・国際社会は中国に欺かれたと言っていい。東シナ海、南シナ海、インド洋に及ぶ周辺地域で領土、領海紛争の火付け役を演じているのは、中国だ!

・国際秩序は、米ソ冷戦体制から米国だけが抜きん出た米一極体制を経て、中国の台頭と米指導力の衰退の時代へと急速に移行している。
・4月にオバマ氏が日本、韓国、マレーシア、フィリピンの4カ国を訪れたのは、軸足(ピボット)をアジアに置いて、力の再均衡(リバランス)を図るという約束の確認が目的であった。
・米国は、中国との間に最悪の事態を回避する「新型大国関係」を構築しておくという路線も継続している。
・国際社会は中国に欺かれたと言っていい。東シナ海南シナ海、インド洋に及ぶ周辺地域で領土、領海紛争の火付け役を演じているのは、中国だ!
「危険な台頭」に一変している。
・北京に媚態(びたい)を示しているのは、反日の一心に凝り固まった韓国の朴槿恵大統領と、大陸との統一を秘めているとしか考えられない台湾の馬英九総統のみだ。







〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
「8・15」に思う 「危険な台頭」が迫る日本の覚悟
2014.8.14 03:08 [正論]  □杏林大学名誉教授・田久保忠衛

 日本人には国家観がなくなったと少なからぬ人々が嘆くが、結局、国民が国際情勢の緊張をどれだけ体感しているかに尽きるのだと思う。
 旧制中学校1年生の昭和20年8月15日に昭和天皇終戦詔書放送を謹聴してから69年を迎える今、日本周辺の国際環境は戦後最大の変化に直面しているにもかかわらず、日本の大勢はそれに対応する速度が遅すぎる。国際秩序は、米ソ冷戦体制から米国だけが抜きん出た米一極体制を経て、中国の台頭と米指導力の衰退の時代へと急速に移行している。
≪米指導力、世界規模で低下≫
 軍事力を背景に現状の変更を迫る中国は日本の安全保障にとって由々しい事態だが、それ以上に心配なのは、最大の同盟国、米国のオバマ政権の指導力が世界的規模で低下してきた事実である。
 オバマ政権は昨年6月に、カリフォルニア州で行われた米中首脳会談以降、アジアに対しては、はっきりと2路線方式をとり始めたように思われる。
 1つは、中国との間に最悪の事態を回避する「新型大国関係」を構築しておくという路線だ。この7月9、10の両日、北京で開かれた戦略・経済対話は、「新型経済対話」をめぐり双方の意見が合わなかった。この言葉の定義は定まっていないうえに、
(1)中国が米大手企業を狙ってサイバー攻撃をかけている
(2)沖縄県尖閣諸島を含む防空識別圏を設定した
(3)オバマ氏のアジア歴訪後にベトナム排他的経済水域EEZ)内に石油掘削装置を入れた
−の3つの問題が介在する。だが、戦略・経済対話は来年もワシントンで開かれ、危機回避のシステムは続く。
 2つ目は、従来通りの日本、韓国、フィリピンなどアジアの同盟諸国あるいは友好国との関係強化である。
 4月にオバマ氏が日本、韓国、マレーシア、フィリピンの4カ国を訪れたのは、軸足(ピボット)をアジアに置いて、力の再均衡(リバランス)を図るという約束の確認が目的であった。
 オバマ政権が2路線を巧妙に操っていく中での日米同盟であることを、われわれは弁(わきま)えておかなければならない。 日本が頼みの綱としてきた同盟国の米国には、軍事力の海外展開に反対する世論と、極度に軍事費を削減しなければならない厳しい財政事情がある。
 内向き志向がいつ復元するのか、しないのか誰にも分からない。

≪国際社会は中国に欺かれた≫
 陰鬱な雲と表現するしかない。 尖閣諸島をめぐる挑発をなおも続け、安倍晋三首相による靖国神社参拝、歴史認識集団的自衛権行使の憲法解釈変更などありとあらゆる問題を外交カードにしてくる中国の執拗(しつよう)さは何事であろうか。
 易経の君子豹変(ひょうへん)とはこれを言うのかと改めて思い知らされる。 2005年にゼーリック米国務副長官がニューヨークの演説で、中国に対してステークホルダー(利害共有者)になってほしいと呼びかけた。利益を受けるだけではなく、責任ある国際国家になってほしいとの要請であろう。
 間髪を入れずに鄭必堅・中国改革開放フォーラム理事長は、中国が「平和的台頭」をすると応じた(米外交誌フォーリン・アフェアーズ9〜10月号)。しかし、国際社会は欺かれたと言っていいだろう。
 東シナ海南シナ海、インド洋に及ぶ周辺地域で領土、領海紛争の火付け役を演じているのは、中国ではないか。「危険な台頭」に一変してしまっている。

≪米国補う日本に「時運」が≫
 欧米のマスメディアは、中国が米欧主導による国際金融システムに挑戦を始めたとしきりに報道している。ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの新興5カ国(BRICS)が、途上国のインフラ整備を支援する目的で上海に本部を置く新開発銀行の設立を決めた。アジア開発銀行とは別に、アジアインフラ投資銀行の創設も中国は提唱している。が、経済が政治に利用されてしまうのではないか、との警戒はBRICSの中にもある。
 指導部は気付いていると思うが、中国は「危険な台頭」の結果、四面楚歌(そか)を招きつつある。
 北京に媚態(びたい)を示しているのは、反日の一心に凝り固まった韓国の朴槿恵大統領と、大陸との統一を秘めているとしか考えられない台湾の馬英九総統ぐらいではないか。
 対照的に安倍首相に異を唱える国はどこか。オーストラリアやインドの新政権は積極的な安倍支持である。  同盟国、米国の足らざるところを日本が補うという国際環境が自然に生まれている。
 「時運ノ趨ク所堪ヘ難キヲ堪ヘ忍ヒ難キヲ忍ヒ以テ万世ノ為ニ太平ヲ開カムト欲ス」との玉音放送は、昨日のことのように耳に残っている。
 陽明学者の安岡正篤氏が書いた「義命ノ存スル所」は「時運ノ趨ク所」に書き改められたという(茶園義男著『密室の終戦詔勅』)。
 是非はともかく、「時運」は日本に巡ってきているのかもしれない。(たくぼ ただえ)