北方領土の日本の主権がかつてない危機に瀕(ひん)している今は経済協力のときではない!  

・首相は「日露の経済協力も協議を進めていく」と述べたが、今は経済協力のときではない!  
北方領土の日本の主権がかつてない危機に瀕(ひん)していることを首相は強く自覚すべきである。
・ロシアはフランスとの間で兵員などの大量輸送能力を持つミストラル強襲揚陸艦の共同建造で合意し、北方領土を管轄するロシア太平洋艦隊に配備する方針も示した。
・ロシアは2010年末以降、シュワロフ第一副首相、バサルギン地域発展相、セルジュコフ国防相らを現地入りさせ、「南クリール(北方領土のロシア名)はロシア領だ」と強調している。
とりわけ看過できないのは、日本抜きでも北方領土の経済開発を進める一方、軍備強化にも乗り出したことだ。
・ロシアが北方領土の軍事強化に着手するのは冷戦終結後初めての事態で、地域の軍事的緊張を高めるだけだ。
平和国家・日本に対する大胆かつ異常な挑発行為としか受け取れない。
日本政府は対露武器売却を決めた仏政府と協議中だが、明確な抗議はしていないという。   政府に危機感はあるのか。




〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
北方領土の日 不法占拠の固定化許すな 国民一丸で分断策はね返そう
2011.2.8 03:00
 北方領土問題が急を告げている。日本固有の領土である北方四島の不法占拠を続けるロシアが昨年の大統領に続き、第一副首相や国防相らを次々と北方領土に送り込み、不法支配の固定化を進めるだけでなく、軍事拠点化する動きまで見せているからだ。

 北方領土返還運動を推進する「北方領土の日」の7日、菅直人首相が東京の全国大会に出席し、メドベージェフ・ロシア大統領の国後島訪問を「許し難い暴挙だ」と糾弾したのは当然である。大統領は昨年11月、ロシアの元首として初めて北方領土に上陸した。
 最大の問題は、なぜ日本がそうした暴挙を防げないのか。さらには不法支配の固定化に対し、どう対抗していくかにある。

≪挑発的な軍備強化≫:
 首相は北方領土問題を「極めて重要な課題」とし、11日にロシアでラブロフ外相と会談する前原誠司外相も「日本固有の領土をできるだけ早く返還させるため、政治生命を懸けて努力したい」と訴えた。積極的な姿勢は評価したいが、それを実効ある行動で示す必要がある。事態ははるかに深刻で、対応は急を要するからだ。

 ロシアは昨年末以降、シュワロフ第一副首相、バサルギン地域発展相、セルジュコフ国防相らを現地入りさせ、「南クリール(北方領土のロシア名)はロシア領だ」と強調している。とりわけ看過できないのは、日本抜きでも北方領土の経済開発を進める一方、軍備強化にも乗り出したことだ。

 小型船しか接岸できなかった国後島・古釜布港に新たな岸壁が完成し、貨客船が試験接岸した。地熱発電所や病院に加えて、大型機が離着陸できる空港や道路などインフラ整備も急ピッチで進む。韓国、中国など第三国企業を観光開発などに加える可能性もある。

 メドベージェフ大統領はさらに4日、北方領土周辺に「軍事的に重要な施設がある」と述べ、国後、択捉両島の駐屯部隊の兵器や装備を一新し、増強する意向を表明した。また、ロシアはフランスとの間で兵員などの大量輸送能力を持つミストラル強襲揚陸艦の共同建造で合意し、北方領土を管轄するロシア太平洋艦隊に配備する方針も示した。

 ロシアが北方領土の軍事強化に着手するのは冷戦終結後初めての事態で、地域の軍事的緊張を高めるだけだ。平和国家・日本に対する大胆かつ異常な挑発行為としか受け取れない。日本政府は対露武器売却を決めた仏政府と協議中だが、明確な抗議はしていないという。政府に危機感はあるのか。

 菅政権がまずすべきは、ロシアの行動の不法性を広く国際社会に伝え、問題を「国際化」することでロシアを牽制(けんせい)することだ。国連や主要国首脳会議(G8)、アジア太平洋経済協力会議(APEC)など日本の正当な主張を訴えるべき場は少なくない。

≪国際世論に訴えよ≫:
 日ソ中立条約を破り対日参戦したソ連軍が択捉、国後、歯舞、色丹の北方四島全島を占拠し終えたのは終戦後の1945(昭和20)年9月4日だ。日本人島民1万7千人は強制退去させられ、戦後65年以上にわたり、ソ連とロシアは「領土不拡大」の国際社会の大原則に違反して北方四島を不法占拠し続けている。

 「北方領土の日」は帝政ロシアが四島を日本領と認めて国境を画定し、日露和親条約に調印した1855年2月7日に由来する。にもかかわらず、民主党鳩山由紀夫前首相が「四島を同時に返せというアプローチであれば、未来永劫(えいごう)平行線のままだ」などと返還運動の足並みを乱しているのは無責任で理解し難い。

 前原外相は「政府の考え方では全くない。元首相が政府と異なる考え方を個人的意見であれ、言うのは控えていただきたい」と厳しく批判した。政府・与党、野党を含めて国民が一枚岩で臨まなければ不法支配は打破できない。北方領土の正しい歴史を伝えていく教育も大切だ。日本の政治や世論の分断がロシアの常套(じょうとう)戦術であることを肝に銘じる必要がある。

 日本の了解なく北方領土開発に関係した外国企業に制裁を加えるなど、新たな対抗手段の検討もあり得る。首相は「日露の経済協力も協議を進めていく」と述べたが、今は経済協力のときではない。北方領土の日本の主権がかつてない危機に瀕(ひん)していることを首相は強く自覚すべきである。