中国共産党独裁政権が最も恐れているのは「レジーム・チェンジ:体制転換」だ!

・60年前の2つの謎(朝鮮戦争に参戦した理由、騙され続けた米国の高官)についての鳥居氏の指摘には、かなり納得できる。
参戦理由は
毛沢東は 東北の党と軍を握る幹部の高崗(こうこう)を陥れる狙いでスターリンの要請を断れず、朝鮮戦争に参戦した。
騙した理由は
「レジーム・チェンジ:体制転換」を何よりも恐れ、アメリカの高官2人(リチャード・アーミテージ、クリストファー・ヒル )を騙した。
共産党独裁政権が恐れるのはレジーム・チェンジであることは、合点がいく。
中国のこのような外交の原則は 今後も続くので、日本もしたたかに交渉に臨まないとアメリカのように手玉に取られるので、くれぐれも注意されたし。


〜〜〜メディア報道の一部<参考>〜〜〜

【正論】評論家・鳥居民 「北」を楯に米の攻勢かわす中国
2010.6.25 03:09
 今日、6月25日は朝鮮戦争勃発(ぼっぱつ)60周年にあたる。この歳月を振り返り、二つの謎を取り上げたい。

 謎の一つは、60年前のことになる。中国共産党の大多数の幹部が反対したにもかかわらず、毛沢東ソ連スターリンの求めに従い、朝鮮の戦争に介入した。なぜだったのか。

 もう一つの謎は、この10年のあいだのことだ。中国首脳陣はその経済を支えてきた北朝鮮の手綱を締めることなく、核爆弾をつくるのを放任した。なぜだったのか。

朝鮮戦争に参戦した理由≫
 最初の謎から見よう。

 1950年6月に朝鮮半島の北の金日成が「南朝鮮を解放」しようとした経緯は、金とスターリン毛沢東がそれぞれおこなった二者会談の要約、かれらの部下たちが取り交わした電報が公開されて、かれらがそのときに考え、望んでいたことはおよそわかるようになっている。

 だが、その年の10月、中国軍が鴨緑江を渡り、アメリカ軍と韓国軍に攻撃を仕掛けたことについての説明は、決して十分ではない。毛のスターリンにたいする強い警戒心をだれもが忘れている。

 こういうことだ。ソ連がドイツと戦っている第二次大戦中、毛はスターリンが自分を脅す余裕がないと見て、かれの根拠地の延安でソ連帰り、ソ連寄りの幹部を徹底的に苛(いじ)め、絶対の権力を握った。

 だが、毛はそのままでは済まないと承知していた。大戦後の1947年のはじめ、つぎに1948年の末、モスクワを訪問したいと訴えた。やっと1950年1月に訪問できた。毛はソ連に忠誠を誓ったのだが、スターリンが自分をひどく嫌っていることを改めて知る旅となった。

 そこでその年の夏、毛は北を助けよと説くスターリンの要請に反対できなかった。毛はつぎのように考えたのだ。参戦を拒否したなら、スターリンは結んだばかりの中ソ「相互援助条約」の条文「ただちに全力を挙げて軍事上の援助を与える」を楯にして、ソ連軍を中国東北部に再度、駐留させることになる。そしてただひとり参戦に賛成している東北の党と軍を握る幹部の高崗(こうこう)、つまり毛のソ連入りより前にモスクワに招いた人物に肩入れをして、大きな力を持つようにさせるにちがいない。

 こうして毛はスターリンに軍事介入をさせまいとして、大多数の部下たちの参戦反対の主張を聞こうとせず、朝鮮に出兵したのだ。

 毛沢東が高崗を捕らえ、「独立王国」をつくったと責めたて、自殺に追い込むのは、スターリンの死の直後になる。


≪騙され続けた米国の高官≫
 そこで、この10年のことになる。アメリカ政府は北朝鮮が核爆弾を持つのを中国が阻止すると思った。北の核問題を解決する6カ国協議アメリカの首席代表だったクリストファー・ヒルもそう信じた。かれはブッシュ前政権のもとで東アジア・太平洋担当の国務次官補だったが、中国の言うがままに、北に譲歩を重ね、テロ支援国指定の解除もした。

 東アジア探題と言われたこともある国務副長官のリチャード・アーミテージも中国が必ずや北に圧力をかけると思った。中国の高官から、こちらは北朝鮮を抑えるから、君たちは台湾を抑えてくれと言われれば、早速、台湾の民進党政府を非難し、台湾を香港にしてしまおうと密(ひそ)かに考える政治家を支援し、ライス国務長官ブッシュ大統領までが民進党叩きに協力する有り様だった。その結果、その香港生まれの人物が台湾の総統になりもした。

 アーミテージヒルは中国に見事に騙(だま)された。だが、かれらを含めて、われわれが本当に騙され、気づかなかったのは、中国の党首脳から指導階層までが恐れるのは金正日総書記の核でもなければ、日本が核武装してしまうことでもなく、まったくべつのものだということだ。

≪「体制転換」の芽摘むこと≫
 かれらがなによりも恐れてきたのは、使われなくなって久しい言葉だが、口にはださないだけの「和平演変」、レジーム・チェンジ(体制転換)だ。

 中国を支配しているのは、党中央機関紙「人民日報」の副編集長が指摘し、名付けた「特殊利益集団」である。この「集団」のパワー・エリートたちが恐れるのはアメリカのソフト・パワーだ。

 中国の民主化を説くアメリカ人は当然ながら危険だが、中国と二国枢軸をつくるべきだと熱心に語りかけるアメリカ人はさらに危険だ。アメリカの外交主軸を中国に移すような余裕を与えてはならない。そこで中国の外交の原則は、アメリカをしてつねにごたごたに巻き込ませておくことだ。

 イラクで、アフガニスタンで、さらにパキスタンで絶えず血を流しつづけさせる。イランで、イスラエルで面倒な問題を抱えつづけさせる。毛沢東の嫉妬(しっと)心が生き延びさせることになった北朝鮮も同じ役に立つ。

 核爆弾を持つのも、韓国の哨戒艦の撃沈も、中国の指導階層にとって、不快なことであるはずがない。(とりい たみ)