「ネガ・リスト」への大転換への道は法制面での「大手術」が必要であり、危機管理面において急務だ! 

・三条 健です。 「ネガ・リスト」への大転換への道は法制面での「大手術」が必要であり、危機管理面において急務だ! 
・軍の権限は「原則無制限」でなければ、国民の生命・財産は守れない
・中国漁船の領海侵犯事件(2010年9月)では、近海に海上自衛隊護衛艦が遊弋(ゆうよく)していたにもかかわらず、海上警備行動が下令されず、領海外への退去を命ずることさえ適(かな)わなかった。
北朝鮮からの弾道ミサイルが10分前後で飛来する現代戦にあって、その複雑で愚鈍な法体系は第一線の指揮官の判断に重くのしかかっている。
・政府が「主権侵犯した組織・個人に対し、国際法の範囲内で必要な措置と武器使用を含む作戦行動を採れ」と、肚をくくり、命じるだけで、本来はよい。 後は、現場の指揮官がROE(交戦規定)に則(のっと)り、例えば、退去命令→威嚇射撃→船体射撃→撃沈などの段階を粛々と踏むだけだ。
・軍事組織なのに「ポジ・リスト」が適用され、自衛隊の行動や自衛隊への命令は、全て法律の担保が必要となってしまったのだ!
・想定外やグレーゾーンの事態に、現行の「ポジ・リスト」で対処すれば、必ずや「101個目の事態」で足踏みする。「憲法・法律守って国滅ぶ」






〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
中国海軍が砲撃してきたら… 日本滅ぼす「101本目の法律」
2012.5.21 10:51 [安全保障]
 民主党保守系国会議員による安全保障に関する勉強会に講師として呼ばれた。 テーマの一つは「領域警備法」制定。 中国漁船の領海侵犯事件(2010年9月)では、近海に海上自衛隊護衛艦が遊弋(ゆうよく)していたにもかかわらず、海上警備行動が下令されず、領海外への退去を命ずることさえ適(かな)わなかった。 そこで、平時でも主権=領土・領空・領海を守護できる「領域警備法」を、超党派で成立させる動きとなったのだ。(SANKEI EXPRESS)
「建て増し旅館」の危険性:
 勉強会の冒頭「あえて、この法律制定に反対する」とクギを刺すと、賛成すると思い筆者を招いた議員団はやや驚いた様子だった。  小欄が「あえて」反対するのは、領域警備法が「101本目の法律」であるからだ。  説明が必要だ。
 わが国は、安全保障上の100個の事態に100本の法律で対処している。 これでは101個目の事態が生起した場合、101本目の法律を必要としてしまう。  自衛隊法はじめ安全保障関係の法律は増殖を続け、既存法との整合性を図らなければならないこともあって肥大・複雑化する一途(いっと)だ。   あたかも本館−別館−新館が、迷路のような廊下で継ぎ足される巨大温泉ホテルのようだ。  建築・消防・観光関係の法律をクリアしていても、いざ火災となれば死傷者を輩出する危険は、シンプルな建家に比べ格段に高いはず。 北朝鮮からの弾道ミサイルが10分前後で飛来する現代戦にあって、その複雑で愚鈍な法体系は第一線の指揮官の判断に重くのしかかっている。
 そもそも、国家は独立を果たした時点で主権を守る権利・義務が発生する。 国際法でいう「自然権」である。 人間が生まれた瞬間に、息を吸ってよい権利と同じだ。
 従って、政府が「主権侵犯した組織・個人に対し、国際法の範囲内で必要な措置と武器使用を含む作戦行動を採れ」と、肚をくくり、命じるだけで、本来はよい。  後は、現場の指揮官がROE(交戦規定)に則(のっと)り、例えば、退去命令→威嚇射撃→船体射撃→撃沈などの段階を粛々と踏むだけだ。
ポジ・リストの自衛隊
 4月13日の北朝鮮弾道ミサイル発射時に、自衛隊法に基づきあらかじめ下された「破壊措置命令」も、中国漁船事件対処と同根の病巣を抱える。    確かに、ミサイルなど飛翔(ひしょう)物体が日本領域に飛来・落下し、国民の生命・財産への被害防止が求められる際、防衛大臣は飛翔物体破壊を命令できる。
 だが「日本の安全保障関係の法体系は進歩した」などと、感心してはいけない。 まともな国に、この種の法律は存在しない。  軍事組織の根源的任務は国家主権と国民の生命・財産を守護することに尽きるからだ。  これまた自然権の発露で、法を課す必要など全くない。 逆に問いたい。  「創隊以来、自衛隊の任務は何であったのか」と。  小学生中高学年でも回答できる問い掛けだ。
 軍の権限は「原則無制限」で、予(あらかじ)め禁止されている行為・行動以外は実施できる「ネガティブ・リスト」に基づくことが定石。  軍は外敵に対しての備えであり、国民の自由・権利侵害を前提としていないためだ。
 これに比べ警察活動は、逮捕に代表されるが、国民の自由・権利を制限する局面があり「原則制限=ポジティブ・リスト」となっている。にもかかわらず、自衛隊は警察同様、実施できる行為・行動を一つ一つ法律で明示し縛る「ポジ・リスト」を前提にする。  この前提では、奇襲や政府の判断ミス、伝達手段の不具合などで、飛翔物体に対する破壊命令が発出されなかった場合、ミサイルは迎撃できない事態に陥る。
 歪(いびつ)な法体系の源流には、自衛隊の前身=警察予備隊・保安隊の生い立ちがある。 両隊は、警察の対処が不可能、又は著しく困難な場合の補完組織として法制上位置付けられた。 ところが、自衛隊になっても自衛隊設置法や自衛隊法で、その位置付けが引き継がれた。 軍事組織なのに「ポジ・リスト」が適用され、自衛隊の行動や自衛隊への命令は、全て法律の担保が必要となってしまったのだ。
ネガ・リストでの対応を: 
 実は「ネガ・リスト」への大転換への道は閉ざされているわけではない。  ただし、法制面での「大手術」が必要。  即(すなわ)ち
(1)海上警備行動など、自衛隊が行動するうえで必要な法律条文を防衛出動以外、全て削除する
(2)その上で国家主権と国民の生命・財産を守るべく、国際法の範囲内で、武器使用を含むあらゆる手段を尽くす
−と明記すればよい。
 これで、国内の秩序維持はともかく、奇襲といった外国組織による第一撃へは、指揮官の判断で応戦が可能になる。
 しかし、防衛出動だけは残す。  仮に太平洋で中国海軍の戦闘艦が砲撃してきたら当然、これに応戦・撃沈できる。  が、同じ時期、大西洋で中国戦闘艦と遭遇した際、これを撃沈するには、国家として戦争突入を容認する防衛出動下令が前提になるためだ。
 ところで、日本の安全保障環境は全て平時/有事に色分けされる。 だが、列車事故やダム決壊などは当初、テロか事故かは判然としない。 朝鮮半島・台湾危機では、日本も「無傷」ではいられない。  こうした想定外やグレーゾーンの事態に、現行の「ポジ・リスト」で対処すれば、必ずや「101個目の事態」で足踏みする。
 わが国を滅ぼすのに、害意ある外国は、自衛隊への防衛出動下令が明白な戦争を仕掛ける必要などない。 その一歩手前のグレーゾーンを飛び出さない軍事行動やテロ、つまり「101個目の事態」を起こせば、法律で担保できておらず、手も足も出ないだろう。
 斯(か)くして「憲法・法律守って国滅ぶ」を地で行くのである。(九州総局長 野口裕之