・海洋国家の日本は、津軽海峡、宗谷海峡、対馬海峡でも領海幅を12カイリに拡大して管理体制を築き、東アジアの海洋安全保障の主導権を握れ!

津軽海峡の安全確保のためにまずなすべきは、領海法を改正し他海域と同様に領海幅を12カイリとし、国家として責任ある管理体制を構築することだ。
津軽海峡の船舶事故防止のため分離通航帯を設け、航行管制を行うとともに速度規制などのルールを定めることを検討せよ!
津軽海峡を東西に通航する船舶は多い。
・2009年にここを経由した国際航路のコンテナ船の数だけでも1798隻に上る。
・韓国の釜山、中国の青島、ロシアのウラジオストクなどの港から北米へと至る最短航路だからだ。
・日本は1977年に定めた領海法で、沿岸から12カイリ(約22キロ)の領海幅を設けている。しかし、宗谷海峡津軽海峡大隅海峡対馬海峡東水道、対馬海峡西水道の5海峡だけは、領海幅を3カイリ(約5・6キロ)に設定して、海峡の中央部を公海としている。
・日本が5海峡の領海幅を3カイリとする理由は、領海内を他国の核兵器搭載艦船が通過した場合、非核三原則核兵器の持ち込み禁止)に抵触するという厄介な問題が生じるからだといわれる。
津軽海峡を通過する船が陸奥湾に避難してくるケースも年間数百隻にも上る。
・海洋国家の日本は、津軽海峡宗谷海峡対馬海峡でも領海幅を12カイリに拡大して管理体制を築き、東アジアの海洋安全保障の主導権を握れ!






〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
津軽海峡を全面領海にして守れ
東海大学教授・山田吉彦   2013.11.5 03:31 [正論]
 尖閣諸島をはじめとする東シナ海は目下、日本の海洋安全保障の上で最大の焦点である。  だが、北方海域および日本海の情勢も予断を許さない。  今年7月、中国とロシアは日本海で共同軍事演習を行った。
 中国の北海艦隊はその後、日本海を縦断し宗谷海峡を経由して太平洋へと向かい、日本を牽制(けんせい)するように本国へ帰航している。
 防衛省関係者によると、ロシア海軍の動きも激しく、今年は北方海域に姿を現す艦艇数が昨年の2倍に増加しているという。
≪中国艦船の示威になす術なし≫
 日本海の入り口に当たる宗谷、津軽対馬の3海峡を通過する外国船の数も増えている。 とりわけ津軽海峡は気がかりだ。
 津軽海峡を東西に通航する船舶は多い。
 2009年にここを経由した国際航路のコンテナ船の数だけでも1798隻に上る。
 韓国の釜山、中国の青島、ロシアのウラジオストクなどの港から北米へと至る最短航路だからだ。
 日本は1977年に定めた領海法で、沿岸から12カイリ(約22キロ)の領海幅を設けている。
 しかし、宗谷海峡津軽海峡大隅海峡対馬海峡東水道、対馬海峡西水道の5海峡だけは、領海幅を3カイリ(約5・6キロ)に設定して、海峡の中央部を公海としている。
 公海では日本の国家主権が適用されない。航行中の船で起きた犯罪は、船籍が置かれている国が管轄することになる。他国の海軍の行動を制限することもできない。艦船が示威行為に及んだとしても抗議すらできないのだ。
 2000年、中国海軍の艦船がわが国を挑発するように津軽海峡を一往復半して通り過ぎ、08年にも4隻の艦船が通過した。
 公海上であることから、わが国はこうした行動になす術もなく、黙って眺めているほかなかった。
 外務省は、「国際交通の自由を保護するため」これらの海峡の中央部を公海としている、としている。
 だが、他国の海峡の例を見ると、どうも様子が違う。
≪マラッカは3カ国が領海に≫
 インドネシア、マレーシア、シンガポールに挟まれたマラッカ海峡は、年間9万隻余の船舶が通る海上交通路(シーレーン)の要ながら、沿岸3カ国は領海に組み入れている。
 国際的に重要だからこそ、沿岸国が責任を持って管理する必要があるとの判断である。
 国際海事機関(IMO)のルールにも則って分離通航帯を設け、通航する船舶を守っている。
 日本が5海峡の領海幅を3カイリとする理由は、領海内を他国の核兵器搭載艦船が通過した場合、非核三原則核兵器の持ち込み禁止)に抵触するという厄介な問題が生じるからだといわれる。
 だが、領海法制定から40年近い歳月が流れ、津軽海峡を取り巻く状況も変化している。
 国内船舶では、北海道と青森を結ぶフェリーが1日約20往復するほか、函館のイカ釣り船、大間のマグロ船などの漁船が縦横に走り、もともと海難事故が後を絶たない。
 加えてロシアは近年、サハリンのガス田を中心に極東地域開発を進め、それらの物資の輸送に利用している。
 最近では外国貨物船絡みの事故も起きている。
 昨年12月、海峡内でマグロのはえ縄漁船と外国貨物船が衝突する事故が起きた。同じ時期に、荒天避難のため陸奥湾に進入した外国貨物船がホタテの養殖施設を損壊し、3億円の被害をもたらした。
 津軽海峡を通過する船が陸奥湾に避難してくるケースも年間数百隻にも上るという。
 青函フェリーの船員は、船舶無線から中国語、ロシア語の会話が頻繁に聞こえるようになって、最近は航行の安全にも不安を覚えだしていると話していた。
北極海航路で通過船が急増?≫
 海峡の将来に最大の影響を与えそうなのは、「北極海」であろう。今後、北極海航路北極海の海底資源の開発が進むと、津軽海峡の船舶通過数は飛躍的に増大する可能性が高い。
 仮に津軽海峡の全海域を領海に組み入れたとしても、国連海洋法条約により船舶の通過通航権が保証される「国際海峡」となり、潜水艦の潜航を含む外国の軍艦の通過も認められる。
 ただし、外国艦船による海域の調査は拒絶でき、示威行為も禁止できる。
 わが国が津軽海峡の安全確保のためにまずなすべきは、領海法を改正し他海域と同様に領海幅を12カイリとし、国家として責任ある管理体制を構築することだ。具体的には、船舶事故を防ぐために分離通航帯を設け、航行管制を行うとともに速度規制などのルールを定めることを検討すべきだ。
 津軽海峡での領海幅を12カイリとすることは、日本海と太平洋を結ぶ重要航路を監視下に置いて、ロシア、中国、韓国にとり主要な国際航路を制御する権限を持つことになる。
 併せて宗谷海峡対馬海峡でも領海幅を12カイリに拡大して管理体制を築ければ、わが国が東アジアの海洋安全保障の主導権を握ることにつながるだろう。
 沿岸域管理を徹底することは、海洋国家、日本として当然の義務であると筆者は考える。(やまだ よしひこ)