3.11大災害が日本の外交や安全保障をどう変えていくのか

全体主義の国は事故をヒタ隠しにするところに特徴がある。チェルノブイリ原発事故では、北欧の人々が放射能の雨が降ったと騒ぎ出したことが発覚のきっかけになった。ソ連は沈黙ののち、世界中にパニックが広がってようやく事故を認めた。
・日本は3・11を境に誰が友で、誰が敵なのかを明確に認識するようになった。いわば大震災が友と敵を仕分けした。米軍は地震発生2日後に、空母戦闘群を被災地沖に派遣し、捜索活動や輸送の「トモダチ作戦」を展開した。各国の救難チームが帰国しても、復旧作業を継続している。
・中国の支援もまた、中東発「ジャスミン革命」から中国人の目をそらす狙いが込められている。この間も、尖閣諸島沖の自衛艦に艦載ヘリを異常接近させていた。食えない人々だ。
・近隣の腹黒い国々は、天災であれ戦災であれ、日本のクライシス・マネジメントの能力を探る。それが有事に直結するからだ。


〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
大震災が日本の友と敵を峻別した?!
古森義久
2011.04.13 Wednesday

 東日本大震災がこんごの日本をどう変えていくのか。経済や社会、あるいは原子力利用などについての予測はいろいろ語られています。しかし意外に少ないのは日本の対外関係の議論です。
 この大災害が日本の外交や安全保障をどう変えていくのか、あるいは変えてはいかないのか。この点について産経新聞の代表的なコラム記者、湯浅博氏がおもしろい一文を書いています。

                                                                                                                          • -

■【湯浅博の世界読解】「3.11」が仕分けした友と敵

                                                                                                                        • -

 東日本大震災では福島第1原発大自然の巨大パワーに翻弄され続けている。3年前の中国・四川大地震のときも、人間の営みがいかにはかないものであるかを痛感した。中国が策した北京五輪国威発揚も狡猾(こうかつ)な対日戦略の積み上げも大地の一撃であっけなく崩れてしまった。
 こちら福島第1原発は民生用の発電だが、あちら四川では、暗号名「プラント821」が一部破壊されたとの疑いがもたれた。暗号名があるのは、かの地に中国の核弾頭製造に関する複合施設があるからだ。
 中国が詳しく語るはずもないが、米国はスパイ衛星で被害状況を探っていた。仮にもチェルノブイリ原発事故のような爆発なら、地震災害が放射能汚染という二次災害を引き起こす。
 チェルノブイリ原発事故では、北欧の人々が放射能の雨が降ったと騒ぎ出したことが発覚のきっかけになった。ソ連は沈黙ののち、世界中にパニックが広がってようやく事故を認めた。かくのごとしで、全体主義の国は事故をヒタ隠しにするところに特徴がある。
 東日本大震災の発生当初、米国メディアは菅直人内閣の情報伝達のお粗末さを攻撃した。すぐに、それが情報の戦略的秘匿ではなく、単なる無能さにあると気づいたらしい。情報の出し惜しみにあきれたが、やがて無視する。
 それでも、米軍は地震発生2日後に、空母戦闘群を被災地沖に派遣し、捜索活動や輸送の「トモダチ作戦」を展開した。各国の救難チームが帰国しても、復旧作業を継続している。
 米国が9・11を境に変わったように、日本は3・11を境に誰が友で、誰が敵なのかを明確に認識するようになった。いわば大震災が友と敵を仕分けした。
 ロシア軍は情報収集機をたびたび飛ばし、日本領空に接近する。そのたびに、航空自衛隊の戦闘機が緊急発進することになる。ロシアは放射能測定などととぼけるが、チェルノブイリ事故に頬かぶりする国にそれをいう資格はない。だが、松本剛明外相はロシアからの救援チーム派遣があり、「支援の気持ちを信じる」と抗議をしない。すると、ロシアは「続行する」と図に乗ってきた。
 甘い国とあくどい国の妙な取り合わせである。

 揚げ句に、ロシア国営ラジオ「ロシアの声」は盛んに、福島第1原発は人災であると宣伝している。ロシアが5分で決定できることを、日本はムダに時間を浪費したと批判する。
 ロシア原発は安全で、「日本の原発事故は管理体制によって生じた人災だ」と宣伝する。日本の原発が尻すぼみになればロシア製に商機ありとみたか。

 中国の支援もまた、中東発「ジャスミン革命」から中国人の目をそらす狙いが込められている。この間も、尖閣諸島沖の自衛艦に艦載ヘリを異常接近させていた。食えない人々だ。

近隣の腹黒い国々は、天災であれ戦災であれ、日本のクライシス・マネジメントの能力を探る。それが有事に直結するからだ。(東京特派員)