・「集団帰国運動」について、北朝鮮の意図は「社会主義建設と対南戦略への壮大な動員」だった。 社会主義の優位性を宣伝するとともに、日本から資産・物資・技術を導入するのが主目的だった!

・三条 健です。
金正恩氏の母、故高英姫(コ・ヨンヒ)氏が元在日朝鮮人だったことが国の「最高機密」になり、口外すれば厳罰に処せられる。
高英姫氏は大阪市出身で、60年代初頭、一家で「帰国」し、舞踏家として有名になったことから故金正日総書記に見初められた。
・昭和34(1959)年に始まったこの「集団帰国運動」で、昭和50年代まで実に9万3千人余りが日本から北朝鮮に渡った。帰国者の妻ら7千人近い日本人も含まれる。
・「集団帰国運動」について、北朝鮮の意図は「社会主義建設と対南戦略への壮大な動員」だった。 社会主義の優位性を宣伝するとともに、日本から資産・物資・技術を導入するのが主目的だった!
・当然、韓国は猛反発し日韓間の新たな火種となったにもかかわらず、日本政府は34年2月、帰国を推進する決定をする。
・集団帰国者にとっては、現実の北朝鮮が「楽園」とは正反対の「地獄」の地であり、過酷な環境のもと強制的に働かされ、自由はほとんどない。
・国家ぐるみの「詐欺」にあい、集団で拉致されたようなものだ! 日本政府もマスコミも、その片棒をかつがされたのだ!



〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
哀しき「地上の楽園」
論説委員・皿木喜久 2012.1.22 03:05
 いくら独裁国家北朝鮮とはいえ「そこまでやるか」という思いにかられた。  新たな独裁者として登場した金正恩氏の母、故高英姫(コ・ヨンヒ)氏が元在日朝鮮人だったことが国の「最高機密」になったという。口外すれば厳罰に処せられる。実際、1980年代にはそのために「粛清」された者もいるとされる。
 高英姫氏は大阪市出身で、60年代初頭、一家で「帰国」した。舞踏家として有名になったことから故金正日総書記に見初められ、正恩氏と兄、金正哲氏の母となった。  そこまではメディアの取材でよく知られていることだ。それが今さらのように「最高機密」だそうだ。
 北朝鮮や韓国で人が尊敬されるかどうかは「日本との距離」に反比例するとされる。  最高権力者の母親が日本出身と分かれば、その権威を損なうと恐れるのだろう。
 だがもっと根深い理由もある気がする。  高氏もその一員だった在日朝鮮人の「帰国事業」である。
 昭和34(1959)年に始まったこの「集団帰国運動」で、昭和50年代まで実に9万3千人余りが日本から北朝鮮に渡った。帰国者の妻ら7千人近い日本人も含まれる。映画『キューポラのある街』にも描かれ大きな社会現象になった。
 運動は日本国籍を持たず、就職などで差別を受け希望を失った在日朝鮮人の一部の人が、母国への帰国に一縷(いちる)の望みを託して始まった。
 だが33年、北朝鮮金日成主席がこれを歓迎し受け入れることを表明して以来、組織的となる。  北朝鮮は自らを「地上の楽園」と称し、「住宅も仕事も保証される」「子供はみな上級の学校にいける」とバラ色の未来を約束し、帰国を呼びかけた。  さらに朝鮮総連を中心に「帰国者集団」も組織され、半ば強制的な帰国運動へと拡大していく。
 帰国する「朝鮮人」の中には朝鮮戦争で北と戦ったばかりの南、つまり韓国出身者も多く含まれていた。  帰国問題に詳しい菊池嘉晃氏は著書『北朝鮮帰国事業』で、北朝鮮の意図を「社会主義建設と対南戦略への壮大な動員」だったと見る。 社会主義の優位性を宣伝するとともに、日本から資産・物資・技術を導入するのが主目的だったという。
 当然、韓国は猛反発し日韓間の新たな火種となった。  にもかかわらず日本政府は34年2月、帰国を推進する決定をする。母国に帰りたいという気持ちを止められないという人道的理由はあった。  だがそれより「地上の楽園」を信じ「帰国」を後押しするマスコミや文化人の言動にあおられたと言ってもいい。
 現実の北朝鮮が「楽園」とは正反対の地であったことはもはや言うまでもない。 過酷な環境のもと強制的に働かされ、自由はほとんどない。高英姫氏のシンデレラぶりなど例外中の例外だった。  とりわけ日本に里帰りもできない日本人妻たちには文字通り「地獄」だった。
 国家ぐるみの「詐欺」にあい、集団で拉致されたようなものである。日本政府もマスコミも、その片棒をかつがされたのだ。
 その後の日本人拉致事件でも秘密主義や虚偽で日本を翻弄してきたこの国のことである。  高氏の「過去」が表面に出ることで、あの詐欺まがいの「帰国運動」が国際社会でもう一度注目されることを恐れ、その歴史さえ抹殺しようとしているように思えてならない。  何とも哀(かな)しい「地上の楽園」である。