・ISISをこれほどの化け物に育てたのはサウジアラビアからの資金援助、ついでカタールだった。

・ISISはSNSをふんだんに駆使して、米国を狼狽させた。
・マリキ政権は、米国に従うと見せかけながら旧バース党の勢力を根こそぎパージし、スンニ派住民を虐待した。
・新政府軍の高官等は腐敗していた。武器の横流しピンハネ縁故採用・・・
イラク政府軍は軍事訓練も十分になされていないから、米国が供与した大量の近代兵器を置き去りしてバグダットへ逃げ帰った。
ISISはタダ同然で無数の近代兵器を獲得したのだ。
・アフガンの生き残りゲリラは月給600ドルを提示されて、ISISの傭兵となった。
・ISISが牙をむきかねないという脅威を前にして中国はいかなる対応をとるのか。
・ISISをこれほどの化け物に育てたのはサウジアラビアからの資金援助、ついでカタールだった。







〜〜〜関連情報(参考)〜〜〜
モンスター・テロリスト=ISISの脅威は何時まで   
宮崎正広  2015.06.23
■米国はやる気なし、サウジ、カタールは「こんな筈ではなかった」
ISISは迅速な軍事行動を展開し、いまや「モンスター・テロリスト」となった。
意表をつく作戦の数々は、最初はイラク政府とアサド政権を支援するイランの隙をついたものであったとはいえ、アルカィーダが二十年かけても達成できなかった目標に近づき、しかもアルカィーダのように洞窟や秘密の基地に隠れることなく、そのうえ、現代の宣伝戦争の武器であるSNSをふんだんに駆使して、米国を狼狽させた。
ISISは、サウジとイランの代理戦争の過程でうまれてきた化け物であり、暴力闘争が短期で収束する近未来は描きにくくなった。
胴元であったサウジさえ、いまではISISを脅威視するようになっている。カタールはなおさらだろう。
 そして世界のマスコミの焦点からすっかり忘れられたシリアのアサド政権はほくそ笑んでいる。
 しかし基本的誤算は米国である。
 サダム打倒後、マリキ首相を傀儡としてイラクを統治できると思い上がったことは信じられない誤断だった。
  往時の米国の論調は日本のGHQ統治と比較して、簡単にイラクは落ち着くだろうという予測が主流だった。
  新イラクは首相がシーア派から、副首相はスンニ派、そして飾りの大統領がクルド族という人工的組み合わせだったが、サダム独裁体制を倒して、イラン側のイラク東部をまたたくまに影響下においたイランは、あろうことかマリキ政権に肩入れし、スンニ派イラク西部に閉じこめ、クルドを西北部の山岳地帯へ追いやった。
 イスラム法が厳格に適用され、タバコを飲んでも石打ち刑、同性愛は死刑。公開処刑は日常茶飯となった。マリキ政権は、米国に従うと見せかけながら旧バース党の勢力を根こそぎパージし、スンニ派住民を虐待した。
  軍人、公務員ばかりか教師も医者もことごとく追放され、イラクの新政府軍は未熟な軍人の烏合の衆となっていた。そのうえ、新政府軍の高官等は腐敗していた。武器の横流しピンハネ縁故採用・・・
  マリキ政権に恨み骨髄に達したスンニ派、とりわけバース党残党とサダムの旧軍人等がISISにたちまち合流したのは自然の流れであり、そのうえイラク政府軍は軍事訓練も十分になされていないから、米国が供与した大量の近代兵器を置き去りしてバグダットへ逃げ帰った。
ISISはタダ同然で無数の近代兵器を獲得したのだ。
突如デビューするや豊富な軍資金でライバルの派閥を潰す。ザルカワイ率いた「イラクのアルカィーダ」はISISに吸収・合併され、「ヌスラ戦線」はISISの暴力に打ちのめされ、あるいは少数派閥の武装ゲリラ集団は、カネと武器を供与され、ISIS傘下に組み込まれた。軍事組織のトップは戦争のプロ=チェチェン人のアブ・オマル・シシャニである。

▲刑務所から囚人を解放し戦力に、女性は手当たり次第レィプ
アフガンの生き残りゲリラは月給600ドルを提示されて、ISISの傭兵となった。
ISISは兵士を補う目的もあって、刑務所を次々と襲撃し、凶悪な囚人等を数百、数千人単位で解放し、スンニ派とわかると強引に兵隊の列にくわえ、シーア派は処刑した。戦力はまたたくまに繁殖したが、それを支える資金力がISISにはあった。
ISISは女性多数を拉致誘拐して、「結婚」と詐称してのレイプを繰り返し、そのうえ、妊娠して掻爬手術不可能の段階になってから、帰国させるという民族浄化のやり方をとった。
 また住民を片っ端から誘拐し、法外な身代金をとった。外国人人質はセクト間で売り買いし、最後の代理人が交渉にあたるころ、500万ドルとか、2000万ドルの相場となった。凄まじい収入になるうえ、石油に密売と武器売買、産油国からのみかじめ料の収入、くわえて占領地域の住民からは平均20ドルの税金を徴収した。
 ISISをこれほどの化け物に育てたのはサウジアラビアからの資金援助、ついでカタールだった。
 たとえばカタールはアサド体制の打倒に繋がるとしてリビアの過激派に肩入れしたが、かれらもまたISISに吸収されていったのである。
  こうして現代のモンスター・テロリスト集団が中東の一角を支配し、欧米の思惑を遠く外れて、中東政治の台風の目となった。
 シリアを支えるロシア、シリア反体制をささえてきたイランは今後、どうでるのか。
 そして何時の日か、ISISが牙をむきかねないという脅威を前にして中国はいかなる対応をとるのか。
 グレード・ゲームはここでも大きく変わった。