中国は南シナ海にジャブを放ち、米国の出方を監視している。

・湾岸から71%の石油を輸入していたのに、憲法第9条を盾に、他の国々のようには汗も血も流さず、国際社会の顔色を見ながら資金を小出しに支出し、結局、どこに使われたか不明のまま140億ドル出し、評価はされなかった。
クウェートが戦争後、「米国と地球社会の国々へ」と題する感謝広告を米紙に出し、28カ国の名を挙げた中に日本は入っていなかった。
・日本を置き去りにして国際情勢の舞台はさらに一回転し始めた。ユーラシア大陸の2つの国が、武力を背景に現状を露骨に変更しだした。
・ロシアは軍艦、戦闘機、ミサイルをバックにウクライナからクリミア半島を強奪してしまった。
・中国はそれ以前から、周辺諸国に強大な軍事力をちらつかせつつ進出している。
・「世界の警察官」を辞めたと公言したオバマ米大統領に何ができるか。
オバマ氏はアジア重視のリバランス(再均衡)政策は不変だとアジア4カ国を4月に訪れた。が、行く先々で「われわれの目標は中国に対抗することではない。中国を包囲することでもない」と気遣っていた様子は尋常ではない。
オバマ政権は中国に対し新たな二重路線を取り始めた。
 一つは同盟国、友好国との関係強化、
 一つは米中間で話し合いが進んでいる「新型大国関係」だ。
・同盟国絡みで戦争に巻き込まれるのを回避しつつ、中国との間では保険の意味でも話し合いのパイプを作っておこうとの配慮だ。
・歴史的にみても日米中3国関係が良好だったのは、「共通の敵」ソ連が存在していた一時期だけだった。
オバマ大統領のアジア訪問後に、フィリピンおよびベトナムに改めて挑戦するかのように、中国の海洋進出が顕著になっている。
中国は南シナ海にジャブを放ち、米国の出方を監視している。










〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
回転する世界が集団自衛権迫る 
杏林大学名誉教授・田久保忠衛  2014.5.16 03:34 [正論]
 日本の安全保障の欠陥に気付いている向きは同感だと思う。集団的自衛権の行使に関する議論はすでに出尽くし、「集団的自衛権疲れ」状態になっている。
 政府有識者会議「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇、座長=柳井俊二元駐米大使)が報告書を公表した。
 永田町の雰囲気もあってか、行使への道を切り開きながら、いかに行使しにくくするかの議論にかなりの時間を割いたのではないか。
 この期に及んで、自民党の大幹部が、行使容認の憲法解釈の変更について、「政策の安定性がなくなるのではないか」などと公言している。
 これでは、公明党も譲歩しにくくなろう。安倍晋三首相と安保法制懇には同情する。
湾岸戦争の屈辱への健忘症≫
 国民が国の運命を託す政治家には健忘症にかかっている人が少なくない。 今の日本がどんな状況に置かれているかを知るため、23年前を思い出してほしい。
 クウェートの現状をイラクが武力で変更しようとしたのに対し、当時、「世界の警察官」だった米国が多国籍軍を結成し、あっという間にイラク軍をクウェートからたたき出した。
 西側諸国に一部アラブ諸国が加わった29カ国の「砂漠の嵐」作戦に、日本は参加しなかった。
 湾岸から71%の石油を輸入していたのに、憲法第9条を盾に、他の国々のようには汗も血も流さず、国際社会の顔色を見ながら資金を小出しに支出し、結局、どこに使われたか不明のまま140億ドルで責任を免れた。
 クウェートが戦争後、「米国と地球社会の国々へ」と題する感謝広告を米紙に出し、28カ国の名を挙げた中に日本は入っていなかった。
 屈辱と考えないか。
 護憲派の市民団体と一部野党の衆参両院議員が東京の米大使館に押しかけて、「戦争反対」とがなり立ててしまった。
 憲法9条に合わない現実を否定しようとしたのか、警棒と棍棒(こんぼう)の見分けがつかなくなってしまっている。

≪力で現状変更試みる2大国≫
 日本を置き去りにして国際情勢の舞台はさらに一回転し始めた。ユーラシア大陸の2つの国が、武力を背景に現状を露骨に変更しだしたのである。
 ロシアは軍艦、戦闘機、ミサイルをバックにウクライナからクリミア半島を強奪してしまった。
 中国はそれ以前から、周辺諸国に強大な軍事力をちらつかせつつ進出している。
 インドの戦略家ブラマ・チェラニー氏の表現を借りれば、サラミ・ソーセージを薄く切るように。
 「世界の警察官」を辞めたと公言したオバマ米大統領に何ができるか。 警察官の自覚があった頃の米国なら、北大西洋条約機構NATO)と日米安全保障条約の強化、アジアでは環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を推し進めるだろう。
が、
 ロシアに対しウクライナ憲法国際法の順守を叫んでも効果がないのを知ってから形だけの制裁に踏み切った。
 即効性のなさは当事国も分かっている。
 オバマ氏は同盟、友好国にアジア重視のリバランス(再均衡)政策は不変だから安心してほしいと保証するため、日本などアジア4カ国を4月に訪れた。が、行く先々で「われわれの目標は中国に対抗することではない。中国を包囲することでもない」と気遣っていた様子は尋常ではない。
 つまり、オバマ政権は中国に対し新たな二重路線を取り始めた、と私はみる。一つは同盟国、友好国との関係強化、もう一つは米中間で話し合いが進んでいる「新型大国関係」だ。同盟国絡みで戦争に巻き込まれるのを回避しつつ、中国との間では保険の意味でも話し合いのパイプを作っておこうとの配慮である。
オバマ氏の危険な二重路線≫
 理由は、
(1)米NBCテレビとウォールストリート・ジャーナル紙の最新の世論調査ではっきりしたように、米国民の47%が国際問題への積極的関与に気乗り薄だ
(2)予算削減のしわ寄せが専ら軍事費に集中している
(3)オバマ政権の性格はアフガニスタンイラクに軍隊を展開したブッシュ前政権に対する批判にある
−の3点だろう。

 二重路線はこのうえない危険を伴う。
 米中関係が緊密の度を加えれば加えるほど、同盟関係は弛緩(しかん)し、同盟関係を強めれば強めるほど米中関係は不安定方向に進まないか。 歴史的にみても日米中3国関係が良好だったのは、「共通の敵」ソ連が存在していた一時期だけだった。
 現に、オバマ大統領のアジア訪問後に、フィリピンおよびベトナムに改めて挑戦するかのように、中国の海洋進出が顕著になっている。

 オバマ政権はこれにどう対応するのか、しないのか。
 私は、集団的自衛権の行使容認に当たり、急迫不正の武力攻撃、他に適当な手段がない場合、必要最小限の実力行使という3要件の「必要最小限」に、集団的自衛権が含まれるのかどうか、含まれるとした場合、それに歯止めをどうかけるかの議論は重要だと思う。
 が、日本の生存のため、それがなぜ必要か政治家が論じないのはもってのほかだと考える。(たくぼ ただえ)