今の人民元が真の国際通貨といえるか??

・SDR採用をテコにした人民元の国際化は中国の悲願だろう。
・米国の経済政策に左右されがちなドル依存から脱却するためだ。
・貿易決済で人民元が多く使われれば、為替変動のリスクも減らせる。
人民元による影響力拡大は、設立を主導したアジアインフラ投資銀行と同様、新たな経済秩序を築くための国家戦略である。
・SDR入りすれば、日米欧との連携も不可欠となろう。世界の金融市場の安定に向けて責務を果たすのは当然である。自国の都合を押し通すことは許されまい。








〜〜〜関連情報(参考)〜〜〜
2015.11.18 05:03更新 【主張】
人民元の国際化 自由化を貫徹できるのか

 国際通貨基金IMF)がドル、ユーロ、ポンド、円と並ぶ主要通貨として、中国の人民元を加えることになりそうだ。世界2位の経済力を背景に、存在感が高まっているためだ。
 だが、中国では金融・資本の自由な取引がなお不十分である。政府の強引な市場介入も相変わらずだ。IMFの「お墨付き」は前のめりに過ぎる感がある。
 中国にとっては、ドル基軸体制に対抗する通貨覇権への大きな一歩であろうが、それにふさわしい改革を貫徹できるのか。国際社会は、中国の恣意(しい)的な政策運営を厳しく監視すべきだろう。
 通貨危機などに備えたIMFの準備資産「特別引き出し権(SDR)」は、ドルや円など主要4通貨で構成される。ここに人民元を加えることが、近く開かれる理事会で正式に決まる見通しだ。

 SDR採用をテコにした人民元の国際化は中国の悲願だろう。
 米国の経済政策に左右されがちなドル依存から脱却するためだ。
 貿易決済で人民元が多く使われれば、為替変動のリスクも減らせる。
 人民元による影響力拡大は、設立を主導したアジアインフラ投資銀行と同様、新たな経済秩序を築くための国家戦略である。
 通貨の存在感は、経済力に応じて高まる。
 欧州を中心に人民元のSDR採用を後押しする動きが強かったのも、中国との経済の緊密化を期待したためだろう。

 問題は、今の人民元が真の国際通貨といえるかだ。人民元は今年8月、貿易決済通貨として日本円のシェアを上回った。IMFは、通貨取引の自由度もSDRの条件を満たしているという。
 本当にそうだろうか。中国は、海外での人民元決済銀行の拡大などの改革を進めてきた。ただ、人民元相場は変動幅が管理され、国境を越えた資本の自由な出入りなどは規制が残る。
 中国は段階的に改革を進める方針だが、政府の思惑で後戻りする懸念が残る。自由化が進めば資本の流出入が増え、投機の懸念も高まろう。上海株が乱高下した今夏、習近平政権が株価に露骨に介入し、人民元の買い支えを繰り返したことを忘れてはならない。
 SDR入りすれば、日米欧との連携も不可欠となろう。世界の金融市場の安定に向けて責務を果たすのは当然である。自国の都合を押し通すことは許されまい。