・中国は米国の安保努力で保たれる中東・湾岸地域 の安定を資源獲得に利用し、米国の努力に『ただ乗り』している!

・中東全域でも中国は2009年に石油の最大輸入国となり、同時に米国を抜いて同地 域への最大の輸出国となった。
・中国が米国の安全保障の枠組みに依存する中東・湾岸の地域から石油などで最大限の経済実利を得 ながらも、安保には寄与せず、逆に核兵器を開発する反米のイランとの太い絆を保つという実態がある。
・中国の中東・湾岸地域への現在のアプローチはサウジアラビア、イラン、イラクリビアなどの産油国と の経済取引、とくに石油や天然ガスというエネルギー資源の確保が中心である。
・中国は米国の安保努力で保たれる中東・湾岸地域 の安定を資源獲得に利用し、米国の努力に『ただ乗り』している!



〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
中国は中東で「ただ乗り 」
古森義久
2011.09.13 Tuesday

 中国の中東での活動というのは、日本のメディアで取り上げられることが少ないようです。  以下のような記事を書きました。
<<【緯度経度】ワシントン・古森義久 中東で利益のみ得る中国>>
 リビアカダフィ政権崩壊が象徴する中東の政治の激変は米国の中東への対応に大きな変更を迫るようになった。その中東であまり目立たない形で影響力を強めているのは中国である。
 だから米国の中東をみる視線はこの地域での中国の動向にも注意深く向けられることとなる。では米国は中東での中国の動きをどう解釈しているのか。

 その米国の認識がワシントンの大手研究機関「ウッドローウィルソン国際学術センター」による最近の研究報告で立体的に明らかにされた。
「中国とペルシャ湾 岸諸国=米国にとっての意味」と題する報告である。同報告は中国が米国の安全保障の枠組みに依存する中東・湾岸の地域から石油などで最大限の経済実利を得 ながらも、安保には寄与せず、逆に核兵器を開発する反米のイランとの太い絆を保つという実態に米国がいらだちを感じていることを指摘した。

 実際、中国の近年の中東地域への関与は目ざましい。カダフィ政権下のリビアにも石油開発、鉄道建設などで広範にかかわり、内戦が激しくなった今年3月には 中国政府は3万5千人もの中国人の技術者や労働者を緊急退避させている。中東全域でも中国は2009年に石油の最大輸入国となり、同時に米国を抜いて同地 域への最大の輸出国となった。

 こうした中国の動向の米国にとっての意味を分析した同報告は、同国際学術センターが米国の専門家ら6人を 集めた討論の結果を総括して作成された。同報告はまず中国の中東・湾岸地域への現在のアプローチはサウジアラビア、イラン、イラクリビアなどの産油国と の経済取引、とくに石油や天然ガスというエネルギー資源の確保が中心であると特徴づけた。中国は中東でも1970年代までは王制打倒などのイデオロギー的 な革命拡散に努めたが、近年は完全に放棄して、エネルギー資源確保を第一とする経済・商業の実利的対応へと切り替えたという。

 しかし同報告は中国が石油資源獲得のためにまずイランに急接近し、イランの核兵器開発への動きに寛容な態度を取り、国際的な対イラン制裁も骨抜きにする措置を取ったため、米国と衝突し、サウジアラビアなどとも微妙な摩擦を生んでいることをも強調した。

 同報告はさらに中国が米国のイラク攻撃に正面から反対しながら、新生の民主主義国イラクには石油調達のために急接近し、イラク石油の世界最大級の輸入国と なったことを指摘し、米国の安全保障努力の果実だけを得ることへの批判を表明した。同報告はまた中国がサウジアラビアからも全石油輸入の20%の量を調達 しながらも、米国のサウジなどへの安保支援とは対照的に経済以外の関与を一切、避けている点をとりあげ、「中国は米国の安保努力で保たれる中東・湾岸地域 の安定を資源獲得に利用し、米国の努力に『ただ乗り』している」とも明記した。

 同報告は中国がサウジアラビアなどの独裁政権に対し人権 抑圧非難をしないため、組みやすいパートナーとみられることや、イランとの石油取引を最近、縮小させ始めたことも指摘したが、なお中国のいまの経済の実利 だけに徹する中東政策も関与の規模拡大にともない思わぬ変化をみせることも否定できないだろう。