・日本は品格を持って本格的な宣伝戦を慌てずに展開すべきだ!

・中国は政治体制が違い、防空識別圏の設定など軍事的意思を明確にし、米国にとり警戒の対象であること、韓国は同盟国ながら、朴槿惠大統領らの「告げ口外交」に昨秋以来、辟易(へきえき)としている。
・『武士道』は日本人の道徳性の高さを世界に知らせ、こんな道徳性の高い国民が残虐なこと、卑劣なことをするだろうかと国際社会を思わせ、「日本人=野蛮・残虐」のイメージを払拭するのに貢献した。
・現在のわが国に最も必要なひとつが、歴史問題についての国際社会の誤解を解くことであり、その国家戦略だ。
・事実関係の説明とともに、『武士道』のような高い次元から日本の国民性を説く書物も必要である。冷静に上品に本格的な宣伝戦を展開すべきだ。
・日本は品格を持って本格的な宣伝戦を慌てずに展開すべきだ!




〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
新渡戸に品格ある対外発信学ぶ 
高崎経済大学教授・八木秀次  2014.1.22 03:18 [正論]
中韓の日本孤立化成功せず≫
 安倍晋三首相の靖国神社参拝に米政府は「失望」を表明したが、中国と韓国はこれを利用し、日本が国際社会で孤立しているとの論調を作ろうとしている。しかし、成功したとは言い難いようだ。
 米国の「失望」表明は、東アジアに揉め事が起きてほしくないという余裕のなさの表れで、直ちに中韓の主張に同調したことを意味しない。
 キャンベル前米国務次官補は最近、日本のテレビに対し、「失望」表明の背景を「米国の役割は緊張を和らげ、それぞれが冷静になるように求めていくこと。あのメッセージは日本にのみ向けて出されたものではない。米国政府が日本から距離を置いたり日本を非難したりしていると受け止めないでほしい」と答えている。
  安倍首相を昨年の新年早々の社説で「右翼のナショナリスト」と決めつけた米紙ニューヨーク・タイムズでさえ、参拝直後の社説で中韓首脳が安倍氏との会談を拒否することは逆に安倍氏の望むことを許すことになるとし、歴史問題を含めて安倍氏と向き合い、交渉すべきだと主張している。 また、日本の軍事的冒険は米国の支援があって初めて可能だとし、中韓の言う日本の「軍国主義化」が根拠のないことを示唆してもいる。
 このような姿勢に中韓は苛立ちを募らせている。中国共産党の機関紙、人民日報は「日本が勝手なことをしている背景には、米国が黙認し、大目に見ていることがある」「米国の主流メディアやエリートは立ち上がり、安倍氏がいかに悪いことばかりしているかを米国の民衆にはっきり理解させ、強大な世論を作り上げ、米国政府の政策決定に影響を与えるべきだ」とする研究者の主張を掲載している(1月12日付の日本語版)。
 韓国紙、朝鮮日報の9日付社説も、ケリー米国務長官が、7日にワシントンで韓国の尹炳世外相と会談した直後の記者会見で、日本の問題を一切語らなかったとし、「日本の暴走にブレーキをかけられる国は米国しかない。今の日本の脱線は米国が責任を果たしていないことをも意味する」と述べている(日本語版)。
≪「民間人虐殺」の汚名で苦労≫
 米国側がメディアを含めて冷静に対応しているのは、中国は政治体制が違い、防空識別圏の設定など軍事的意思を明確にし、米国にとり警戒の対象であること、韓国は同盟国ながら、朴槿惠大統領らの「告げ口外交」に昨秋以来、辟易(へきえき)としているからでもある。
 しかしむろん、これらは米国が歴史問題でわが国に同調していることを示すものではない。 慰安婦問題に関する韓国側の米政府、議会への攻勢は激化しており、「慰安婦=性奴隷」という誤解は定着している。
 日清戦争の最中の明治27(1894)年11月に、旅順で日本軍が中国民間人を大量虐殺したという報道が米国の新聞に出たことがある。
 情報の出所は、清(中国)側で、事実は平服を着た兵士(便衣兵)を処断しただけだったにもかかわらず「日本人=野蛮・残虐」というイメージが広がり、日本政府は苦しめられた。
 調印したばかりの通商航海条約の批准も困難になった、と米国務長官から示唆されるほどだった。 しかし、当時の日本政府は適切に対応した。 事実関係を英紙タイムズ上で反論し、陸奥宗光外相も日本軍は軍規を順守していた旨の声明を発表して事態の沈静化に努めた。 その結果、民間人虐殺という報道は根拠のないものとして理解された(川上和久著『「反日プロパガンダ」の読み解き方』PHP研究所参照)。
 しかし、一度貼られた「日本人=野蛮・残虐」とのレッテルを剥がすのは容易ではなかった。  その後、北清事変に出兵した際、日本軍は徹底して軍規を守り、国際社会から評価された。
≪『武士道』の役割小さからず≫
 新渡戸稲造が『武士道』を英文で刊行したのは、明治33(1900)年だが、彼は執筆動機について上記のことには何も触れていない。
 ベルギーの法学者ラブレーから「日本には宗教教育がないのにどうやって道徳教育をするのか」と問われて即答できず、その答えとして武士道という崇高な精神があると説明したのが、この本だと言っているだけである。
 しかし、新渡戸の脳裏には日清戦争時に作られた日本人の悪いイメージを変えようとの発想があったのではないか、と筆者は推測する。事実、『武士道』は日本人の道徳性の高さを世界に知らせ、こんな道徳性の高い国民が残虐なこと、卑劣なことをするだろうかと国際社会を思わせ、「日本人=野蛮・残虐」のイメージを払拭するのに貢献した。

 現在のわが国に最も必要なひとつが、歴史問題についての国際社会の誤解を解くことであり、その国家戦略だ。
 それなくして「日本を取り戻す」ことはあり得ない。
 事実関係の説明とともに、『武士道』のような高い次元から日本の国民性を説く書物も必要である。冷静に上品に本格的な宣伝戦を展開すべきだ。(やぎ ひでつぐ)