・選手の育成、コーチのために、予算をつかえ!「巨大ヘルメット」に無駄使いするな!

・2520億円の無駄使いの象徴のような新国立競技場は世界の物笑いになる
・過去のオリンピック・スタジアムの中で最も高いと言われたロンドン・オリンピックのメインスタジアムの総工費が約650億円だ!
東日本大震災の復興で増税の日本で、「巨大ヘルメット」作りの無駄使いは許されない!
・補助競技場のないスタジアムでは世界陸上のような大規模陸上大会は開催できない。
・今は陸上競技フットボールはそれぞれ専用スタジアムを建設するのがスポーツ先進国の常識なのだ!
・選手の育成、コーチのために、予算をつかえ!「巨大ヘルメット」に無駄使いするな!








〜〜〜関連情報(参考)〜〜〜
2520億円の支出を決めた政府……
後藤健生コラム  2015年06月30日17:30

 無駄使いの象徴のような新国立競技場は世界の物笑いになる
 下村文部科学大臣が、国立競技場の改築費を2520億円とする方針を示したという。
 先に舛添東京都知事が国に対して費用の根拠などの資料公開を要求したことで「何らかの設計の見直しがなされるかも……」と期待されたが、国は当初の方針を覆すことなく、建設資材の高騰などを受けて当初予算(2013年の試算)を900億円も上回る2520億円の支出を決定したのだ。
 差額が「900億円」というのだから、まさにとんでもない数字である。
 過去のオリンピック・スタジアムの中で最も高いと言われたロンドン・オリンピックのメインスタジアムの総工費が約650億円といのだ。差額の900億円だけで、本来ならオリンピックのメインスタジアムクラスのスタジアムが建てられる数字なのだ。
 これを「無駄使い」と呼ばずして、何を無駄というのか。
 東日本大震災の復興や、福島第一原発の処理作業などを考えれば、日本国にどうしてそんな無駄な支出をしている余裕があるというのだろうか。
 では、新国立競技場の建設費はどうしてそれほど高くつくのだろうか? それは、あのザハ・ハディド案という、そもそもデザイン・コンペのルールを無視したトンデモ設計を当選させてしまったことに端を発する。
 さすがに、当初の試算で3000億円もかかると言われた(現在、資産し直せば4000億円を超えていたことだろう)デザインは見直しがなされ、ザハ案のダイナミックなデザインから換骨奪胎。
 「亀の子」とも「自転車のヘルメット」とも言われる窮屈な設計となったものの、開閉式の屋根を付けるための巨大なアーチ(キール)の建設という基本部分は残ってしまったのだ。
 しかも、下村大臣によれば、問題の開閉式の屋根は費用や工期の問題のためにオリンピック終了後に先延ばしするそうである。そして、開閉式の屋根を取り付けるためにさらに300億円ほどがかかるという。
 300億円……。つまり、日産スタジアム・クラスのスタジアムなら2つは作れるだけの金額。1本のキールが1つのスタジアム分だ。しかし、オリンピックという「錦の御旗」が消滅した後で300億円もの支出が正当化される見通しはあるのだろうか?
 もし、300億円が支出されなかったら開閉式屋根は付かないわけで、そうなれば、巨額の資金を投じる巨大なキール構造はまったくの無用の長物となることになる。
まあ、それでも費用がいくらかかっても、それで素晴らしいスタジアムが完成するのであれば、スポーツの仕事に関わっている人間としてはうれしいことである。
 だが、僕のコラムを前から読んでいただいている方はよくお分かりのように、僕にはあの「亀の子スタジアム」がすばらしいスタジアムであるとは、到底思えないのである。
 理由を簡単にまとめてみよう。
・屋根が付いて維持費の高い新国立は使用料も高いので普通の陸上競技大会には使えない
・補助競技場のないスタジアムでは世界陸上のような大規模陸上大会は開催できない
・今後サッカー専用スタジアムも増えるはずで、兼用ではサッカーにも使えない
・専用の秩父宮ラグビー場も改築される予定なので、ラグビーに使われることもない
・巨大な屋根を付けることで日照や通風が妨げられれば天然芝の育成ができない
・計画通りコンサートを年に12回も開いたら芝生はさらに荒れてしまう

 つまり、新スタジアムは陸上競技にもサッカーにもラグビーにも使い勝手が悪いはず。つまり、ほとんど使用されることのないスタジアムになってしまうのだ。それでいて、大きな屋根が付けば(開閉式屋根が付けられても、付けられなくても、スタンドには高さのある屋根が付く)空調が欠かせず、維持費は従来の国立競技場よりずっと割高になってしまう。
 そもそも、「陸上競技フットボールの兼用スタジアム」というのは20世紀には世界のスタジアムの標準設計だったが、21世紀の現在、それはすでに過去の遺物的な発想であり、今は陸上競技フットボールはそれぞれ専用スタジアムを建設するのがスポーツ先進国の常識なのだ。
 歴代のオリンピックのメインスタジアムでも、陸上とフットボール兼用のまま残された1988年ソウル大会の蚕室スタジアムや2008年北京大会のメインスタジアム「鳥の巣」はほぼ無用の長物化している(ソウルは、韓国の3部リーグ、ソウル・ユナイテッドの本拠地)。
 一方で、オリンピック終了後に野球場やフットボール場に改装したスタジアムは、その後も活用された。
 たとえば、1976年のモントリオール大会と1996年のアトランタ大会のスタジアムは、ともに野球場になり、メジャーリーグのエキスポズとブレーブスの本拠地として活用された(ただし、エキスポズはその後解散。ブレーブスは新球場に移転)。
 2000年のシドニー大会のスタジアムはフットボール専用スタジアムとなって活用されているし(1月のアジアカップ決勝の会場)、ロンドン・オリンピックのメインスタジアムは2年後の世界陸上が終われば、プレミアリーグウェストハムの本拠地となる。
 1924年明治神宮外苑競技場が完成して以来、日本のスポーツの長い歴史を育んできた神宮の森に無駄使いの象徴のような、活用されない巨大が建ち、日本国民や東京都民にとっての負の遺産となってしまうことはなんとかストップしてほしいもの。
 政府は「オリンピック招致の時の国際公約だった」というのを、2520億円支出の根拠としているようだが、そんな無駄な支出をすることは逆に世界から物笑いの種になるということが分からないのだろうか。