・中国の悲惨な現実は キャピタルクランチ(資本逼迫)の可能性だ!

・「中国社会が全体として債務過多に陥った」
・企業債務、地方政府債務に加えて「巨額の投資プロジェクトとその後のバブル崩壊にある」
・ゴールドマンサックスは中国工商銀行への出資額全額を引き上げていた。
・「バブルの崩壊により、中国経済の生産・販売現場におけるカネづまりはより本格的になった」
・ 情報の透明性が担保されない市場に国際金融マーケットは成立しない。
・銀行資本が不良債権の大量発生によって毀損し、銀行の融資対応にきわめて後退的な影響を与えているというキャピタルクランチ(資本逼迫)の可能性が無視できない!
・中国の悲惨な現実は キャピタルクランチ(資本逼迫)の可能性だ!








〜〜〜関連情報(参考)〜〜〜
書評「田中直毅『中国大停滞』」   
宮崎正広  2016.04.11

中国経済予測の田中氏も将来に匙を投げたようだ クレジットクランチではなく、キャピタルクランチが実態
田中直毅『中国大停滞』(日本経済新聞社)>
「隠れパンダ・ハガー」の田中直毅氏も随分と中国に厳しい目をむけるようになった。
 評者は「つぎに中国が『失われる二十年』をむかえることになる」と前から予見してきたが、田中氏も「大停滞はながびくだろう」と、時間を切ってはいないがほぼ悲観的である。
 ただし氏は「悲観」とか「絶望」とかの言葉を巧妙に回避しながら、じつは同じことを言っている。
 まず氏が指摘するのは「中国社会が全体として債務過多に陥った」ことだ。
 したがってデレバレッジ(債務削減)が必要。 理由の一端には企業債務、地方政府債務に加えて「巨額の投資プロジェクトとその後のバブル崩壊にある」と分析している。
 はやくから欧米の銀行筋は、中国の行き詰まりを読んでいて、たとえばゴールドマンサックスは中国工商銀行への出資額全額を引き上げていた。
李嘉誠は、その先を読んで中国どころか香港も危なくなるとして不動産、資源投資を欧米にシフトさせ、もはや中国の未来は絶望的だ。
 HSBCも、香港へのカムバックを止めた。
田中氏は慎重な語彙に終始させつつも、「バブルの崩壊により、中国経済の生産・販売現場におけるカネづまりはより本格的になった」と概括し、信用収縮の実態に迫る。
  比喩論として「19世紀末の欧州でおきたことが中国で起きている」とし、『過剰生産能力の積み上がりが企業の経営破綻をまねき、やがて不均衡の累積は信用不安を通じて金融恐慌に到る』(117p)の指摘へといたるとされる。
 そもそも中国の市場は自由主義にもとづくものでもなければ、株式は情報の透明性がない博打場でしかなく、結社の自由、言論の自由、司法の独立などがなければ、欧米日のような資本主義自由市場へ近づくことさえ不可能なのである。
情報の透明性が担保されない市場に国際金融マーケットは成立しない。
 すなわち「一党独裁の仕組みに於いては、結局のところ、結社の自由を欠く、というそもそも論に突き当たる」(中略)、だからロータリークラブのような友好事前の団体さえ、「メンバーが定期に集まり、金も人も情報も動くとなれば、一党支配に反することはないのか、という猜疑心が諸方面に生まれる」。
 そうだ、災害救助にあたってのNPO組織さえ、中国では監視対象、大学に構内に警察署があり、パトカーが常駐している。『大学の自治』とはなんのことか、中国の大学生が理解することは不可能である。
 そして、770万大学新卒の多くに就職先がなくなった。かれらは早熟の「失われた世代」となって大量に中国に出現しているのである。
  昨今、中国では新規融資が難しくなっており「銀行与信が伸びないクレジットクランチ(信用の逼迫)ではなく、銀行の資本が不良債権の大量発生によって毀損し、このことが銀行の融資対応にきわめて後退的な影響を与えているというキャピタルクランチ(資本逼迫)の可能性が無視できない」(313p)としている。
  後半部で田中氏は、習近平を擁正帝にたとえたり、いまは誰も顧みない「京都学派」の中国礼讃のたぐいを用いての幻覚症状が散見されるが、日本の経済論壇のなかで、田中直毅氏さえとうとう中国の悲惨な現実を直言するようになった。
 その微妙な変化を感じ取ることができる。