・米国に金融制裁の再発動を、韓国には開城工業団地の閉鎖を求め、北朝鮮の外貨源を断つ国際包囲網の構築を目指し積極的に動いていくべきだ!

金正日氏が死亡した一昨年12月から金日成生誕百周年行事があった昨年4月までに届け出額で3億7760万円が北朝鮮に運ばれ、体制維持や核・ミサイル開発に使われたとみられる。
・日本による制裁の余地はまだある。 訪朝し北朝鮮の核・ミサイル開発を支援している在日本朝鮮人科学技術協会(科協)所属の核・ミサイル技術者に再入国不許可の対象を広げることだ。
・ミサイル・エンジン専門家の金剛原動機合弁会社副社長の徐判道氏は昨年、3回訪朝している。
北朝鮮の核・ミサイル開発の資金と技術の持ち出しを放置してきたことは反省されるべきだ。
・1993年の調査では、90年代初めには、年間1800億〜2000億円相当が送られていた。
・パチンコ・マネーが北朝鮮に送られた背景にも、組織的脱税があった。
朝銀は全国で次々に破綻した。その度に、「善意の預金者保護」の建前の下で公的資金が投入され、対北送金でできた穴を埋めていく。その総額は1兆4千億円にも上った。
・米金融制裁が効いたのは、世界の銀行が米国からの制裁を恐れて39号室の秘密資金の取り扱いを敬遠したからだ。
・米国に金融制裁の再発動を、韓国には開城工業団地の閉鎖を求め、北朝鮮の外貨源を断つ国際包囲網の構築を目指し積極的に動いていくべきだ!




〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
北核・ミサイルの資金源を断て
東京基督教大学教授・西岡力   2013.2.20 03:13 [正論]
 北朝鮮が3回目の核実験を強行した。 日本政府は12日当日中に、再入国不許可の対象に5人の朝鮮総連副議長を追加する制裁を科した。  本欄などで北朝鮮拉致問題で誠実な対応をしないことを理由に5人の再入国不許可を繰り返し求めてきた者として、遅きに失した観はあるものの歓迎したい。
≪総連副議長5人は資金運び屋≫
 彼らは、再入国が許されていない許宗万議長らに代わり頻繁に訪朝し、北朝鮮工作機関幹部からの指令で日本からの資金の運搬役を務めてきた。
 金正日氏が死亡した一昨年12月から金日成生誕百周年行事があった昨年4月までに届け出額で3億7760万円が北朝鮮に運ばれ、体制維持や核・ミサイル開発に使われたとみられる。
 韓国の検察によれば、5人の1人、●眞求副議長は、拉致やテロを行ってきた北朝鮮工作機関225局(旧対外連絡部)の日本での責任者で、核実験前日の11日にも北朝鮮に出国している。こんな人物を行き来させてはならない。
 2011年に韓国で摘発された北朝鮮の党の地下組織「旺載山」の幹部が訪日して●氏と接触していたことも分かっている。
 その前身組織に加担し、1993年8月に石川県から半潜水艇北朝鮮に渡り金日成氏と面談し、「南朝鮮で革命を起こすために地域指導部を組織しろ」と指示を受けたと自白したソウル大教授は、裴氏から指導を受け、金日成氏との面談にも裴氏が同席していたという。
≪科学技術者も再入国不許可に≫
 日本による制裁の余地はまだある。  かねて主張してきたように、訪朝し北朝鮮の核・ミサイル開発を支援している在日本朝鮮人科学技術協会(科協)所属の核・ミサイル技術者に再入国不許可の対象を広げることが、その1つだ。
 例えば、ミサイル・エンジン専門家の金剛原動機合弁会社副社長の徐判道氏は昨年、3回訪朝している。  関係者によると、彼が訪朝する度にミサイルが発射され、ミサイル基地で点検作業に立ち会っている疑いがあるという。
 2006、09年のミサイル実験の前にも徐氏の訪朝が確認されている。
 北朝鮮は在朝日本人に出国の自由を与えていない。  日本は人権を尊重する自由民主主義国だから同じような措置を取ってはならないとはいえ、誰に再入国許可を出すかは主権国家固有の権限である。   北朝鮮の核・ミサイル開発の資金と技術の持ち出しを放置してきたことは反省されるべきだろう。
 北朝鮮世襲独裁政権が3代も維持できているのはひとつには、朝鮮総連が送金し続けた秘密資金があったればこそだ。   内閣調査室の1993年の調査では、90年代初めには、年間1800億〜2000億円相当が送られていた。
 原資は朝鮮総連の不法活動だった。 第1の手法が組織的脱税だ。  総連系商工人の税務書類を総連が代行して作成し、税務署と談判して税金を大幅にまけさせていたとの証言は多い。   彼らは自ら、76年に税務署との間で5項目の合意をしていると豪語していた。  パチンコ・マネーが北朝鮮に送られた背景にも、組織的脱税があった。
 第2は朝銀信用組合を使った不正融資だった。 朝鮮学校などを含む総連所有の不動産を担保に、朝銀が総連系個人やペーパー会社に多額の融資を行う。 借り手は端から返すつもりがなく、その資金が総連経由で北朝鮮に送られる。  当然、融資は焦げ付いて、朝銀は全国で次々に破綻した。
 その度に、「善意の預金者保護」の建前の下で公的資金が投入され、対北送金でできた穴を埋めていく。その総額は1兆4千億円にも上った。
≪39号室の資金を枯渇させよ≫
 これらの不法送金は、第1次安倍晋三政権が「厳格な法執行」を掲げて行った事実上の対北制裁措置で、大幅に減少した。   第2次安倍政権は1月の拉致問題対策本部会合で、「厳格な法執行」の継続を決めた。   正しい方針である。
 日本からの不法送金や、武器輸出、麻薬やドル偽造などで得られた外貨は、金正日氏個人の資金として朝鮮労働党39号室などが、スイスなどの銀行の秘密口座で極秘に管理していた。  米金融制裁が効いたのは、世界の銀行が米国からの制裁を恐れて39号室の秘密資金の取り扱いを敬遠したからだ。
 北朝鮮に石油や食糧を支援する中国も外貨は渡していない。  むしろ韓国が、開城工業団地を中心とする南北交易で北朝鮮に外貨を落としている。
 李明博政権5年間の南北交易額は90億9600万ドル、年平均で18億1920万ドル。 これは北朝鮮財政の約4割に当たる。
 韓国統一省は「北朝鮮は南北交易では黒字構造で、中朝貿易では慢性的な赤字構造であるので、南北交易で稼いだ外貨が中朝貿易の増大を支えている」としている。
 北朝鮮はイランなどとは違い、海外に売るべき資源を持っていない。
 彼らを追い込むには、39号室資金を枯渇させればよいのだ。
 安倍政権は、総連への厳しい法執行を続けるとともに、米国に金融制裁の再発動を、韓国には開城工業団地の閉鎖を求め、北朝鮮の外貨源を断つ国際包囲網の構築を目指し積極的に動いていくべきだ。(にしおか つとむ)

●=褒の保を非に