・防衛態勢を含めて対応と抑止の能力を強化することでしか、中国の挑発的な行動は防げない!

・米国は中国が将来、米国の脅威になると予測しつつも、現在は中国との軍事衝突に巻き込まれるのを避けようとしており、日米間には脅威認識に若干ずれがある。
・中国はありもしない尖閣問題の棚上げ合意を口実にして、尖閣領海内で無害でない通航を繰り返している。これは明らかに国際法違反だ!
・中国のSU27戦闘機は、自衛隊機を脅かして東シナ海から締め出し、第1列島線内における航空優勢を確保する意図に基づく行動の可能性はある。
・日中間で協議してきた海上連絡メカニズム(航空事案防止のための連絡手段も含まれる)について、日本側が度重なる要請をしているにもかかわらず、中国が応じてこないのも意図的である。
・中国は米国の介入を防ぐため、武力攻撃と見なされない方法で尖閣に接近したり、東シナ海の軍事優位の確保を図ったりしてくる可能性が高い。
・南西方面における航空優勢確保のため、航空防衛力、特に、戦闘機、空中給油機、早期警戒機を増勢する必要がある。
・南西方面では、利用可能な航空基地も増やすべきだし、航空輸送力の不足分も埋めるべきである。 また、領土を保全するための法体系や、敵の着上陸を阻止するための陸上防衛力の態勢も十分とはいえない。
・南西方面の領域を防衛するためには、防衛大綱・中期防に基づく防衛力や防衛費の増加に、最優先で取り組まなければならない。
・防衛態勢を含めて対応と抑止の能力を強化することでしか、中国の挑発的な行動は防げない!








〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
航空優勢」で対中抑止の強化を 
前防衛相、拓殖大学特任教授・森本敏  2014.7.16 03:07 [正論]
 今日、国際社会の主たる不安定要因は、ウクライナ問題や南シナ海東シナ海問題に見られるように、ロシアや中国が周辺地域に勢力拡張を進めて法に基づく秩序を乱していることにある。
 他方、米国の最大の脅威は北朝鮮の核・弾道ミサイル開発であり、安全保障の優先課題は本土防衛だ。
 日本の主要な懸念は北朝鮮だけでなく、中国が軍事力を周辺に押し出して秩序の変更を迫ってくることだ。
 米国は中国が将来、米国の脅威になると予測しつつも、現在は中国との軍事衝突に巻き込まれるのを避けようとしており、日米間には脅威認識に若干ずれがある。
国際法無視のオンパレード≫
 中国は2012年9月以降、尖閣諸島周辺の領海侵入を常態化させ、同年12月には領空侵犯も行った。08年以降、中国海軍は外洋にも進出し、日本が昨年、中国機にかけたスクランブルは、400回をはるかに超えた。中国はありもしない尖閣問題の棚上げ合意を口実にして、尖閣領海内で無害でない通航を繰り返している。これは明らかに国際法違反である。
 中国は13年11月、東シナ海にADIZ(防空識別圏)を、日本のそれと重複する形で設定した。日本領土の尖閣を含むように設けたのみならず、中国のADIZを飛ぶ外国機は事前に飛行計画を中国当局に提出し、その指示に従わなければ防御的な緊急措置を取る、と警告したことも国際法に合致しておらず、日米は抗議した。
 日本が最近、懸念を強めているのはこの5、6月に日本のADIZ内で中国戦闘機が自衛隊機に異常接近してきた背景である。
≪異常接近にEP3事件思う≫
 中国のSU27戦闘機は、自衛隊のプロペラ機に高速で背後から異常接近する危険行動をとった。こうした行動の理由はよく分からないが、自衛隊機を脅かして東シナ海から締め出し、第1列島線内における航空優勢を確保する意図に基づく行動の可能性はある。
 この異常接近は、01年4月に南シナ海の公海上空で、米海軍偵察機EP3に中国戦闘機が急接近し接触した事案を想起させる。
 当時の米中関係は、米軍機による在ユーゴスラビア中国大使館誤爆事件が、なお尾を引いていた。そのせいもあってか、中国海軍J8II戦闘機がEP3機に突っかかっていき接触して洋上に墜落し、パイロットは行方不明となって、後に英雄視されるに至った。
 EP3機は海南島緊急着陸したが、米国は拘束された搭乗員と機体を取り返すため大変な苦労を強いられた。
 米国側が公海上空には航行の自由があると主張したのに対し、中国側は自国の排他的経済水域EEZ)内を飛行する場合は中国の許可が必要だと反論して譲らなかったからである。
 中国は、国際法を恣意的に解釈し、EEZ内での他国の軍事行動や軍事活動を認めない。EP3事案のずっと後の09年3月の米音響測定艦インぺッカブル、そして13年12月の米巡洋艦カウペンスに対する中国艦船の妨害行動、13年の海自艦艇へのレーダー照射、今回のSU27異常接近は、すべてこの理屈から生じているのであろう。
 SU27の異常接近についても、日本側が抗議しているのに中国側に自制の気配がなく、意図的・計画的行動と考えざるを得ない。
 そうであるとするならば、中国側がさらに挑発的、冒険的な行動を試みてくる可能性は排除できない。日中間で協議してきた海上連絡メカニズム(航空事案防止のための連絡手段も含まれる)について、日本側が度重なる要請をしているにもかかわらず、中国が応じてこないのも意図的である。
≪航空機、航空基地を増やせ≫
  日本側は、中国側の意図にかかわらず、国家の主権と領域を守るため毅然(きぜん)とした対応を取り続けるとともに、中国側の挑発に乗らないよう注意する必要がある。
  外交と対話は重要であるが、現実世界はそれですべて解決できるとは限らない。  米国が尖閣に対する日本の施政権を認め、日米安保条約第5条の対象になるとの誓約を鮮明にしている点には、意を強くするとしても、中国は米国の介入を防ぐため、武力攻撃と見なされない方法で尖閣に接近したり、東シナ海の軍事優位の確保を図ったりしてくる可能性が高い。
 日本は日米同盟だけによるのではなく、自国の抑止力強化によって、断固、領域を守る能力と覚悟を持つことが求められる。何よりも、南西方面における航空優勢確保のため、航空防衛力、特に、戦闘機、空中給油機、早期警戒機を増勢する必要がある。
 南西方面では、利用可能な航空基地も増やすべきだし、航空輸送力の不足分も埋めるべきである。また、領土を保全するための法体系や、敵の着上陸を阻止するための陸上防衛力の態勢も十分とはいえない。
 いずれにしても、南西方面の領域を防衛するためには、防衛大綱・中期防に基づく防衛力や防衛費の増加に、最優先で取り組まなければならない。防衛態勢を含めて対応と抑止の能力を強化することでしか、中国の挑発的な行動は防げない、と知るべきである。(もりもと さとし)