行する全航空機に飛行計画の提出を求め、従わないなら「防御的緊急措置」の対象だと警告している。 領空のごとく扱うのは極めて問題だ。
 このままでは日本が武力衝突の当事者になりかねない。 自衛隊と中国軍との間に、不測の事態を回避する連絡メカニズムを構築することが急務となる。
安倍首相の靖国神社参拝が、中国側に対話を拒む口実に使われることがあってはならない。
日米同盟の深化によって、中国を牽制けんせいすることも重要だ。
米国は尖閣諸島に対し、日米安保条約の対日防衛義務を定めた条項が適用される、という立場を変えていない。 この条項が確実に機能するよう、米国との間で日本の役割も増強しなければならない。
  安倍政権が今年末に、日米防衛協力の指針(ガイドライン)を見直すのは時宜にかなっている。
  平時から有事へ、危機の拡大に応じた継ぎ目のない日米共同対処ができるよう、自衛隊の米軍支援の拡充、尖閣など離島防衛での米軍の関与拡大を打ち出したい。
集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈の変更に踏み切ることも、避けて通れない。
 政府・自民党は、自衛のための「必要最小限の武力行使」に、集団的自衛権の行使も含める、とする新しい解釈を検討している。安全保障環境の悪化を受けて「必要最小限」の範囲を広げるのは、十分理解できる。
  集団的自衛権とともに、個別自衛権の議論も深めたい。 例えば、偽装漁民による離島占拠という武力攻撃に至らない段階で、自衛隊は、どう対処するのか。 こうした「マイナー自衛権」の武器使用の問題も詰めておく必要がある。
◆地域の安定に寄与せよ
 沖縄県の米軍普天間飛行場移設問題は、進展を見せている。仲井真弘多知事が名護市辺野古の公有水面埋め立てを承認したことで、1996年以来の日米間の懸案が解決に向かいつつある。
辺野古への移設が実現すれば、沖縄の基地負担軽減と、抑止力の向上に大きく貢献するだろう。
  昨年12月に初めて決定された国家安全保障戦略は、中国に、地域の平和と安定、繁栄のために責任ある建設的役割を果たすよう促すとともに、力による現状変更の試みには、冷静かつ毅然きぜんとして対応していく、と記している。
 中国は、少子高齢化が進行し、労働生産人口が減少し始めた。経済成長はどう鈍化していくのか。 米国のアジア重視はいつまで続くのか。  日本の安全保障や経済にどう影響を与えるのか。
  情報を分析し、戦略的な対中政策を練り上げねばならない。
  中長期的には、日本が地域の安全保障に寄与することが肝要だ。米国や東南アジア諸国連合ASEAN)などと連携し、中国に対し、国際社会の一員としての責任を自覚して行動するよう説得し続けることが日本の責務である。(読売・社説)