手段は① 財政健全化を着実に進めることだ!② 日本の輸出の拡大だ!③ エネルギー政策だ!

・経常収支が黒字である限りは、日本はネットでは海外に対して資産を増やしている。
・経常収支も赤字は、日本全体として海外資流入を受け入れている。 つまり、政府の借金を海外資金に頼る懸念がある。
・日本の赤字財政ファイナンスを外国人投資家に大きく依存せざるを得ないのは、日本経済にとって大きな不安要因だ!
貿易赤字・経常収支赤字の原因は原発事故であることは明らかだ。
原発が再稼働すれば、化石燃料の輸入が減少するので、貿易収支も経常収支も黒字方向に戻るだろう。
・アジアなどの国の経済状況が思わしくないことが、日本の輸出の伸びを押さえている。
・日本の経常収支で赤字が続くのは、旺盛な輸入需要が続くほどに日本の景気がよいということだ!
・日本がとるべき手段は
① 財政健全化を着実に進めることだ!② 日本の輸出の拡大だ!③ エネルギー政策だ!
の3つである。




〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
双子の赤字回避は財政再建から 
東京大学大学院教授・伊藤元重  2014.3.24 03:35 [正論]
 日本の貿易収支や経常収支の赤字が拡大を続けている。  財政赤字と経常収支の双子の赤字になったということで、その影響を深刻に考える人も多い。  財政赤字とは政府が借金を増やすことである。  それは大問題ではあるが、経常収支が黒字である限りは、日本はネットでは海外に対して資産を増やしている。  財政赤字ファイナンスは国内で十分に回っている。
国債外資依存は不安要因≫
 しかし、経常収支も赤字になったということは、日本全体としても海外からの資金流入を受け入れているということになる。  つまり、政府の借金を海外からの資金に頼るようになるのではないか。そうした懸念があるのだ。
 政府の借金であれば、日本の投資家が持とうが、海外の投資家が持とうが大きな違いはない。 財政運営に不安があれば、国内の投資家だって日本国債を売りに出るだろう。  ただそうはいっても、日本の赤字財政のファイナンスを外国人投資家に大きく依存せざるを得ないということは、日本経済にとって大きな不安要因である。
 重要なことは、一刻も早く日本の財政赤字を削減していくことだ。 すでに積み上がった公的債務はすぐに減らすことはできないが、少なくとも新たな財政赤字による借金の規模をできるだけ早く縮小していかなくてはいけない。 双子の赤字の問題は、経常収支赤字ではなく、財政赤字にあるのだ。 
 安倍内閣は2015年までに基礎的財政収支の赤字を10年比で半減することを目標としている。  20年までには、これを黒字にすることを目標としている。当面はこの目標を着実に実現することが重要となる。
 さて、突然降ってわいた貿易赤字・経常収支赤字であるが、その原因はどこにあるのだろうか。
 そして今後の動きはどうなるのだろうか。
 原因が原発事故であることは明らかだ。
 原発停止でエネルギー輸入が増えたことが、日本の貿易収支の赤字をもたらした。
 問題は、この状態が今後も続くのかどうかということだ。
 原発が再稼働すれば、化石燃料の輸入が減少するので、貿易収支も経常収支も黒字方向に戻るだろう。
≪景気回復で輸入増えた皮肉≫
 では、原発再稼働が進まなかった場合はどうなるだろうか。それでも、日本は化石燃料の輸入を増やし続けて貿易収支は赤字のままでいるのか。それとも経済に何らかの調整が起きて、貿易収支や経常収支の赤字幅は縮小していくのか。 このあたりの読みは難しい。
 今の日本の貿易赤字の背景には、化石燃料の輸入コストが拡大しているにもかかわらず、他の財に対する輸入も旺盛であり、輸出が伸び悩んでいるという事実がある。
 化石燃料の輸入コストが上昇しているのに、そのコスト増の一部は電力料金に転嫁されていない。 つまり電力会社が赤字で支えている。
 もし、輸入コスト増がすべて電力料金に転嫁されれば、経済に深刻な影響を及ぼし、それが他の輸入を引き下げる結果になるかもしれない。そうすれば輸入は減るはずだ。
 アベノミクスの影響で景気がよくなっていることも輸入の増加に貢献している。 それに加えて、アジアなどの国の経済状況が思わしくないことが、日本の輸出の伸びを押さえている。
 皮肉なことに、日本の景気が回復していることが化石燃料の輸入拡大と相まって、日本の貿易収支や経常収支の赤字をもたらしている。
 政府の財政赤字がずっと続いていたにもかかわらず、11年の原発事故以前の貿易収支や経常収支が黒字であったのは、それだけ日本の景気が悪かったということでもある。 そうした意味では、日本の経常収支で赤字が続くのは、旺盛な輸入需要が続くほどに日本の景気がよいということでもある。
≪競争力をつけ輸出の拡大を≫
 いつまでも双子の赤字を続けることはできないが、景気が悪化することで輸入が抑制されて、貿易収支が改善するということでも困る。日本にとってとるべき手段は3つある。この3つの組み合わせの中に、日本経済の持続的成長と安定を求めるしかない。
 1つは、すでに述べたように、財政健全化を着実に進めていくことである。財政赤字が解消していけば、双子の赤字の問題は消える。これが最も重要である。
 2つ目は日本の輸出の拡大である。米国をはじめとした先進国の景気回復には期待したい。日本企業の国際競争力を高めるような政策の加速化も必要だろう。法人税率引き下げ、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉をまとめることなど、重要な政策課題が多い。輸出に関連して、海外企業の直接投資を拡大することも重要だ。日本が経常収支赤字を続けていても、その裏側にあるのが日本国債を外国人が購入するのではなく、日本に海外企業が直接投資するのであれば、日本経済の持続的成長と安定に寄与するはずだ。
 そして、最後はエネルギー政策である。原発再稼働に国民がどういう判断をするのか。これも経常収支に大きな影響を及ぼす。(いとう もとしげ)