・補正予算も緊縮のいま、需要喚起が乏しく、企業も個人もデフレマインドを払拭するだけの経済効果にはなっていない。 金融緩和のみではNGだ!

・消費や投資が増えていかない限り、経済が拡大していくこともない。
・景気が回復したという実感が持てないのではなく、実感が無い。
・商品は実質上、値上げされている。 消費税8%は負担感はかなり大きい。 
・雇用が冷えきり、実質賃金は下がっている。今後も、消費税が上がっていくと思えば、消費は増えるはずが無い。企業だって需要がなければ動かない。 
補正予算も緊縮のいま、需要喚起が乏しく、企業も個人もデフレマインドを払拭するだけの経済効果にはなっていない。 金融緩和のみではNGだ!
・デフレ時代に日本の企業が人的資源への投資を怠ってきた!投資の対象は設備だけではないのだ!







〜〜〜関連情報(参考)〜〜〜
2016.2.3 09:43更新  【正論】
日本経済は五右衛門風呂状態 マイナス金利は強い決意の現れ デフレ脱却へ投資拡大急げ 
伊東元重・東大大学院教授

 20年以上続いた経済停滞から日本経済を再生させるのは容易なことではない。国民も企業もいまだにデフレマインドにどっぷりと漬かり、本格的に回復する兆しを見せない。国民の多くはまだデフレ脱却に懐疑的である。消費を増やすよりは、老後に備えて貯蓄に回す人が多い。企業はアベノミクスのおかげで手元に潤沢な資金を蓄積してきた。市場から資金を調達しようとすれば、かつてないほどの低金利で調達できる。それでも国内への投資は増えていかない。
五右衛門風呂状態の日本経済
 人口減を考えると、5年後、10年後の日本経済の市場規模が拡大するとは思われない。そう考えている経営者も少なくないようだ。このように冷え切った消費や投資を拡大させていくことは容易ではない。
 しかし、消費や投資が増えていかない限り、経済が拡大していくこともないのだ。
 アベノミクスの効果がなかったわけではない。この3年の成果をみると、為替レートは円高修正を果たし、株価や企業収益も大幅に改善している。政府の税収も3割以上増大し、雇用にいたっては過去23年で有効求人倍率が最高の水準になるまで改善を続けている。
これだけの数字を並べれば、アベノミクスの効果がなかったとは言えないはずだ。ただ、それでも肝心な消費や投資が増えていかないので、景気が回復したという実感が持てないのだ。
 日本経済は例えて言えば、五右衛門風呂状態にあるようだ。金属でできた風呂釜は下から温めて熱くなっている。しかし、中に入っている肝心の水はなかなか温まっていないのだ。風呂釜は株価や企業収益や雇用の数字であり、中の冷え切った水は消費や投資を意味している。風呂釜を熱くすることには成功したが、中の水を温めるのは簡単ではないということだ。バブル崩壊後の失われた20年の影響はそれほど大きい。また、少子高齢化と人口減少という構造的要因の影響も非常に大きい。
企業が動くことが重要だ
 アベノミクスのデフレ脱却は第2ステージに入っている。風呂釜を温めるのが第1ステージであれば、中の水を温めるのが第2ステージだ。その鍵を握るのは、政府の議論の中でもしばしば出てくるように、賃金と投資なのである。
 賃金が上昇していくことは、持続的な物価上昇につながるだけでなく、消費を拡大させる要因ともなる。企業が投資を拡大させていくことは、需要面から重要であるだけでなく、持続的な成長を支える生産性向上やイノベーションという供給面からも重要となる。
企業の手元の資金がないのであれば仕方ないが、潤沢な資金があっても国内投資を控えているということは、日本経済全体にとって大きな損失となっている。難しいのは、賃上げも投資も、その決定権は政府ではなく、企業にあるということだ。企業が自ら動かないかぎりは、何も変わらない。
 政府は賃上げや投資拡大を促すようにいろいろな対応を続けている。こうした努力を続けることは重要ではあるが、最終的には企業が動かないかぎりは意味がない。
 ここで注目したいのは、経済の自律的な動きだ。風呂釜が熱ければ、中の水にも熱が伝わるはずだ。それが何であるのか考えてみる必要がある。
 私は労働市場の動きに注目している。アベノミクスの成果のひとつが雇用の改善だ。少子高齢化ということも、労働市場をさらにタイトにする要因となるだろう。
 ここまで労働市場がタイトになれば、賃金が上昇しないはずはない。賃金上昇が本格的に起これば、賃金コストに見合っただけの労働生産性を上げられない企業は存続できないことになる。要するに、タイトになった労働市場が産業の構造調整を促すのだ。
強い決意示した「マイナス金利
 日本の生産性が伸びていかない大きな理由は、デフレ時代に日本の企業が人的資源への投資を怠ってきたという指摘もある。労働力が希少になるほど、労働者のスキルを引き上げるような投資が求められる。
 そうした人的投資が進むことも期待したい。投資の対象は設備だけではないのだ。
私がもう一つ注目しているのは、物価の動きだ。インフレ率が今後上昇していくなら、実質金利はマイナス圏に突入する。名目金利が0に近い水準でインフレ率が1%であるとき、実質金利はマイナス1%であるという。実質金利が大幅なマイナスとなれば投資は刺激されるだろう。そもそも、デフレ脱却で穏やかなインフレにもっていく理由の一つは、実質金利を大幅に下げることであった。原油価格の下落などの外的要因によってこうした動きが遅れている。
 先日の日本銀行によるマイナス金利の導入は、日本の物価を引き上げるという強い決意を市場に知らせる結果となった。原油価格由来以外の部分では、日本の物価は着実に上昇を続けている。今後の経済回復の重要な注目点は、物価が本格的に動きはじめ、実質金利が十分にマイナス圏で下がっていくかどうかだ。(いとう もとしげ)