・ナショナリズムは欧州独自のロジックを加速するかもしれない。

ナショナリズムは欧州独自のロジックを加速するかもしれない。
・米国の知らないところで、将来独露間にクリミア併合を黙認しウクライナを「緩衝国家」とする密約が結ばれる可能性はないだろうか。(宮家邦彦氏)

・ロシアはウクライナの新政権を認めていないが、5月25日に行われるウクライナ大統領選挙にロシアは異議を申し立てていない。この状況を踏まえた上で岸田外相はモスクワにおもむき、ラブロフ露外相と会談すべきだ。
・岸田外相がラブロフ外相に、ウクライナ問題を めぐる国際社会の懸念を伝え、ロシアから、「(クリミアを除き)ウクライナとの国境線を変更しない」という約束を取りつけることが、平和を維持するために死活的に重要だ。
・ロシアは国境線の不変更に同意するとともに何かの条件をつけてくる。
・この条件を分析すれば、ロシアの落としどころについての本音がわか る。








〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜

外相訪露でプーチン氏の本音探れ            
━━━━━━━━━━━━━━━      佐藤 優

 10日付の産経新聞に掲載された宮家邦彦氏(キヤノングローバル戦略 研 究所研究主幹、元外交官)のWorld Watch「欧州情勢は複雑 怪奇?」は、ウクライナ危機がヨーロッパに与えている影響を冷静に分析した優れた論考だ。結論部を引用しておく。
 <それでは過去70年間封印されてきた欧州のナショナリズムはどこへ 行くのか。筆者の独断と偏見をご紹介しよう。
 確実に言えることは伝統的ナショナリズムが復活してもドイツなどでネオナチのような極端な排外主義が再燃する可能性は当面ないことだ。
 一方そこまでは至らないもののEU(欧州連合)のような行き過ぎた国際主義やEU官僚による中央集権的支配を快く思わない国が増える可能性 はある。
 同時に、これらのナショナリズムは欧州独自のロジックを加速するかも しれない。 例えば米国の知らないところで、将来独露間にクリミア併合を黙認しウクライナを「緩衝国家」とする密約が結ばれる可能性はないだろうか。
 19年8月末、平沼騏一郎内閣は「独ソ不可侵条約に依(よ)り、 欧州 の天地は複雑怪奇なる新情勢を生じた」と述べ総辞職した。同じこと が 再び起こらないともかぎらない。日本の政治指導者は欧州情勢について 戦前の間違いを繰り返してはならない>

落としどころは
 ロシアはウクライナの新政権を認めていない。しかし、5月25日に行 われるウクライナ大統領選挙にロシアは異議を申し立てていない。この状況を踏まえた上で岸田外相はモスクワにおもむき、ラブロフ露外相と会談 すべきだと思う。
 そこで、岸田外相がラブロフ外相に、ウクライナ問題を めぐる国際社会 の懸念を伝え、ロシアから、「(クリミアを除き)ウクラ イナとの国境 線を変更しない」という約束を取りつけることが、平和を維 持するため に死活的に重要だ。ロシアは国境線の不変更に同意するととも に何かの 条件をつけてくる。
 この条件を分析すれば、ロシアの落としどこ ろについての本音がわか る。(SANKEI EXPRESS 作家、元 外務省主任分析官)
産経ニュース【佐藤優の地球を斬る】2014.4.14