・13年前よりも米国は安全になったと見ていたオバマ政権下で見られた傾向の終わりを意味している。

イスラム国は自分たちがイスラム教過激派の中で最高の地位を獲得したしるしとして利用する可能性がある。
 この優越性はまた、若い戦闘員を集め、またはイスラム世界で資金を集めるのに利用されるかもしれない。
・指導者バグダディは夏にイスラム国の樹立を宣言した際に、イスラム教徒は「テロリズムの意味を世界に聞かせて理解させる理由、またナショナリズムの偶像を踏みにじり、民主主義の偶像を破壊し、その常軌を逸した本性を暴くブーツを持っている」と強調した。
・他の過激グループがその力が健在であることを示すために、新たなテロを起こす可能性があると懸念している。
・米国を攻撃する恐れのある他の過激派は、アラビア半島のアルカイダ(AQAP)、パキスタンラシュカレトイバ、それにパキスタンタリバンの三つだと指摘した。
・13年前よりも米国は安全になったと見ていたオバマ政権下で見られた傾向の終わりを意味している。














〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
イスラム国との戦い、3つの隠れた不安    
古澤襄  2014.09.16

イスラム国と戦おうとする米国の熱気が冷めてしまう可能性
 イスラムスンニ派過激武装勢力イスラム国」に攻勢をかけるとのオバマ米大統領の決定をめぐっては懸念すべき多くの潜在的問題があり、その大半はここ数日間に十二分に注目されている。 しかし、あまり目立たない3つのダウンサイド・リスクもあり、これは若干の検討に値する。

 ひとつは、もしこの戦いがイスラム国の望むものだったらどうかということだ。 理論的には、兵力が約2万で、自ら国家樹立を宣言したこのようなグループは、世界最大の力を持つ国との紛争を回避しようとするはずだ。
 しかし、このようなグループに関しては理屈がいつも通用するとは限らない。 イスラム国の指導者らは実際に対立を望んでおり、それは長期的には自分たちに良い影響を与えると考えている可能性は十分にある。
  世界最強の国に名指しされることは、思想的過激派の中では、名誉なことと思われるのかもしれない。
  今回のケースでは、イスラム国は自分たちがイスラム教過激派の中で最高の地位を獲得したしるしとして利用する可能性がある。
 この優越性はまた、若い戦闘員を集め、またはイスラム世界で資金を集めるのに利用されるかもしれない。
 イスラム国はこの戦争を望んでいるとの見方は、2人の米国人ジャーナリストと1人の英国人支援者の首を切断して処刑するおぞましいビデオを公開したことによっても強まった。
 イスラム国の指導者らは多分、この恐怖が米国民を震え上がらせて逃げ腰にさせるとと考えたのだろう。  しかし彼らは、これが米国世論をして政府に対応を迫らせる可能性のあることも知っていたはずだ。
 イスラム国の印刷物などは、西側との対立は不可避だと彼らが考えていることを示唆している。  同グループの指導者バグダディ容疑者は夏にイスラム国の樹立を宣言した際に、イスラム教徒は「テロリズムの意味を世界に聞かせて理解させる理由、またナショナリズムの偶像を踏みにじり、民主主義の偶像を破壊し、その常軌を逸した本性を暴くブーツを持っている」と強調した。
 さらに、イスラム国の印刷物は、他のイスラム過激派が西側との戦いから後退しようとしていると批判している。

 二つ目は、イスラム国だけに目を奪われると、他のグループからの攻撃にされされるリスクが高まるかもしれないことだ。
 米当局者は、イスラム国の台頭で自分たちの威勢が失われたと感じている過激グループがその力が健在であることを示すために、新たなテロを起こす可能性があると懸念している。  一部の国がテロ警戒レベルを引き上げたのはこのためだ。
  特に国際テロ組織アルカイダは今こそ攻撃の時と思っているかもしれない。 イスラム国はアルカイダの下部組織としてイラクに生まれたが、その後袂を分かち、今ではイスラムの範囲拡大へのアプローチをめぐって批判しあっている。
 ウィルソン・センターの研究員マイケル・クーゲルマン氏はウォール・ストリート・ジャーナル紙のシンクタンクのブログへの寄稿で、米国を攻撃する恐れのある他の過激派がアラビア半島のアルカイダ(AQAP)、パキスタンラシュカレトイバ、それにパキスタンタリバンの三つだと指摘した。

 三点目は、イスラム国と戦おうとする米国の熱気が冷めてしまう可能性があることだ。 現在のところ、ジャーナリストの処刑のビデオで憤っている世論は行動を求めている。   先週行われたウォール・ストリート・ジャーナル紙とNBC放送との共同世論調査では、ほぼ3分の2の人は、イスラム国への攻撃は米国の利益になると見ている。
  同調査ではまた、テロ攻撃の脅威が再び強まっていることをうかがわせた。  9.11同時多発テロ以前よりも安全でなくなっていると答えた人は47%に上り、1年前の28%を大幅に上回った。  安全度が増したと答えたのは26%にすぎなかった。  
 これは、米国人がこの国は13年前よりも安全になったと見ていたオバマ政権下で見られた傾向の終わりを意味している。

 しかしこの恐怖は時とともに弱まるのだろうか。 米国人は、アナリストと同じようにオバマ大統領が勝利まで時間がかかると言っている戦争に固執する決意なのだろうか。
  世論は最近まで中東での新たな介入に明確に反対していた。
 米国はこうした戦いに関与しようとしているが、今後世論の浮き沈みがあり、悪い日々もやって来るだろう。
 今の断固とした決断がその時も続いているとの確信は得られないない。(米ウォール・ストリート・ジャーナル)