・「イメージする音で作曲できないだろうか」と冨田勲は言った。

・「イメージする音で作曲できないだろうか」と冨田勲は言った。
・解決したのが、電子音楽機器であるシンセサイザーだった。
・1年半かけて完成させた曲に対して、日本のレコード会社は冷ややかだった。
・注目されるようになったのは、アメリカのヒットチャートの上位に入ってからである。
・NHK「きょうの料理」のテーマ曲は「曲も即席ならば演奏者も即席だった」








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2016.5.10 05:03更新 【産経抄
闇夜にこぎ出す小舟のように 5月10日

 「画家はパレットの上で自分だけの色を調合できる。音楽の場合は、バイオリンなど楽器の固有の音色に縛られる。自分だけがイメージする音で作曲できないだろうか」。冨田勲さんは、代々医師の家に生まれた。慶大文学部では美学美術史を専攻している。回り道して音楽家になったからこそ、生まれた発想だろう。

 ▼長年の宿題を解決してくれたのが、電子音楽機器であるシンセサイザーだった。すでに37歳、売れっ子の作曲家だった冨田さんは早速、アメリカから取り寄せた。値段は、周辺機器を含めるとなんと2000万円もした。

 ▼届いたのはいいが、まず使い方がわからない。何を基準にして、新しい音を作り上げればいいのか、途方にくれた。闇夜にたった一人小舟に乗って、海に出ていく。孤独感にさいなまれ、こんな夢を何度も見たという。

 ▼1年半かけて完成させた曲に対して、日本のレコード会社は冷ややかだった。注目されるようになったのは、アメリカのヒットチャートの上位に入ってからである。音響作家としても世界的に知られた冨田さんが、今月5日、84歳で亡くなった。

 ▼NHKの「きょうの料理」のテーマ曲も、冨田さんの作品である。タッタカタカタカタンタンターン、出だしは、まな板を包丁でたたく音をイメージしたものだ。昭和32年、スタジオ横の通路で作業していた冨田さんに、「明日の放送に間に合わせてほしい」と声がかかった。

 ▼たまたま局内に残っていた、マリンバの演奏者らで編成を決めた。「曲も即席ならば演奏者も即席だった」と、振り返る。現在NHKで放映中のドラマ「トットてれび」は、テレビ草創期の熱気にあふれている。そのなかに、若き日の冨田さんの姿もあった。