・一括帰国実現の期限を切って強硬な姿勢を示せ! 人のいい役人ではなく阿修羅になって真の折衝をせよ!

・2014年5月の日朝ストックホルム合意の決定的な欠陥はまさに金正恩の決断を確認せず、合意を結んでしまったことだ。拙速に合意をしてしまったから、今のような時間稼ぎを許している。
・北の目的は
(1)厳しい法執行と制裁で苦境に陥っていた朝鮮総連を救うこと
(2)制裁を解除させ、貿易や人道支援などで日本からカネやものを取ること
(3)国交正常化につなげて大規模な過去の償い金を取ること
(4)安倍訪朝を実現して国際的孤立から抜け出すこと
−などだった。
金正恩に「全被害者の一括帰国」を求め、それが実現しないなら、制裁・法執行の緩和や人道支援などは絶対に行わず、「未来を描くことが困難になるように圧力を強化する」と、繰り返し通報せよ!
・日本政府の解決の定義は
(1)認定の有無にかかわらず全被害者の帰国
(2)真相究明
(3)実行犯引き渡し
−の3つだが、最低限(1)が実現しない限り圧力を極大まで強めると伝えることが必要だ。
・一括帰国実現の期限を切って強硬な姿勢を示せ! 人のいい役人ではなく阿修羅になって真の折衝をせよ!






〜〜〜関連情報(参考)〜〜〜
2015.7.7 05:01更新   【正論】
拉致被害者の一括帰国を譲るな 東京基督教大学教授・西岡力

 北朝鮮拉致被害者らに関する調査報告をまた遅らせた。彼らの不誠実さに強い怒りを覚える。そもそも拉致被害者北朝鮮当局の管理下にあり、あらためて調査する必要などない。それなのに「再調査」という形式を受け入れたのは、あくまでも全拉致被害者を取り戻すための便法だったはずだ。
≪拙速すぎたストックホルム合意≫
 昨年3月28日、安倍晋三首相は拉致被害者家族らと会った席で、大略、以下のように語った。
 「制裁ばかりしていると対話はできないという論者が多かったが、日本は世界で一番強い制裁をかけていて、対話が始まった。ただし、今の状況は小泉純一郎首相が訪朝したときより困難だ。北朝鮮のような国でトップが行った報告を覆させなければならないからだ。だから、単なる対話では解決できない。制裁の圧力を背景にした対話が必要だ」
 ここでの報告とは横田めぐみさん達8人を「死亡」、曽我ミヨシさん達その他の被害者を「拉致していない」とした内容(2002年金正日報告)を指している。
 北朝鮮のような個人独裁体制では、独裁者が「この被害者は死亡として帰国させるな」と指示を出したことを覆すのが困難だ。
 今回、金正恩第1書記がそれを覆しても、金正日総書記が間違ったのではなく、再度調査してみたら、前回の調査を担当した実務者が間違った報告を上げていたことが分かったと弁明できる。そのような弁明を許すということだけにおいて、再調査は意味があった。
 ただし、北朝鮮は02年金正日報告を覆すという決断なしに対日接近を開始した。統一戦線部などそれを死守しようとする勢力が主導している。 外務省は小泉訪朝時にも登場した国家安全保衛部幹部を相手に交渉をしているから希望があるという情報をリークしているが、問題は窓口が誰かではない。金正恩が02年金正日報告を覆すという決断をしたかどうかなのだ。
 昨年5月の日朝ストックホルム合意の決定的な欠陥はまさに金正恩の決断を確認せず、合意を結んでしまったことだ。拙速に合意をしてしまったから、今のような時間稼ぎを許している。

≪拉致以外の報告を優先する北≫
 情報を総合すると、彼らの目的は(1)厳しい法執行と制裁で苦境に陥っていた朝鮮総連を救うこと(2)制裁を解除させ、貿易や人道支援などで日本からカネやものを取ること(3)国交正常化につなげて大規模な過去の償い金を取ること(4)安倍訪朝を実現して国際的孤立から抜け出すこと−などだった。
 彼らも拉致がゼロ回答ではそれらを取れないことは分かっている。だから、日本人の遺骨問題と残留日本人・日本人妻などへの調査を並行して行う枠組みを作り、そちらを先行させて日本世論を拡散し、その上で新たな「死亡の証拠」を出そうとしていたはずだ。
 本欄などで警告してきたように、北朝鮮の工作機関では数年前から遺骨捏造(ねつぞう)技術の開発を行ってきた。被害者を殺して死亡時期が分からない温度で焼いて本物の遺骨を作るという方法と、他人の遺骨を高温で焼いてDNAを完全に破壊した後、被害者本人の体液などをその骨に混入させる方法だ。
 私が入手した情報によると、水面下で行われている日朝協議で、依然、北朝鮮拉致被害者に対する調査は終わっていないから、それ以外の調査結果を先に出すという立場を崩していないようだ。
 日本側が拉致調査結果ではなく、認定被害者を含む生存者を出せと迫っているが、金正恩拉致被害者に関する最終決断をしていない構図なら最悪ではない。

≪繰り返し「圧力強化」を≫
 今回の報告延期は、(1)朝鮮総連への法執行をどこまで進めるつもりか見極める(2)遺骨捏造技術が完成するまでの時間稼ぎ(3)日本を焦(じ)らせて生存者ではなく調査報告提出に関心を集めさせる−などを目的としたものだろう。6月末に自民党がまとめた追加制裁を検討する時間が必要なのかもしれない。
 一方、懸念材料もある。私が入手した情報によると、日本側が水面下の交渉で「拉致被害者に対する調査が続いているという確証が出れば、拉致以外の報告を受け取る」という姿勢を示したとされる。それが正しければ、しばらく焦らせた後で、02年金正日報告を守るラインでの最終報告が出てくる危険性がある。
 あらゆるルートで金正恩に「全被害者の一括帰国」を求め、それが実現しないなら、制裁・法執行の緩和や人道支援などは絶対に行わず、「未来を描くことが困難になるように圧力を強化する」と、繰り返し通報する。 安倍首相は「拉致が解決しない限り北朝鮮に未来はない」と話したのであって、「拉致が進展しない限り」と言わなかった。
 日本政府の解決の定義は(1)認定の有無にかかわらず全被害者の帰国(2)真相究明(3)実行犯引き渡し−の3つだが、最低限(1)が実現しない限り圧力を極大まで強めると伝えることが必要だ。

 時間稼ぎを防ぐためにも、一括帰国実現の期限を切ることを考えるべきときが来ている。(にしおか つとむ)