米軍が日本から撤退すれば大中華帝国の拡大は極めて迅速だろう。あっという間に東京に黄色い★のついた真っ赤な旗が翻るであろう!

・三条 健です。
・50年前の竹山道雄論文には 「米軍がいると戦争が遠のくがいなければ近づく。 1950年の朝鮮のように、米軍が手薄になるとたちまちに事がおこって、真空理論を実証したところもある。」という洞察力の強さがあった。
平川祐弘氏は『私は日本で平和に暮らしてこられたのは「諸国民の公正と信義に信頼し」(憲法前文)たお蔭(かげ)でなく安保のお蔭と思っている。』と確信に満ちて言っている。 歴史が事実を証明していて、異論を差し挟む余地はまったく無い。

天安門事件以後米国に居を移した中国の陳破空は、「米軍が日本から撤退すれば大中華帝国が拡大するだろう」と懸念を表明している。これはパワーバランスの問題で当然の懸念点となろう。
いまの中国の軍事パワーから見れば、米軍が日本から撤退すれば大中華帝国の拡大は極めて迅速だろう。あっという間に東京に黄色い★のついた真っ赤な旗が翻るであろう! 専守防衛のみを泣き叫ぶ日本にとって何と恐ろしいことだろう!



〜〜〜メディア報道の一部<参考>〜〜〜

【正論】比較文化史家、東大名誉教授・平川祐弘 
中華帝国拡大への抑止力が大切 
2010.7.30 03:24

≪50年前の竹山論文の洞察力≫
 少し長いが、次の引用文をお読み頂きたい。

「日本にいる米軍がよそに出動したら、その基地が報復をうけ、これによって日本が戦争に巻きこまれるようになるというのが、いまの心配である。米軍がいると戦争が近づく、いなければ遠のく−、多くの人がこう考えている。しかしあべこべに、米軍がいると戦争が遠のくがいなければ近づく、と考えるのはどうだろう。歴史の事実は後の考えの方が根拠があることを示している。…(1950年の)朝鮮のように、米軍が手薄になるとたちまちに事がおこって、真空理論を実証したところもある」

 「基地があれば、外からうっかり手は出さない。はじめにさぐりを入れて、抵抗がないという自信がつけば軍事侵略をするが、これはいけないとわかれば…立ち消える。全面戦争はあきらかに避けているのだから、米軍基地を攻撃すれば全面的抗争になるし、米軍の基地があることは、ヨーロッパとおなじく極東にとっても、戦争抑制の保障である。これに反して、裸だったら犯される。ひとりぼっちになったら、いいがかりの口実はすぐつくられる。もし万一にも全面戦争にでもなったら、基地があろうとなかろうと巻きこまれることはおなじである。こういう事情が根本から変わったと考えうる根拠は、まだない」

 これは今年書かれた記事ではない。半世紀前の1960(昭和35)年2月14日、新聞の夕刊「思うこと」欄に竹山道雄が『基地と平和』について書いた考察である。吉田茂岸信介など責任ある政治家はそう考えていただろう。だが反体制気分の左翼系論壇や文壇ではそんな竹山は少数意見で、その年の春、大新聞が扇動するものだから、国会の周辺は連日「安保反対!」のデモに学生や労働組合員が連日動員され、世間は騒然とした。

 その昭和35年に私の友人は次々と結婚し、今年めでたく金婚式を迎えている。その一組はたまたま安保阻止国民会議が国会周辺に大きなデモをかけた日に結婚したものだから、披露宴の帰りの地下鉄で私は「デモに参加してきた」と興奮さめやらぬ旧知に会った。私は憮然(ぶぜん)とした。

≪反対運動の学生横目にして≫

 それまで5年間ヨーロッパに留学するうちに、私は過去の日本の軍国主義は良くなかったが、スターリン毛沢東一党独裁体制はさらに非人間的で残酷なものだと警戒するようになっていた。英国が米国と同盟することで専制主義的大国の脅威から自国の安全をはかるように、日本も米国と手をつないで安全と自由を守るべきだと思うにいたったのある。

 周囲の大学院生のように「安保反対!」などと叫ぶ気はまったくない。モスクワ放送や北京放送の喜ぶような騒ぎに加わる人の気が知れなかった。だが学生たちは暴力的なデモを繰り返し、警官隊と衝突し、女子学生が1人死んだ。活動家学生が目をつりあげて「民主主義を守れ!」と叫ぶ。私も「民主主義を守れ」と静かに、多少皮肉っぽく応じる。

 そのテンポを一つずらした語調で、私のいう民主主義が「議論をした後は最終的には国民や国会の多数の意見に従え」という常識的な意味だとすぐ伝わった。当時は自由民主党が国会の過半を制していたのである。6月19日に新安保条約は自然承認されたが、その日にも別の一組が結婚式を挙げた。

憲法でなく「安保」による平和≫

 あの年に大騒ぎの中で改定された日米安保条約も50年たった。しかし日米関係はぎくしゃくし、金婚式を祝賀するムードにない。私は日本で平和に暮らしてこられたのは「諸国民の公正と信義に信頼し」(憲法前文)たお蔭(かげ)でなく安保のお蔭と思っている。

 それで世間がどう考えているのかと藤原書店の『環』41号の「日米安保を問う」特集と、亜紀書店の西原正・土山実男監修『日米同盟再考』を読んだ。前者ではロシアの日本学者モロジャコフが日米安保は「どこまで中国の拡大を抑止するだろうか」といいつつも「少なくともこの同盟は、東北アジアにおけるパワー・バランスを維持している」とロシアの国益から見てこの同盟に反対していない。

 中国の陳破空は天安門事件以後米国に居を移した人だけに、米軍が日本から撤退すれば大中華帝国が拡大するだろうと懸念を表明している。日本の安保反対オタクと言い分がまるで違う。問題は、軍事力を増強したナチス・ドイツオーストリアを併合したように、軍事力を増強しつつある大陸が台湾を併合するか否かだ。

 それを抑止するに足る軍事バランスを維持することが大切だ。軍事的併合に一度成功すれば北京政権内部で武力行使をいとわぬ強硬派が台頭するだろう。鳩山由紀夫前首相が遅まきながら気づいたように、沖縄に米軍基地が存在することは日本だけでなく東アジアの平和のためにも意味がある。われわれは何とかして戦争を避けたく、できるだけその可能性が少なくなるようにしたい。(ひらかわ すけひろ)