米中新冷戦、英独の新たな動き、日本の寄らば大樹はアメリカ!
・中国が、人類史上、最強のシーパワー(プラス エアパワー)であるアメリカに巨大海軍建設で対抗しようというのは、実に愚かな戦略である。
・あれほど中国経済に献身したパナソニック工場が焼き討ちされたのも、「ドイツ勢が本格進出するから、日本企業は去れ」というメッセージだったのか?
・シティ(ロンドン金融街)を人民元のオフショア市場に開放した。
怒り心頭のアメリカは、LIBORの不正問題で追及し、英国を代表する巨大銀行の拡大を阻止する挙にでた。
・スタンダード・チャータード銀行とHSBCから巨額な罰金を取って(HSBCから19億ドル)、その中国との金融連携を妨害した。
〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
書評『米中新冷戦、どうする日本』
宮崎正弘 2013.02.13
米中の新しい冷戦下、英独が中国と連携し、米国に敵対という新図式。ユーロで米に対抗したドイツ、米はLIBORで英銀の拡大を阻止へ。
<藤井厳喜『米中新冷戦、どうする日本』(PHP研究所)>
米国通で、世界経済の躍動と現状をユニークな視点から解析する藤井さんの最新作。本書は第一部と第二部から構成され、前者はルーズベルト大統領以来の対日謀略を描くが、評者(宮崎)は第二部の方に強く関心を抱いた。
最重要な事実は、中国の「軍事大国、経済大国」としての覇権追求と、「米国の『シェール革命』による優位回復」という状況分析に立脚して、世の中がこれからどう変貌するかを基軸に日本の進路を占う。
世界情勢の藤井流の分析はダイナミックである。 藤井さんは、中国の運命について、まずこういう。
「地政学的に見れば、そもそもランドパワー(大陸国家)がシーパワー(海洋国家)に変身できた例は皆無である。 歴史的に見ても、かつてのドイツもソ連もこの試みに失敗したし、中国も失敗するに違いない。 現在の中国の海軍軍拡は、高度成長期を終わって停滞期に入った中国経済にとって、過大な負担となってくるに違いない。 中国が、人類史上、最強のシーパワー(プラス エアパワー)であるアメリカに巨大海軍建設で対抗しようというのは、実に愚かな戦略である」(135p)
歯切れの良い断定である。
ところが、「米中新冷戦で中国と厳しく相対峙するアメリカに、意外な敵対国が現れた。 それはイギリスとドイツである。 両国とも中国に接近し、アメリカにとってはやっかいな問題となりつつある。 これもまた、米ソ冷戦時代には予想だにできなかった全く新しい展開である。」
昨日の敵は今日の友、今日の友は明日の敵である。
そういえば、反日暴動でトヨタや日産の販売店も放火され、破壊された。
これは取り方によっては「日本はもう良いぜ、ドイツが来るから」という中国からのメッセージかも知れない。
あれほど中国経済に献身したパナソニック工場が焼き討ちされたのも、「ドイツ勢が本格進出するから、日本企業は去れ」というメッセージだった可能性は皆無とは言えないだろう。
なにしろ大戦中のドイツは日独伊三国同盟の初期さえ、中国軍に梃子入れしていたのだから。
それにしてもドイツの対米対抗はなぜか?
「二十一世紀における戦争では、経済や金融もまた重要な無制限戦争の一領域である。 イギリスもドイツも軍事上、中国と直接同盟関係にあるわけではないが、経済の基盤があってこそ、国家は軍事面でも活動が可能となるのであり、(英独がいまやっている経済面での中国との連携ぶりは)軍事面でも中国を支援するに等しい」(222p)と藤井さんは分析される。
それは「各国の通貨の優位性を争う戦争でもある」からだ。
つまり基軸通貨の米ドル優位体制にユーロでEUをまとめて、露骨に米国に挑戦してきたドイツと、イギリスはポンドを維持するために「ユーロ通貨圏から独立してロンドンの金融センターを維持するために必死でサバイバル」を追求する。 それがシティ(ロンドン金融街)を人民元のオフショア市場に開放したことだ。
怒り心頭のアメリカは、LIBORの不正問題で追及し、英国を代表する巨大銀行の拡大を阻止する挙にでた。 つまりスタンダード・チャータード銀行とHSBCから巨額な罰金を取って(HSBCから19億ドル)、その中国との金融連携を妨害したのだ。
日本が直面している中国の脅威、ユーラシアの東側では異常な発展が現れていたのである。