・間違った政策観(既得観念による構造問題説)が政策当事者を拘束している限り、韓国経済は「失われた20年」に直行する。

・2015年 韓国の経済成長率は、政府の目標成長率である3・1%を下回る2・6%であり、朴槿恵(パク・クネ)政権が発足してからの平均成長率は2・9%と過去の政権の中でも低レベルの成果しか挙げていない。
・韓国の政策当事者や経済学者、エコノミストたち主流派の意見は、韓国経済低迷の主因を「構造的要因」に求めているのが一般的だ。
・「構造改革なくして景気回復なし」と同じ”間違った議論”である。
・一国の経済は、総供給(財やサービスの生産側)と総需要(財やサービスを実際に求める側)とに分けて考えるのが妥当である。
・今の韓国経済の状況は、総需要(消費、投資、政府支出、純輸出)が不足している状況であり、いくら生産側がリストラなどで効率化しても事態は改善しない。
・日本でも90年代から経済成長率の低迷、失業率の高止まり、低インフレからデフレへの長期継続といった現象が観測されてきた。
・消費や投資など総需要不足が原因なのは疑いなかったが、「経済の無駄をなくせ」の大合唱の下、構造改革という政策のミスマッチが続いた。
財務省日本銀行が政策のミスを認めたくなかったこと、そして、両者に事実上の支援を続けた日本の政治家たちに原因がある。

・このミスマッチを解消する方向に政策の舵(かじ)を切ったのが、第2次安倍晋三政権、つまりアベノミクスである。

・なぜ韓国は大胆な金融緩和政策を採用できないのか? 
・大胆な金融緩和を行えば、一挙にウォン安が加速し、ウォン建て資産の魅力は急減する。
・海外の投資家たちは韓国市場から引き揚げ、株価なども大幅に下落していくが、それを政府と中央銀行が恐れている。
・間違った政策観(既得観念による構造問題説)が政策当事者を拘束している限り、韓国経済は「失われた20年」に直行する。










〜〜〜関連情報(参考)〜〜〜
2016.3.27 17:00更新 【iRONNA発】
韓国経済 日本と同じ「失われた20年」がやってくる 
田中秀臣

働く能力が著しく低い社員を企業が解雇できるという政府の方針に抗議し集会を開く労組員ら =1月25日、韓国・ソウル(共同)
 韓国は日本と同じ「失われた20年」に陥るのか。経済の減速が著しい韓国では、地獄のような国を意味する「ヘル朝鮮」という流行語まで生まれ、「日本化」への警戒感が高まっている。
 積極的な金融緩和でデフレ脱却を提唱するリフレ派論客が韓国経済の弱点を分析する。
 先日、韓国の公営放送KBSから取材を受けた。題材は「韓国経済は日本と同じように失われた20年に陥るのだろうか」というものだった。
 私の答えは明瞭で、このままの政策を続ければ「確実にイエス」であった。

 2015年 韓国の経済成長率は、政府の目標成長率である3・1%を下回る2・6%であり、朴槿恵(パク・クネ)政権が発足してからの平均成長率は2・9%と過去の政権の中でも低レベルの成果しか挙げていない。
「日本化」を警戒:
 今、韓国では、「日本化」(1990年代後半からの20年に及ぶ経済停滞)を警戒する論調が盛んになっている。しかも、韓国の政策当事者や経済学者、エコノミストたち主流派の意見は、韓国経済低迷の主因を「構造的要因」に求めているのが一般的だ。
 日本でいうと、小泉純一郎政権発足間もない頃に標語になっていた「構造改革なくして景気回復なし」と同じ議論である。そして、小泉政権のときもそうだったが、韓国経済の低迷もまた、「構造問題説」でとらえるのは端的に間違いである。
 一国の経済は、総供給(財やサービスの生産側)と総需要(財やサービスを実際に求める側)とに分けて考えるのが妥当である。今の韓国経済の状況は、総需要(消費、投資、政府支出、純輸出)が不足している状況であり、いくら生産側がリストラなどで効率化しても事態は改善しない。
 実は、日本でも90年代から経済成長率の低迷、失業率の高止まり、低インフレからデフレへの長期継続といった現象が観測されてきた。
 消費や投資など総需要不足が原因なのは疑いなかったが、「経済の無駄をなくせ」の大合唱の下、構造改革という政策のミスマッチが続いた。このミスマッチを解消する方向に政策の舵(かじ)を切ったのが、第2次安倍晋三政権、つまりアベノミクスである。
 日本はなぜ、「失われた20年」にも及ぶほど正しい経済政策を取りえなかったのだろうか。簡単にいうと、それは財務省日本銀行が政策のミスを認めたくなかったこと、そして、両者に事実上の支援を続けた日本の政治家たちに原因がある。
構造改革は「害」:
 同じことが今の韓国経済にもいえる。問題の本質が総需要不足にあるならば、構造改革は問題解決になり得ないどころか、解決を遅らせるだけで、「害」をもたらす政策思想である(既得観念ともいう)。
 例えば、韓国銀行は度重なる金利低下を採用しているが、事実上の“非”緩和スタンスのため、為替レート市場では一貫してウォン高が進行している。これが韓国の代表的な企業の「国際競争力」を著しく低下させていることは疑いない。
 では、なぜ韓国は大胆な金融緩和政策を採用できないのか。それは、大胆な金融緩和を行えば、一挙にウォン安が加速し、ウォン建て資産の魅力は急減する。こうなると、海外の投資家たちは韓国市場から引き揚げ、株価なども大幅に下落していくが、それを政府と中央銀行が恐れている、というのが日本のいわゆるリフレ派論者の見方だ。
 もちろん、今の事態を放置してしまえば、韓国は長期停滞に埋没していくだろう。それは、日本がかつて体験したように持続的に緩やかに経済がダメになっていくのと同じ状況である。
 日本の論者には、韓国が大胆な金融緩和を行えないのは、日韓スワップ協定などで潤沢なドル資金を韓国に融通する枠組みに欠けているからだ、という指摘もある。
 確かに、その側面はあるかもしれないが、私見では、より深刻なのは、朴政権と韓国銀行に蔓延(まんえん)している間違った政策観(既得観念による構造問題説)である。
 この既得観念が政策当事者を拘束している限り、韓国経済に「失われた20年」の招待状が届く日は目前である。