・日本は一体何のために、そこまで首脳会談にこだわったのか? 残念ながら、その問いに応えてくれる新聞報道は皆無だった?

・ゲストを迎えたホスト国トップの非礼な態度は習氏にとっても、中国にとっても、決してプラスにはならない。
・国交回復以来、日本の新聞の多くは、中国批判をタブーとし、中国に「譲歩」し、その発展に「寄与」することを当然のように報じてきた歴史がある。
アメリカが日本の領土を防衛する義務を負う根拠となるこの第5条は、中国にとって最大のネックだ。
・2010年、中国漁船衝突事件の際、クリントン国務長官が第5条を「尖閣にも適用される」と明言し、2012年、米上下両院が尖閣は第5条の「適用対象である」と明記した国防権限法案を可決した。
・日本は一体何のために、そこまで首脳会談にこだわったのか? 残念ながら、その問いに応えてくれる新聞報道は皆無だった?
アメリカでの中国のロビー活動は、アメリカをニクソン時代まで押し戻すためにあると言ってもいい。










〜〜〜関連情報<参考>〜〜〜
【新聞に喝!】尖閣報道で抜け落ちた視点 ノンフィクション作家・門田隆将   2014.11.16 08:50更新
 にこやかに語りかけた安倍晋三首相に対して、ひと言も発せず、プイと顔を背けた習近平国家主席。ゲストを迎えたホスト国トップの非礼な態度は習氏にとっても、中国にとっても、決してプラスにはならないだろう、と思う。
 私はアジア太平洋経済協力会議(APEC)の新聞報道に注目していた。 国交回復以来、日本の新聞の多くは、中国批判をタブーとし、中国に「譲歩」し、その発展に「寄与」することを当然のように報じてきた歴史がある。
 さすがに今回、習氏がとった態度をたたえる日本の新聞は1紙もなかったが、首脳会談の実現については、歓迎する論調で占められていた。
 私が注目したのは、首脳会談実現のために土壇場で交わされた「4項目合意」だ。この中に、尖閣海域で近年〈緊張状態が生じていることに異なる見解を有していると認識〉するとの文言があった。これを、一貫して「尖閣に領土問題は存在しない」としてきた日本側の譲歩と取るのか、否か。
 果たして新聞の見方は完全に分かれた。「首相条件なし会談貫く」と産経が書けば、読売も中国側が出した「いずれの条件もクリアされない段階で、首脳会談に応じる方針に転換した」と中国側が折れたという解釈を掲げた。
 これに対して日経は「中国の譲歩を促してきた首相も最後は歩み寄りを示した」、東京も日経と同じ見方を示し、朝日と毎日は、両者の中間に位置する記事を書いた(いずれも8日付朝刊)。
 私は、これらの中に日米安保条約「第5条」からの視点が欠落していたことに失望した。アメリカが日本の領土を防衛する義務を負う根拠となるこの第5条は、中国にとって最大のネックだ。
 1971年、尖閣の主権は、ニクソン政権下の公聴会で「どの国の主張にも与(くみ)しない」とされた。
 しかし2010年、中国漁船衝突事件の際、クリントン国務長官が第5条を「尖閣にも適用される」と明言し、一昨年、米上下両院が尖閣は第5条の「適用対象である」と明記した国防権限法案を可決した。中国がこれに「断固反対する」と発表したことは記憶に新しい。
 つまり中国は尖閣の領有権について、アメリカをニクソン時代まで押し戻し、さらに第5条の「適用外」まで持っていかなければならない。
 延々と続くアメリカでの中国のロビー活動は、そのためにあると言ってもいい。 その第一歩が「異なる見解」の存在を日本に認めさせることではなかったのか。 私はそのことが知りたかった。
 一方、日本は一体何のために、そこまで首脳会談にこだわったのか。残念ながら、その問いに応えてくれる新聞報道はなかった。
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【プロフィル】門田隆将
 かどた・りゅうしょう 昭和33年、高知県生まれ。中央大法卒。週刊新潮を経てノンフィクション作家に。新刊は『「吉田調書」を読み解く』。