「すでに南シナ海中では、冷戦時代のような潜水艦の追跡ゲームが始まっている」

・中国本土から1400キロ以上離れた場所に滑走路3本を保有することで、中国のY9情報収集機やKa28対潜ヘリコプターが航続距離を拡大させることが可能になる。
・永暑礁(英語名ファイアリー・クロス礁)に長さ約3キロの滑走路が完成間近
・渚碧礁(同スービ礁)でも長さ3キロの滑走路が建設されている。
・さらに美済礁(同ミスチーフ礁)でも滑走路建設の準備が進められている。
南沙諸島の中心にトライアングルのような形ができる。
・「中国は2015年中に(潜水艦による)初の核抑止パトロールを行うだろう」
・米国はかつて旧ソ連の潜水艦に忍び寄ったように、中国の潜水艦も追尾しようとしている。
・「すでに南シナ海中では、冷戦時代のような潜水艦の追跡ゲームが始まっている」と、西側とアジアの海軍当局者は話す。











〜〜〜関連情報(参考)〜〜〜
南シナ海の滑走路建設、中国の対潜防衛力を強化   
古沢襄  2015.09.20
[香港 17日 ロイター]周辺国と領有権を争う南シナ海で、3本目の滑走路を人工島に建設しているとみられる中国──。専門家はこうした動きについて、同国の対潜水艦防衛力が強化され、同海域での米海軍と同盟国の作戦を困難にさせるものだとみている。
南沙諸島(英語名スプラトリー諸島)に建設中の人工島で中国が戦力展開する可能性に大きな注目が集まっているが、専門家は他国の潜水艦を追跡するのに滑走路が使用される恐れがあると指摘する。
中国本土から1400キロ以上離れた場所に滑走路3本を保有することで、中国のY9情報収集機やKa28対潜ヘリコプターが航続距離を拡大させることが可能になるという。
  米国防総省が5月に発表した報告書は、中国沿岸部と深海における同国の対潜水艦戦闘能力は弱いと指摘していた。
  中国本土の安全保障を専門とする嶺南大学(香港)の張泊匯氏は、対潜水艦防衛力の強化が、同国の核抑止戦略の中核をなす晋型原子力潜水艦の活動を守ることにも役立つとし、「中国の原子力潜水艦が有事に活動する際、多大な安全をもたらすことになるだろう」と語った。
  中国の人工島建設については、来週にワシントンで開催される米中首脳会談で協議される重要課題となるだろう。

<滑走路のトライアングル>
  衛星画像からは永暑礁(英語名ファイアリー・クロス礁)に長さ約3キロの滑走路が完成間近であることが確認できる。
シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)が運営するサイト「アジア海洋透明性イニシアチブ(AMTI)」のディレクター、グレッグ・ポリング氏は14日、最近の画像で渚碧礁(同スービ礁)でも長さ3キロの滑走路が建設されているのが確認されたと語った。同氏はまた、先週に撮影された画像からは、さらに美済礁(同ミスチーフ礁)でも滑走路建設の準備が進められているようだと指摘した。
 この3つの岩礁で建設されている人工島を合わせると、フィリピンや、ベトナム、マレーシア、ブルネイ、台湾の5カ国もそれぞれ領有権を主張する南沙諸島の中心にトライアングルのような形ができる。
  南シナ海は潜水艦が活動する環境としては比較的浅いが、インド洋と太平洋に通じる深い水路もいくつか存在する。
  米国防総省の報道官は、滑走路建設が中国の対潜水艦防衛力を向上させることを米国は懸念しているかとの質問に、米国は南シナ海で起きることを監視していると答えた。
 カーター国防長官は16日に米空軍の会議で「国際法の許す限り、空からも海からも活動する」とし、「岩礁を埋め立てて滑走路を建設したからといって、支配権が得られるわけではない」と語った。
  中国本土に拠点を置く軍事アナリストは、中国はY9情報収集機やKa28対潜ヘリコプターに装備するソナーなどの探知機を改良しようとしているほか、探知装置を人工島周辺の海底に設置するつもりだと指摘した。

<核の抑止>
嶺南大学の張氏は以前に、核兵器の「先制不使用」という立場から、中国の核抑止政策にとって弾道ミサイル潜水艦が何よりも重要だと指摘していた。
 つまりこれは、もし中国が有事に「先制不使用」を貫いた場合、同国の地上兵器は先制攻撃を受けやすいことを意味している。
  中国のメディアや海外の軍事ブログは今年、晋型原子力潜水艦海南島を出航し活動する写真を掲載している。 ただ、同潜水艦が核弾頭を装備した弾道ミサイルを搭載しているかは不明だ。
  前述の米国防総省による報告書は「中国は2015年中に(潜水艦による)初の核抑止パトロールを行うだろう」としている。
 こうした核抑止に向けた動きは南シナ海での防空識別圏の設定につながる可能性があると、安全保障の専門家たちは指摘する。
 すでに海中では、冷戦時代のような潜水艦の追跡ゲームが始まっていると、西側とアジアの海軍当局者は話す。
 米国はかつて旧ソ連の潜水艦に忍び寄ったように、中国の潜水艦も追尾しようとしているという。
  日本のディーゼル潜水艦が活動を活発化させる一方、ベトナムが配備を進めるロシア製キロ型潜水艦も、中国にとって頭痛の種となるだろう。
  中国が海中での活動を拡大させていることについて、「われわれは注視しているし、彼らもわれわれを見張っている」と、アジアに拠点を置いていた元海軍当局者は語った。(ロイター)