・世界的な株安現象に影響している核心的要因は、想定を超える欧州経済の減速とユーロの急速な下落だ!

・世界的な株安現象に影響している核心的要因は、想定を超える欧州経済の減速とユーロの急速な下落だ!
・8月ユーロ圏鉱工業生産は前月比マイナス1.8%、前年比マイナス1.9%と市場の想定を超えてマイナス幅が拡大。中でも欧州経済のエンジンであるドイツが、前月比マイナス4.3%、前年比マイナス2.8%と突出して落ち込んだ。
ゴールドマン・サックスは2017年末までに1ユーロ=1ドルの等価になると予想している。
ドイツ銀行は0.95ドルまで下落するとの見通しを示している。
・最近のドル高/ユーロ安のペースが、想定を超えており、米経済や物価を押し下げる要因として警戒している。
・「欧州は目標を大幅に下回るインフレ、もしくは明白なデフレが長期間に及ぶリスクに直面している」と指摘。
・ECBの措置について「デフレリスクへの対抗に役立つ」としつつ、「需要に対する一段の政策支援が必要かもしれない」とした。
・ドイツのショイブレ財務相は「より持続的な成長が必要という点で一致している。それを達成するには、それぞれの国が自国の状況に応じて構造改革を実施するしかない。また、金融システムが健全で財政が持続可能でなければならない」と述べ、米国からの「ドイツ機関車」論的な景気刺激策の要請に、やんわりと反論した。
・1987年10月19日の米株式市場における株価の大幅下落(ブラックマンデー)は、その直前に米の反対を押し切って実施された独連銀による利上げで露呈した米独対立で起きた。
・最悪のシナリオが現実化しないよう、米欧日当局が最善の政策対応をすることがき期待される。














〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
想定超える欧州減速とユーロ下落、米独対立で大波乱も    
古澤襄  2014.10.19
■ロイター・コラムで田巻一彦氏が分析
 世界経済に与える影響が甚大なので、意識的に市場関係者の目から隠されてきた米国とドイツの基本的な対立を白日の下にさらすリスクを高めている・・という田巻氏の分析は大胆だが時宜を得ている。 このプリズムを通して日本経済の将来動向を緊張感を持って見守る必要がある。
[東京 17日 ロイター]最近の世界的な株安現象に影響している核心的要因は、想定を超える欧州経済の減速とユーロの急速な下落だ。この波紋は米金融政策の動向にも及び始めた。
 それだけでなく、市場関係者の目から隠されてきた米国とドイツの基本的な対立を白日の下にさらすリスクを高めている。 その先に1987年のブラックマンデーのような市場の大波乱があるのかどうか、緊張感を持って見守る必要がありそうだ。
<目立つ独経済の急ブレーキ>
  15日に大幅な下落となった米欧株式は、16日にやや小康を得たものの小幅続落で終わった。17日の日経平均.N225も反発できずにいる。
  市場では、米国の量的緩和(QE)政策の終了やエボラ出血熱地政学リスクなど様々な事象が、リスクオフ心理の広がりを説明する材料として取り上げられている。
 だが、最も大きな要因は、市場の想定を大幅に超えて進行している欧州経済の減速と、その結果とも言える大幅なユーロ安だ。
  8月ユーロ圏鉱工業生産は前月比マイナス1.8%、前年比マイナス1.9%と市場の想定を超えてマイナス幅が拡大。中でも欧州経済のエンジンであるドイツが、前月比マイナス4.3%、前年比マイナス2.8%と突出して落ち込んだ。
 また、ドイツの欧州経済センター(ZEW)が発表した10月独ZEW景気期待指数はマイナス3.6となり、前月の6.9から急低下し、市場の注目を集めた。
 ユーロ圏経済の不調と足並みをそろえるユーロは、今年5月半ばから対ドルで10%を超える下落ぶり。 ゴールドマン・サックスは2017年末までに1ユーロ=1ドルの等価になると予想・ドイツ銀行は0.95ドルまで下落するとの見通しを示している。
<米金融政策の動向にも波及>
  急速なユーロ安/ドル高は、米国にとっても大きな誤算になったようだ。バークレーズのエコノミストは、ドル(貿易加重平均)が10%上昇すると、12カ月後に個人消費支出(PCE)でみたインフレ率が0.4%ポイント低下し、実質成長率も同じ程度低下すると試算している。
  米セントルイス地区連銀のブラード総裁は16日、ブルームバーグテレビの番組で、インフレ期待の低下を踏まえ、QE縮小の停止の可能性に言及し、指標次第で債券買い入れ増額も検討する可能性があるとの見解を示した。
 さらに世界のインフレ見通しが米インフレ期待を押し下げている可能性を指摘し、ユーロ安を起点にした影響が、米経済の動向にも大きな波紋を投げかけていることを示唆した。
  米サンフランシスコ地区連銀のウィリアムズ総裁は14日、ロイターとのインタビューで「ディスインフレ予想が継続する状況となれば、再度の追加資産買い入れを真剣に検討すべきだ」と表明した。
 ドル高のもたらす米経済への副作用に懸念を示した。 相次ぐ米連邦準備理事会(FRB)幹部のハト派発言は、最近のドル高/ユーロ安のペースが、想定を超えており、米経済や物価を押し下げる要因として警戒していると見るべきだ。

<独財政出動に期待する米国>
 この状況を変えるには、ユーロ安の原因である欧州経済の下振れリスクを払しょくする必要があり、現在の欧州中銀(ECB)の金融政策では不十分であるという米国のいら立ちがありそうだ。
  米財務省が15日に公表した半期に一度の為替報告書で「欧州は目標を大幅に下回るインフレ、もしくは明白なデフレが長期間に及ぶリスクに直面している」と指摘。ECBの措置について「デフレリスクへの対抗に役立つ」としつつ、「需要に対する一段の政策支援が必要かもしれない」とした。
 さらに「特にドイツのような黒字国における内需拡大措置は、欧州や世界の再均衡を一段と支援することが可能だ」と主張した。

 ルー米財務長官は10日、国際通貨金融委員会IMFC)への声明で「弱い需要の伸びは、多くの国で見られる慢性的な経済不振の元凶だ」と指摘。 成長支援は「とりわけ、対外収支が黒字で、財政が世界の調整を支援できる柔軟な状況である国に課された義務だ」と強調した。これはドイツを念頭に置いた発言とみられている。
 これに対し、ドイツのショイブレ財務相は「より持続的な成長が必要という点で一致している。それを達成するには、それぞれの国が自国の状況に応じて構造改革を実施するしかない。また、金融システムが健全で財政が持続可能でなければならない」と述べ、米国からの「ドイツ機関車」論的な景気刺激策の要請に、やんわりと反論した。
 これまで米独間のすれ違いは、表面化しないように工夫されてきた歴史的な経過がある。 1987年10月19日の米株式市場における株価の大幅下落(ブラックマンデー)は、その直前に米の反対を押し切って実施された独連銀による利上げで露呈した米独対立で起きた。その「苦い記憶」が、主要国の当局者に刻み込まれていたためと思われる。
  翻って今回の欧州経済低迷が、欧州の財政当局やECBの対応によって、目立った改善がなく長期化するとなると、世界的な株価下落局面が続き、下落幅が大きくなる可能性も否定できない。
 その時に、米国とドイツの対立があからさまになると、主要国の政策が協調できないという印象をマーケットに与えかねない。
  最悪のシナリオが現実化しないよう、米欧日当局が最善の政策対応をすることを望みたい。

●背景となるニュース
・米財務省為替報告、欧州デフレリスクに警鐘 日本は構造改革が必要

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