・数式を使わない学問ほど因果論の安定性は低い。だから、地震学は阪神淡路大震災、東日本大震災など、予測はみな外れた!

・三条 健です。
・冷戦終結後は抑止が効かずにインド、パキスタンへと核が拡散し、後を北朝鮮、イランが追っている。
・覇権が消滅し均衡が崩れ世界が無極化したので、国々がビリヤード台の球のように平等にぶつかり合っているというのが、その間の経過説明だ!
地震調査研究推進本部は、平成24年度地震調査研究関係予算の概算を取りまとめ政府全体で464億円を要求しているという。  巨額であるだけに、ちゃんと新しい分析と対策を行ってくれるのか心配だ!
地震学や社会科学は予測には不向きな学問だ!  被害が大きくなるから実験も簡単にはできないし、結果が出るまでに長い時間が必要だ!  
・数式を使わない学問ほど因果論の安定性は低い。だから、地震学は阪神淡路大震災東日本大震災など、予測はみな外れた!




〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
予測という名の妖怪が徘徊する
筑波大学大学院教授・古田博司   2012.2.17 03:10 [正論]
 「マグニチュード7級の首都直下地震が4年以内に70%の確率で生じる」という東大地震研究所の試算は新聞各紙、テレビ各局で報じられて、首都圏住民を動揺させ、その余波はなお収まっていない。   本来の報告は30年で98%という試算とセットであり、首都直下と断定したものでもないが、一つには報道によって先鋭化され、これほど人心を騒がせたのである。
≪将来見通しに不向きな地震学≫:
 北朝鮮金正日総書記死去の時もそうだったが、これからどうなるかということに人々の関心は集まる。 当然だが、本当は人間は原因から始めることはできない。  結果から遡(さかのぼ)って原因を究明し、その原因から下って結果までの経過説明をする。  その経過説明が安定的なとき、それを因果というにすぎない。  恐竜の骨の化石から恐竜の想像図を描き、昔、恐竜が地球に生きていたという因果論を形成する。  逆はできない。三男の金正恩氏の登場から北朝鮮の滅亡を結論づけるにはどだい無理がある。
 これはすでに18世紀、カントが『純粋理性批判』で言っている。  人間は原因を必然として始めることは決してできない。  でも未来を知りたがる。   おまけにモダンな時代は科学信仰がかなり長く続いたので、経験と解釈でけっこう当たるように思いこんでしまった。
 地震学や社会科学は予測には不向きな学問だ。  被害が大きくなるから実験も簡単にはできない。  結果が出るまでに長い時間が必要である。  だから、阪神淡路大震災東日本大震災など、予測はみな外れた。  マルクスは労働だけが富を生むという労働価値説を唱えた。   皮肉なことに、それを実践したのは資本主義ではなく社会主義の国々で、労働時間を埋めるだけのサボタージュが横行した。   流通は富を生まないからと等閑視され、何をどれくらい作ったらよいか分からなくなった。  そして滅びた。
 実は、数式を使わない学問ほど因果論の安定性は低い。 数学、物理学、経済学の一部がこうならこうなると言えるだけで、数学とて解けない問題がある。  物理学も不確定性原理の欠陥で揺れている。
≪社会科学理論に汎用性なし≫:
 経済学は目下、マクロで得た直観をミクロで数式化すべく努力中である。  因果論など全て「われわれの習慣がもたらした信念にすぎない」と言ってのけた英哲学者ヒュームに対抗し、カントがそれでも良い、われわれの頭の中にある因果律という思考様式に当てはまれば役に立つ、と言ったところから近代科学が始まるのである。
 そこで「社会科学は科学ではない」と言い切ったのは福田恒存だったが、そう言ってはヒュームのように身も蓋もない。  それでも役立つところは取りたいと、カントのように考えてみる。  過去の経験から明らかなように「社会科学の理論には汎用性がない」。 いつまでも使えるものではないのだ。
 例えば、冷戦時代には、米ソ超大国があり、両国の覇権が戦争のリスクを抱え込む形でかろうじて均衡を成り立たせていた。   だが、今やソ連は崩壊して、ロシアは超大国から一段下に降りている。
 米国は経済苦から、2つの大規模紛争に同時に対処する「二正面作戦」を実質的に放棄する方針を1月5日に公表した。   遡って原因を探れば、冷戦時代に花形だった覇権と均衡の国際政治学はすでに終わっている、と言わざるを得ない。   だから、冷戦終結後は抑止が効かずにインド、パキスタンへと核が拡散し、後を北朝鮮、イランが追っている。覇権が消滅し均衡が崩れ世界が無極化したので、国々がビリヤード台の球のように平等にぶつかり合っているというのが、その間の経過説明である。
≪「覇権と均衡」の世界観が今も≫:
 金総書記死去後の新聞各紙を丹念に読むと、未だに頭が覇権と均衡の時代のままで、汎用性を失った国際政治理論を適用しようともがく識者がいる。   かと思えば、それを半ば捨て、6カ国協議について、「だましだましのアート」だとか北のブレーキにならないとか言い切る識者が並存している。
 中国が北朝鮮の安定に全力を挙げ、非核化や改革・開放を勧めたり促したりするという趣旨の新聞社説もあったが、それらは12月26日の野田佳彦首相と温家宝中国首相との会談や、1月9日の李明博韓国大統領−胡錦濤中国国家主席会談で、中国の不熱心さを知ることになり、希望的観測にすぎなかったことが分かった。
 彼らはなぜ、覇権と均衡のイデオロギーにしがみつくのか。  中国にソ連に代わる新しい覇権国になってもらい、冷戦の狭間(はざま)で日本が満喫した、非武装中立の平和主義と経済的な泰平をなおも享受したいという惰性すら垣間見える。
 時代に押し流され実用性を失った理論はイデオロギー化するほかないのだが、人々が忘れ去るまでは、世を徘徊し騒がせる妖怪になり研究費や助成金を食う。  地震調査研究推進本部は、平成24年度地震調査研究関係予算の概算を取りまとめ政府全体で464億円を要求しているという。  巨額であるだけに、ちゃんと新しい分析と対策を行ってくれるのか心配になる。(ふるた ひろし)