・世界貿易の3分の1が経由している南シナ海全地域が、中国によって支配されるのを阻止するため、東南アジアの国々と結束すべきだ!

・台湾や尖閣諸島に対する中国の武力攻撃が、西太平洋における日本と米国の国家安全保障上の利益に反する。
・中国は力を尊重する。
・中国は、国際法上の根拠もなしに南シナ海全域が中国のEEZ排他的経済水域)であるとして、そこでの航行の自由に対する支配権を主張することにより、危機を引き起こしている。
・中国は、まだ弱体だったころには、自国の「権利」を強制しようと試みはしなかった。
・日米両国は、中国が言葉だけでは相手を尊重しないということをわきまえるべきだ!
・世界貿易の3分の1が経由している南シナ海全地域が、中国によって支配されるのを阻止するため、東南アジアの国々と結束すべきだ!

〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
■中国の海が既成事実化する危険
ヴァンダービルト大学 日米研究協力センター ジェームス・E・アワー
2011.12.5 03:05 [正論]
 冷戦が終結してから、中国は、ソ連という邪悪な熊は飼いならされたのではないにしても、相当に傷ついたのであり、中国は平和を愛する国なのであるから、米軍はもはや太平洋にいる必要は一切ない、と言い始めた。
 2001年に日本で行われた会議で発表した論文の中で、私は、米軍が撤退できないひとつの理由として、台湾や尖閣諸島に対する中国の武力攻撃が、西太平洋における日本と米国の国家安全保障上の利益に反するからである、と述べた。
≪武力の脅しかけた中国の大使≫:
 その時、同じく会議に出席していた中国の大使が、拳で大きな音がするぐらい机をたたきながら、中国の我慢は無限ではなく、挑発を受ければ、中国はその政策目標を達成するために武力を行使することもいとわないだろうと、私に向かって2回も説教した。   私はそれに対し、日本が冷戦後も米軍基地を維持したいと願うのは、まさしく中国によるそうした類いの発言や行動のせいであると思う、と反論した。
 1989年、穏健派の胡耀邦中国共産党総書記の葬儀に際し、中国の多くの学生や知識人たちが国内諸都市で抗議を行ったとき、強硬派の李鵬首相率いる中国政府は、抗議を鎮圧するため戦車を投入することで対応した。  抗議者たちは、数は多かったものの、力はほとんどなく、中国政府は彼らを尊重しなかった。 今もなお未公表の数のデモ参加者が殺害され、抗議行動は、当局による弾圧を弱めるどころか、むしろ強める結果となった。
 96年に台湾で初めて民主的に行われた総統選を前にして、中国政府は台湾近海に向けて、ミサイルを発射する対抗措置に出た。  米国は、母港である横須賀からインデペンデンスを、地中海からスエズ運河経由でニミッツをと、空母2隻を派遣して、これに応じた。  中国は怒りの反応を示したが、ミサイル発射は終わり、台湾住民が李登輝氏を総統にした選挙は円滑に進んだ。中国は力を尊重するのである。
≪米空母に海自護衛艦随伴せず≫:
 米国の対応は効果的だったが、残念なことに、横須賀から台湾沖の海域まで、海上自衛隊護衛艦は1隻すら空母インデペンデンスに随伴しなかった。そうした状況が起きていれば、中国はもっと文句を言っていたに違いないが、中国側の尊敬もまた、高まっていたであろう。中国は力を尊重するのである。
 今日、中国は、国際法上の根拠もなしに南シナ海全域が中国のEEZ排他的経済水域)であるとして、そこでの航行の自由に対する支配権を主張することにより、危機を引き起こしている。
 とりわけ、EEZに関する中国の法律は11条で、いかなる国も中国EEZの航行とその上空通過の自由を享受するとうたう一方、14条では、この法律の規定は「中華人民共和国によって享受される歴史的権利」に影響を及ぼしてはならないと明言している。  そして、そうした「歴史的権利」は南シナ海の80%に適用される、と主張しているのである。
 中国は、まだ弱体だったころには、自国の「権利」を強制しようと試みはしなかったが、この10年ほどは、次第に支配権を唱える発言をより頻繁に行うようになり、日本の海底資源への権利を妨害したり、尖閣諸島沖の日本領海で日本の海上保安庁の船に(漁船を)衝突させたりして、日本に敵対する行動を取るようになっている(そして、いくつかの事件で米国に対しても)。
≪力見せずして中国尊重せず≫:
 中国が南シナ海の海域や海底を支配すれば、最も控えめにみても、ASEAN東南アジア諸国連合)の事実上すべての加盟国と同じように、日本の国家安全保障上の利益や中東の産油国も、重大な影響を受けるだろう。もし、日米両国が中国の発言や攻撃的な行動に対して、弱すぎる対応をした場合、日米両国政府は、見て見ぬふりをすることによって南シナ海に対する中国の主権を既成事実として受け入れたのだ、と将来、中国に主張されるというリスクを負うことになるだろう。
 日米両国は、地域協力を話し合っているインドネシアベトナムや、南シナ海全体での捜索、救難活動を可能にする日本のUS−2型飛行艇の購入を考慮しているブルネイといったASEAN諸国と緊密に協力し、南シナ海において国際法を尊重することと、中国が望むような一方的なやり方によることなく多国間によって紛争を平和的に解決することを手助けすべきである。
 ただし、日米両国は、中国が言葉だけでは相手を尊重しないということをわきまえるべきである。そして、航行の自由の権利を確実なものにするために、頻繁かつ定期的な南シナ海の通行を実施するとともに、日本の石油の生命線が通っているのをはじめ、世界の貿易の3分の1が経由している地域が、中国によって支配されるのを阻止するに当たり、東南アジアの国々と結束すべきである。