・1〜2ヘクタール作付けする兼業農家の生産コストは、30ヘクタールを経営する専業農家のそれの4〜5倍にもなる。生産性の問題だ!

・日本の資本が外国で稼いでも日本の中の雇用は失われる。
・電機、自動車、半導体など、成長期の日本を支えていた産業が、生産コストの安い中国や東南アジアに移転し、日本列島は空洞化しつつある。
・日本のみで自給自足することができないのはもちろん、農業も医療も“鎖国”で守ることはできない。
・ここ20年ほど、日本は失うことを恐れるあまり守りの経済に入り、FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)の締結数が先進国でも特に少ない。
・金融当局の無策で円は長年、独歩高を続けた。 15年にも及ぶデフレ経済の下で、財政政策だけで乗り切ろうという愚策の結果、国の借金は1000兆円にも膨らんだ。
・円安が定着すれば、企業の国外流出は止まるし、海外からの投資資金も還流する。
農水省や農協は「農業を守る」ことを貫いたにもかかわらず、かつて11兆円あった農業の生産高は今、8兆円である。 
・苦境に立たされる酪農は関税による保護が続くだろう。  野菜、果樹、園芸は専業農家が多いことからみて、十分に自立をし得るし、競争力を持つ。
・1〜2ヘクタール作付けする兼業農家の生産コストは、30ヘクタールを経営する専業農家のそれの4〜5倍にもなる。生産性の問題だ!
・農業への企業の参入、農地の売買・賃貸にまで厳しい条件が付いて、農協の権益を守っている。
・医療にまつわる利権を外せば、この分野は大きく稼げるようになる。




〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
アベノミクスの成否、TPPに
評論家・屋山太郎  2013.3.12 03:44 [正論]
  TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)反対論が収まらない。  特に、農業分野と医療分野には反対論が多いほか、論(あげつら)うだけの反対論がはびこっている。 およそ交渉事に得ばかりということはない。  失うものと相殺して得であれば、交渉は成功したといえる。  交渉自体に参加するなというのは、国際的に無知な手合いの議論だ。
 ≪守りで谷底に安住するのか≫
  資本主義、自由経済の下、日本は貿易で食っている。  資本主義は比較優位の産業が生き残り、世界中の人々が最良の品を受け取れるシステムである。  比較優位が進行する段階では、ある産業が一気に死にかねないから、猶予を与えるため関税化の手段がある。
  自民党西田昌司参議院議員はテレビや雑誌で強烈なTPP交渉参加反対論をぶっている。  その主張を突き詰めると、比較優位を進める資本主義の論理はすでに破綻したというもののようだ。
  電機、自動車、半導体など、成長期の日本を支えていた産業が、生産コストの安い中国や東南アジアに移転し、日本列島は空洞化しつつある。
  西田氏は日本の資本が外国で稼いでも日本の中の雇用は失われるから、TPPなどには入らない方がよい、農業も医療も滅亡してしまう、と言う。
  この考え方の裏には、アメリカに一方的に日本の利益を吸い取られるという被害妄想も見え隠れする。
  グローバル化の中で、世界の人が恩恵を受けているのはまぎれもない。
  問題は公平に平等に行き渡らないことであって、資本主義経済が行き詰まったのではない。  国際経済の中で日本だけ足を止めたらどうなるか。
  日本のみで自給自足することができないのはもちろん、農業も医療も“鎖国”で守ることはできないのである。
  ここ20年ほど、日本は失うことを恐れるあまり守りの経済に入っていた。 FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)の締結数が先進国でも特に少ないのが、その証拠だ。  規制撤廃構造改革をやれば、その産業は活性化するというのが戦後の経験則だった。  だが、悪化を恐れて政治も行政も立ち止まるようになった。  守りに入ると、上を見ない。  視線がどんどん下がって行き、谷底での安住の術を考えるようになる。
 ≪景気の「気」は動きだした≫
  安倍晋三首相は、(1)金融緩和などによる2%のインフレ目標設定(2)財政出動(3)成長戦略−の「三本の矢」を放って、そんなジリ貧状態にあった日本を覚醒させた。  まだ具体的にはほとんど何にも着手していないのに、株価はうなぎ上りである。  安倍氏は景気の「気」を動かしたといっていい。
  日本の産業が徐々に空洞化して行った主因は、1ドル=80円台を突破するような円高で輸出企業の採算が取れなくなったことにある。 
  金融当局の無策で円は長年、独歩高を続けた。  日銀の中立性と言うが、日銀には、財務官僚OBが代々天下って総裁や副総裁を務めており、実態は財務省支配が続いてきた。  15年にも及ぶデフレ経済の下で、財政政策だけで乗り切ろうという愚策の結果、国の借金は1000兆円にも膨らんだ。
  アベノミクス効果が続いて円安が定着すれば、企業の国外流出は止まるし、海外からの投資資金も還流するかもしれない。  少なくとも流出は断ち切ることができると思う。   加えて、新成長戦略として位置づけられるのが農業、医療分野の根本的な解決策で、アベノミクスの成否のカギを握る。
 ≪農業、医療を成長させ勝負を≫
  かつて11兆円あった農業の生産高は今、8兆円である。 この間、農水省や農協は「農業を守る」ことを貫いたにもかかわらず、生産高は3兆円も落ちた。  農業の構造を変えない限り、落ち目が続くのははっきりしている。  日本の農地の規模は、アメリカの100分の1、EU(欧州連合)の10分の1だから、面積的に負けるという人がいる。 大間違いである。
  日本の農業技術、品種改良の能力、土壌と水質の良さのいずれを取っても、欧米には引けを取らない。  この強みを生かす農業を作り上げれば、勝負になる。  苦境に立たされるのは酪農だろうから、これは関税による保護が続くだろう。  野菜、果樹、園芸は専業農家が多いことからみて、十分に自立をし得るし、競争力を持つ。
  問題はコメだ。 1〜2ヘクタール作付けする兼業農家の生産コストは、30ヘクタールを経営する専業農家のそれの4〜5倍にもなる。  耕地を30〜50ヘクタール規模に集約し拡大して品種改良も行えば、中国産米に太刀打ちできると言う専業農家もいる。
  障害は農家を差配する農協の仕組みにある。  小規模農家10戸に各戸1台、計10台売っていたトラクターが、1戸に集約されると、1台しか売れなくなる。  農業への企業の参入、農地の売買・賃貸にまで厳しい条件が付いて、そんな農協の権益を守っている。
  先進国日本において、医師会は混合診療に反対である。  だが、日本は医療機器、医薬関係で実に3兆円もの入超だ。  医療にまつわる利権を外せば、この分野は大きく稼げるようになるはずだ。(ややま たろう)