・日本がこの米、中、露のパワー構造のなかで、どのようにこの地域の勢力均衡を自国に有利に変えていくかという議論が無さ過ぎる!

・三条 健です。
・すでに北朝鮮がまがりなりにも核武装を行い、6カ国協議もこの核武装に対して有効な手を打てず、米国も積極的な解決策を提示できない状況だ!
北朝鮮をめぐる議論のなかで、東アジアのパワー構造を巨視的に見据えて、その変化の兆しを詳細に分析し、核武装を含む軍事問題についての議論は多くはない!
・米、中、露の巨大パワーが交錯する地域に隣接する日本という国が、このパワーのせめぎ合いに、自らはほとんど関与しようとしない事情も、小さくないのではあるまいか?
・日本がこの米、中、露のパワー構造のなかで、どのようにこの地域の勢力均衡を自国に有利に変えていくかという議論が無さ過ぎる!

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北朝鮮問題を論じる条件
ジャーナリスト・東谷暁 2012.2.8 03:07
 北朝鮮の指導者が金正恩に代わり、東アジア情勢への影響がとりざたされるなか、いくつかの雑誌が特集を組み増刊号を刊行して北朝鮮をめぐる問題の分析を展開している。  どれも興味深いが、何となく以前と代わり映えがしない。  そんな感想を抱いたのは私だけではあるまい。
 北朝鮮についての議論が同じように見えるのは、指導者が代わっても体制そのものが変わらないせいだという論者もいるが、そもそも、米、中、露という世界の三大パワーが、朝鮮半島で交錯しているという地政学的な構造が何より大きい。   この構造は歴史的に持続しており、しばしば「半島問題」と呼ばれてきた。
 しかし、もうひとつ、巨大パワーが交錯する地域に隣接する日本という国が、このパワーのせめぎ合いに、自らはほとんど関与しようとしない事情も、小さくないのではあるまいか。  それは、今回、北朝鮮について書かれた多くの論文において、日本がこのパワー構造のなかで、どのようにこの地域の勢力均衡を自国に有利に変えていくかというテーマに触れたものが、ほとんどないという点にも表れている。
 新しい北朝鮮の指導者・金正恩についての情報は実に興味深く、また、北朝鮮国民の生活がいかなるものかについても、常識として知っておくべきだろう。  さらに、この状況のなかで米国との連携を深めることも必要であり、中国の狡猾(こうかつ)な戦略を見抜くことは不可欠である。  しかし、では、これから日本がこの三大パワーの十字路のような恐るべき地域で、いかにして自らの意志を発揮して自らの独立を維持していくかという議論は、いまのところきわめて少ないように見える。
 私は、すでに北朝鮮がまがりなりにも核武装を行い、6カ国協議もこの核武装に対して有効な手を打てず、米国も積極的な解決策を提示できない以上、あっさりと、日本の核武装について具体的な議論をするのが筋というものだと思う。
 いまも核武装について語ることは、とんでもないタブーだと思い込んでいる人たちが右にも左にもいるが、幼少期から核はタブーだと刷り込まれてきた世代はともかく、いまの若者たちの多くは実はもっと議論すべきだと考えているはずである。
 今回の北朝鮮をめぐる議論のなかで、東アジアのパワー構造を巨視的に見据えて、その変化の兆しを詳細に分析し、核武装を含む軍事問題について論じてみせたのは、おそらくいまのところ、国際政治アナリストの伊藤貫(かん)氏くらいではないのか(月刊『正論』3月号)。    日本が置かれた現状を十分に認識していても、なにか屈折したような言葉でしか核武装を語れない論者が多いのは、あまりにも奇妙というしかない。
 もちろん、日本は、脱原発でも核武装はできると声高に論じ、果ては自分たちで作らなくてもインドから核武装のためのハードはもらえるなどと主張する人もいて、そうした議論が一定の支持を得てしまうような状況である。  有意義な議論をするのが大変なことは否定できない。
 しかし、それはこれまであまりにも萎縮して、核武装を本気でやってこなかった報いにすぎない。   この状況をすり抜けて初めて、私たちにも北朝鮮問題と東アジア情勢が語れるのである。(ひがしたに さとし)