・海洋観測艦「しょうなん」は海潮流や塩分濃度の観測をはじめ、精密海底地形調査能力を備えたことで、海洋環境データの収集能力が強化されている。

海洋観測艦「しょうなん」の主任務は、海底の地形や底質、潮流、海流、磁気、水温、水質など対潜戦に影響を与える自然環境のデータ化だ。
・掃海艦を駆使する機雷戦においても、潮流の情報は死活的に重要だ!
海洋観測艦「しょうなん」は海潮流や塩分濃度の観測をはじめ、精密海底地形調査能力を備えたことで、海洋環境データの収集能力が強化されている。
・最大の船体を誇るのが「にちなん」で、全長111メートル、幅17メートル、基準排水量3350トン。
・「わかさ」は従来の海洋観測艦に比べ、安定した低速航行ができることが特徴。








〜〜〜関連情報(参考)〜〜〜
2016.2.4 10:23更新 【防衛最前線(55)】
海自の海洋観測艦 海底の地形・海流・水温などを丸裸にする世界屈指の情報収集能力
海洋観測艦「しょうなん」は船体構造を商船仕様にしたことで、建造コストの削減に成功した(海上自衛隊提供)

 四方を広大な海に囲まれた日本を守るためには、潜水艦や掃海艦による高度な海中・海上作戦が欠かせない。海上自衛隊が誇る最新鋭の「そうりゅう型」潜水艦や掃海艦艇の能力の高さは世界でも屈指で、乗組員の練度も高い。ただ、それだけでは十分ではない。潜水艦や掃海艦が能力を最大限に発揮するには、海洋観測艦による情報収集が肝となる。
 海洋観測艦の主任務は、海底の地形や底質、潮流、海流、磁気、水温、水質など対潜戦に影響を与える自然環境のデータ化だ。民間の海洋調査船や測量船とは異なり、生物調査などを行わず、軍事目的に特化した海洋情報を収集するのが特徴だ。
 海自幹部は「海底には敵に発見されにくいポイントや、音響が伝播しやすい水質などがある。それを把握しているか否かで、海中作戦の立て方は大きく変る。掃海艦を駆使する機雷戦においても、潮流の情報は死活的に重要だ」と説明する。
 昨年6月に海洋観測艦「すま」が退役し、現在は「しょうなん」「にちなん」「わかさ」の3隻体制。日本周辺海域を中心に、日々の情報収集任務に当たっている。
 最も新しい海洋観測艦が、平成22年に竣工した「しょうなん」だ。21年に退役した「ふたみ」の後継艦で、主推進機には海自初の旋回式推進装置を採用。船体構造を商船仕様にしたことで、建造コストの削減に成功した。海潮流や塩分濃度の観測をはじめ、精密海底地形調査能力を備えたことで、海洋環境データの収集能力が強化されている。
3隻の海洋観測艦の中で最大の船体を誇るのが「にちなん」だ。全長111メートル、幅17メートル、基準排水量3350トンで、乗組員は80人。最大速力は18ノット(時速約33キロ)。観測艦「あかし」の代替として、11年に竣工した。
 最新鋭の海洋測量装置や海中音響観測を搭載し、海洋観測艦の主力と位置づけられている。最新の「しょうなん」は、この「にちなん」の小型軽量化をコンセプトに建造されている。ちなみに、にちなんは25年11月、ケーブルでつないで遠隔操作していた無人潜水装置(ROV)を津軽海峡で紛失。「環境への影響がない」などとして公表していなかったことが批判を浴びたこともある。
 海自が運用する最も古い海洋観測艦が「ふたみ」型の2番艦として昭和61年に竣工した「わかさ」だ。艦名は若狭湾に由来する。従来の海洋観測艦に比べ、安定した低速航行ができることになったのが特徴。21年に海自初となる大型艦の女性艦長を乗せたのも、この「わかさ」だった。
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(政治部 石鍋圭)