・円安により国内回帰の企業もようやく目立ちはじめ、経済の本格回復が望めるのが2015年後半の展望である。

・ 「黒田バズーカは『大歓迎』であり、じつはもっと大胆にやれ」
「いまは空母から発艦するジェット戦闘機がブレーキをかけている状態」
「デフレ脱出には『脱出速度』が必要なのだ」と力説。
・「確かに量的、質的金融緩和の効果はでている。しかし需要が弱く、構造改革をすぐにでも実行しない限り難しい」
・大企業の国内回帰が目立ちはじめた。大工場が日本にもどってきた。
・消費税と原油高騰のため消費が伸びない上、エネルギー代金が値上げとなって実質賃金が下がったからだ。
・タクシーと居酒屋の不況を観察すれば分かる。日本経済はあやうく頓挫しかけていた。
・問題は非生産部門に予算の多くが振り向けられ、拡大再生産に繋がらないこと。
・ともかく原油安により電力代金が下落するうえに原発の再稼働が見込まれるから不安材料は多層に減少する。
・円安により国内回帰の企業もようやく目立ちはじめ、経済の本格回復が望めるのが2015年後半の展望である。












〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
クルーグマン教授の御託宣は「アベノミクスは半分うまく行っている」    宮崎正弘    2015.01.04
■しかし「女性進出」と「構造改革」がカギというのはいただけませんが
 日本という巨大市場はアメリカ人学者にとってまだまだ稼ぎになるらしい。
  日本を褒めそやしたエズラ・ヴォーゲルも『ジャパン・アズ・ナンバーワン』でしこたま稼ぎだしてから、日本がバブル崩壊におそわれ、以後、「失われた二十年」になるや、突如中国派に転向した(トウ小平をほめあげて、中国から賞賛された)。
 フランス人経済学者トマ・ピケティという新人論客が、このところ大流行だが、左翼エリートの机上の空論に近い。 
 人口学者のニアル・ファーガソンのほうがまだ面白いというのが筆者の意見だが、さて。
 ノーベル経済学賞クルーグマン、昨年11月に日本に講演に来たおり、安倍首相とも会談し、アベノミクスはこうするとうまくいくなどと『講義』をしたらしい。そのことを彼自身が自慢げに書いている。
 カギは「円安」はともかくとして、「女性進出」と「構造改革」であるというが、日本のことをよく知らないで流行の議論を追っているだけという印象だ。
  14年10月31日付けのニューヨークタイムズに寄稿したクルーグマンは「日本に謝ります」と題をつけた(APOLOGIZING JAPAN)。
 そのなかで、氏は『流動性の罠』を説明し、従来日本に対して声高に金融緩和をぶったものだったが、「われわれには日本を痛烈に批判する資格なぞなかった」と気味悪いほどに反省気味であり、謝罪したいと比喩した。
 クルーグマンは消費税導入の延期を評価し、これでアベノミクスが成功すれば、世界のモデルになりうるだろうとして次のように続けた。
「黒田バズーカは『大歓迎』であり、じつはもっと大胆にやれ」
でなければ「いまは空母から発艦するジェット戦闘機がブレーキをかけている状態」であり、それじゃ墜落してしまう。
「デフレ脱出には『脱出速度』が必要なのだ」と力説するのである。
「黒田バズーカ」程度では脱出速度ではないというわけだ。
  黒田日銀総裁インフレ目標を2%と言っているが、もし2%を実質的に達成するとすれば目標は4%にするべきで、これは「臆病の罠」(『流動性の罠』に対比させての比喩)である、とクルーグマンの応援歌も幾分変形を帯びてきた。
 そしてクルーグマン教祖はこうつづける。
 「確かに量的、質的金融緩和の効果はでている。しかし需要が弱く、構造改革をすぐにでも実行しない限り難しい」

アベノミクスが軌道にのるか、どうかは「円安」、「原油安」というダブルチャンスを活かすことにある
 構造改革というのはアメリカの要求する改革、規制緩和に応じろという意味であり、黒田は国債の無制限買い上げばかりか、円安の防衛にも積極的であるように見える。
 だが、円安の効果は一年か一年半先でないと現れず、上半期に企業業績があがっても株価は精々が二万二〇〇〇円であろう。
 事実、日本経済新聞の財界、エコノミスト等数十人の予測アンケートをみても、最高予測額は22000円であり、いま現場の声を、日本経済の再生にまだ時間が必要と考えていることが分かる(同紙、2015年1月3日)。
とはいうものの大企業の国内回帰が目立ちはじめた。
安倍首相は『週刊文春』の新年号で櫻井よしこ氏と対談しているが、東芝を例に挙げて、大工場が日本にもどってきたことを力説しているほどである。
 しかし昨年十月頃からアベノミクスの腰折れが明確になった。
  日本経済はアベノミクスの下、順調に回復する筈だったのにGDP速報は意外にもマイナスを示した。
2014年第四四半期がマイナス1%前後というのは意外な結果である。 巷間の不況、賃金の値下がりと株価高騰という矛盾が同時におこるというアベノミクスパラドックス現象が起きていたのだ。
 これは消費税と原油高騰のため消費が伸びない上、エネルギー代金が値上げとなって実質賃金が下がったからだ。
 それはタクシーと居酒屋の不況を観察すれば分かる。日本経済はあやうく頓挫しかけていたのである。
 この回避策として日銀の「黒田バズーカ」は一時的効果をあげたが、殆どがファンド筋に吸い上げられ円キャリとなって消えたため毀誉褒貶が大きい。
 ところが昨年後半から円安と原油下落というダブルの幸運に恵まれ、輸出競争力の回復は企業業績を高めるから正規雇用が増えるだろう。
 問題は非生産部門に予算の多くが振り向けられ、拡大再生産に繋がらないこと。
 福祉厚生方面が防衛費より多いという奇観をいかに是正するかである。

 ともかく原油安により電力代金が下落するうえに原発の再稼働が見込まれるから不安材料は多層に減少する。
 円安により国内回帰の企業もようやく目立ちはじめ、経済の本格回復が望めるのが2015年後半の展望である。